キューバ旅行 つれづれ報告

本日キューバから帰国。GWだから飛行機は満席でした。

キューバ旅行についてはいろいろおもしろいこともあったんだけど、まずはもっとも感激したことを。

実は(意図して無かったんだけど、というか忘れてたんだけど)5月1日にキューバの首都、ハバナにいたんです。実は、この日はメーデー。

メーデーって日本でも一応ニュースはやるけど(日比谷公園の労組のイベントとか)、もはやお祭り化(形骸化)してますよね。

でも、キューバは共産主義だから1月1日と5月1日はカストロ議長(現在78才!!)が革命広場でスピーチされるんです。

こんな日にキューバにいるなんて感激でしょ!?

都合もありカストロ議長は見られなかったんだけど、他の旅行者から写真を見せてもらいました。ご高齢のため車いすだったみたいです。


この日の朝タクシーに乗ったら、ラジオから左翼愛唱歌“インターナショナル”が流れていて、ギョッとすると同時に感動しました。

5月1日にキューバでインターナショナル! 元過激派の皆さんには垂涎の的かも? 私も感激!しました。

そのせいかゲバラ氏のTシャツにキーホルダーに帽子に絵はがきに写真集と・・・山ほど買い込んでしまいました。

キューバにはチェゲバラ氏グッズがあふれてます。

もちろんキューバでも人気はあるんでしょうが、グッズが多いのは、“観光客がゲバラ好きでグッズがよく売れるから”というとても資本主義的な理由です。ちなみにカストログッズはほとんどありません。


あと、感動したのはグランマ号(おばあちゃん、という意味)という船を見たこと。

メキシコからゲバラやカストロがこの船でキューバに戻って革命を起こしたわけです。

船はすごくきれいでした。補修してるんだと思うけど。クルーズ船みたいです。


アメリカのB29の破片(撃墜した)とか、カストロ議長が使った戦車とかもおいてあります。

B29の破片って“アメリカに勝った証拠”なんですかね。中国やベトナムにもありました。日本にはないように思います。

日本も一機くらい落としてるとおもうけど、きっと鉄不足だったから、再利用しちゃったのかも。


キューバの街を歩いてる限りにおいては、アメリカへの敵愾心みたいなのは全然感じませんでした。

街で見た反米的な看板はごくわずか。イラクの捕虜虐待を風刺したのとか、ごくまともなのだけです。

Vamos Bienという文字とカストロ議長の顔が書かれた看板がいくつかあったかな。Vamos Bienというのは、We are OKって感じの意味です。私たちは大丈夫!って感じ。

「アメリカに助けてもらう必要はないよ」ってことでしょうか。まあ、とても穏やかなスローガンです。中国よりスローガン系の展示物は圧倒的に少ない。共産党本部も地味な建物です。



ちょっと戻って、キューバってどういう国か。

カリブ海の島国です。カリブ海のビーチはホントにきれい。

私はアメリカ留学中によく行ったんだけど、一番好きな海の一つです。

ちきりんランキングでは、1位カリブ、2位モルジブ、3位タヒチ、4位沖縄かな〜。沖縄は海は好きですが、料理が苦手です。


今回はビーチに3日、ハバナに3日、あと、トリニダーっていう田舎町に1日行ってました。

どこが好きかと言われたらハバナです。首都好きなので。

キャバレーのショーみましたけど、フランスのムーランルージュやラスベガスより質が高いです。まあ、何回も見たいほどのモノではないですけど。


カリブ・ビーチに行きたいだけなら、わざわざキューバに行く必要はありません。メキシコ(カンクン)とかベリーズとかでいいと思う。(アメリカ、イギリス領の国よりラテン系の国のビーチがお勧め)

