アフリカは発展しないのか?

考えても考えてもよくわからない不思議なことが世の中にはたくさんある。ちきりんがずっと考えていてよくわからないことの一つが、“アフリカってなんで全然発展しないの?”ということ。

アジアにはまだ貧乏な国はたくさんあるけれど、基本的には発展しつつある国が大半でしょ。足踏み状態はあっても、完全に止まっているとか、後ろ向きに進んでいる国は北朝鮮など一部だけだし、その場合は理由もかなり明確。

南米もアルゼンチンみたいに破綻してしまう国もあるけど、ブラジルみたいに有望視される国もある。ペルーやチリだって大して進んでないようにも思うけど、でも別に「大量餓死」とか「内戦で毎年○万人が死亡」という話はほとんど聞かない。

そういう意味で、圧倒的に不思議なのがアフリカだ。なんで“全く前に進んでいない国”があんなにたくさんあるんだろう?後退している国さえ少なくない。

アラブ・アフリカといわれる北アフリカのエジプトやモロッコはともかく、中部から南部の非アラブのアフリカには大陸全体として、過去何十年も全く“展望”が感じられない。


ちきりんは昨年ケニアに行った。ナイロビにはなんもない。あるのは国際機関事務所やNPOばっかり。ケニアの最大の外貨獲得産業は“ODA獲得産業”なんだよね。

他の産業がこの産業を追い越す可能性があるか?というと多分ないんじゃないかな。ケニアは将来にわたってずうっと“ODAで食べていく国”なのかもしれない。

他の産業は、観光と、ピーナッツやコーヒーなどの農産物。でも食品の国際市況商品では、現地の人はほとんど儲からない。フェアトレード品の民芸品で稼げる外貨なんてたいした額じゃないしね。

観光もサファリ好きな人ってローマ遺跡を見たい人に比べると圧倒的に少ない。それに、最高級ロッジでさえ自家発電だから電気が一日のうち数時間しか使えない。インフラとして、そもそも大挙して観光客が押し寄せる状態ににはなりえない。

国内で使うための“タイヤ工場”等、軽工業の工場はあるけど、基本は国内需要のためであって輸出は無理です。輸出ってのは圧倒的に高い品質が要求されるから。競合があるからね。

でもケニアは“アフリカのなかではまだまし”であり、“優等生”とか呼ばれている国。それで、こういう状態です。


石油のでない発展途上国は大変です。それでも、アジアの多くの国・・・タイもベトナムも中国もインドも、今のところ石油輸出で発展してきたわけではありません。それに、石油がでないということは、外貨が安易に稼げないかわりに、米国が爆弾おとしたり介入したりしてこないわけで、それはそれでメリットとも言えるはずなんです。なんでアフリカだけ??

しかも多くの国でHIVが蔓延しているのに、有効な手だてがありません。



質問は二つです。

  1. なんでアフリカだけこういう状態が続いてきたのか
  2. これからもこの状態が続くのか

最初の質問に答えがでないと、二番目の解決方法がありません。


政治は腐敗しています。多民族国家だから、政治的安定自体が非常な贅沢品です。ODAは配るだけであって、再生産の手だてにならない。現地にまともな受け皿組織もないし。

でもそれだけでこうなってるとは思えない。どこの国でも“腐敗する政治トップ”は存在します。ずうっと経済発展を続けてきている中国、韓国、タイ、ベトナム、その昔の日本、どの国も「腐敗した政治トップ」を擁しながらも、経済発展を実現してきました。

なんでアフリカはそうならないの?
アフリカだってエリートは、フランスやイギリスに留学して高等教育を受けています。彼らの中から国を大きく変えるリーダーがなぜ出てこないのか。


ちなみに、小泉氏がアフリカに行って“日本だって焼け野原からここまで来た。だからみんなも頑張って”って言ってましたがあれは詭弁です。

日本は確かに焼け野原になったけど、焼け野原になる前にすでに世界で唯一の非西洋先進国でした。戦艦ヤマトも、パールハーバーまでの飛行が可能な戦闘機もすでに持っていた。今のアフリカの多くの国よりも、敗戦時でさえかなりの資本&技術蓄積があった。だからそれと比べるのは無理。勤勉だけが総ての答え、ということはないのです。


南アなど特殊な国をのぞき、今も中南部アフリカの多くの国には誰も投資しようとしません。ODAは配るけど、投資はしない。なぜ?人件費は安いし、土地もいくらでもある。南部アフリカは砂漠ではなく水もあります。なんでなんだろう。ほんと不思議だ。


まあ、かなり長い間考えていたのに答えがでてないので、今日ブログに書いただけでわかるとは思っていません。でも、この「なぜいままでだめだったのか」という最初の問いに回答が見つからないままODAを続けていてもマジで無駄です。

ODAをしている人たちは、現地の現状をよくわかっているはず。まずは彼らに、この最初の問いに答えて欲しい。それを国際社会に示して欲しい。そうしないと、アフリカは今後もずうっと“他国からお金を貰っていきていく”という状態のままです。


ケニアに行ってその矛盾を強く感じました。とりあえず今のケニアは治安もそこそこです。だから、ODAしたい人、開発途上援助したい人の“遊び場”みたいになっている気がしました。“いいことしたい人の自己満足製造所”みたいだった。

ホントの意味で“前に向かう可能性のある解決方法”を皆で考える必要があるでしょう。与える人の自己満足団体でも、目の前の火だけを消す火消し団体でもなく、本当の問題の解決に取り組む必要があるよね。「仕送りでしか生きていけない子供を育てる」ことに満足していてはいけないと思うもの。


ではでは