でも、キューバのビーチは非常におもしろい。まるで“外貨獲得用遊園地”です。すごい人工的。笑えます。


物価もメキシコとかより高い。

だって、わざわざキューバまで来る人ですからね、払ってもらいましょう、共産主義国建設のために!という感じのプライシングです。

このように、キューバは思ったより資本主義的です。少なくとも観光産業の管轄大臣?というかリーダーは非常に手腕が高いと思いました。


観光以外の産業はなんなんでしょう。葉巻とラム酒が有名ですが、それだけで国を養うのは大変です。

革命直後(ちなみに革命は1959年)、ゲバラは外貨獲得のためにいろんな国を回って日本にも来てます。

砂糖買ってくれ!って。でも、アメリカの圧力もあったんでしょう、どの国も(もちろん日本も)よい返事はしてません。ゲバラ、かわいそう。


ところで葉巻工場はなんだか、“資本家と賃金労働者”って感じで、“えっ?これを批判して共産主義になったんじゃないの?”って印象でした。

イメージとしては女工哀史ですよ。暑〜い室中で小さい机に向かって一心不乱に葉巻を巻く人たち。

葉巻って、私たちが買うときは一本(安くても)4ドルくらいします。それを一日一人で250本〜作るらしい。

一人あたりの売上が一日最低1000ドルですよ。もちろん、“葉”の原価もかかっているとは思うけど、やっぱ“搾取”があるような気がするけど。

マルクスさん、その辺りどうなんですかね。まあ、葉巻工場はすべて国営なんで資本家はいない(建前?)らしいですけど。


ハバナはラテンのノリだけど、治安がよく、こじんまりしていて、過ごしやすいです。でもこの季節でもかなり暑いから、8月とかには間違ってもいかない方がいいです。

お金は兌換券です。昔、中国とかにもあったやつね。ローカルペソとの交換比率は20倍以上らしいけど、闇両替屋にはほとんど会いません。

物乞いも少ない。中国の10分のイチ、カリフォルニアの20分のイチって感じでしょうか。治安は良いです。


アメリカ人はいません。旅行客で多いのはスペイン人とイタリア人。後は他のヨーロッパとカナダ。

日本人はそんなに多くない。アメリカ人はこられないだけでなく、米ドルも最近は交換にペナルティや特別手続きが必要です。

そもそもアメリカ側がキューバに経済制裁してるんで、キューバとしても制裁ってことでしょうか。


アメリカに制裁されてこれくらいなら、なかなかよくやっていると思います。一時期は大変だったみたいですけど、観光で盛り返しているみたいですね。

アメリカも昔は“CIAのカストロ暗殺計画”とかあったらしいですけど、今となってはどうでもいいんでしょう。

あんまり不穏なこというと怒られますが、カストロ議長もあと何十年も生きたりしないでしょ。今だって事実上、他の人が政治や経済運営をやっているはず。

おそらく議長がいなくなって10年もしたら事実上の資本主義の国になるんじゃないかなって思います。

みんなカストロ議長(および、革命のために戦った人たち・・・ゲバラ氏含む)への尊敬や感謝の念があるから、“まあ共産主義でもいいや”って思っている気がする。

あんな大変な思いをして民族独立を実現してくれた人達がいるのに、簡単に資本主義への転換はできないという感じですね。


そういう意味で、とってもベトナムと似ていると思いました。

共産主義がよかったわけではなく、民族独立のためにはそれ以外の選択肢がなかっただけです。ホーチミン氏もゲバラ氏も昭和天皇的な慕われ方をしていると思いました。

こういう人がいることはとても大事ですね。国が大変な時の求心力になるというのは確かだと思います。


カリブ海のビーチが楽しみたいだけの人なら、(繰り返しになりますが)キューバにいく必要はありません。

でも、今や共産主義は絶滅危惧体制ですからね、見ておかなくちゃ。ちきりんは、ソビエト、北朝鮮、中国、キューバとこれで4ヵ国制覇です。

そのうち資本主義(的)になってからまた行ってみたいです。何度も書いてますが私は“左的なるもの”に関心あります。思想的には全く左ではないですが。


ただ、共産主義というか、正確に言えば“中央集権的”なシステムというのは、発展途上の段階では、資本主義・民主主義より効率的・効果的と思います。

中国とかも、上海で再開発とかいうと、“はい、ここ立ち退いて。1ヶ月以内ね!”みたいな感じです。

日本も先進国に戻れた最大の理由は極めて社会主義的、中央集権的なシステムのおかげでしょう。

一定以上の水準になると、その後は資本主義にしないとだめっぽい、というのは歴史が証明しているところです。

その切り替えが難しいですね。中国とかベトナムとか、うまくバランスとっているように思います。頑張ってほしいです。




ではまた



http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+personal/  http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+shop/