成長=昨日より今日の生産性を上げること

私は日頃から「 inputと output のバランス」を常に意識しています。

例えば人のブログを読むのは inputで、書いて発信するのは output。勉強はinput、得た知識を使って仕事をするのが output。野球の練習は inputで試合が output。

人間関係においても、「今は、知らない人ともどんどん関わりをもって世界を拡げるべき時期」とか「今は、仲のいい友達とまったりのんびり過ごす時期」というように、input / output のバランスをとるんです。


これを強く意識し始めたのは、一度働いてから大学院に行ったからでしょう。大学から続けて大学院に行くと「小学校からずっと input」だから余り意識しないかも。

でも、一度働いて(= outoput して)から大学院(= input の場)に行くと、「この input は何のタメか?」「この input は、どんな output につながるのか?」と、すごく気になる。

そしてその頃から「 output 目標がないのに input に時間やお金をかけるのは、馬鹿げてる」と思うようになりました。

昔は英語も“とりあえず勉強”してたけど、今は“必要な分だけ”勉強します。今の仕事や趣味(一人旅)に必要な英語力だけ獲得・維持できればいい。それ以上の input はちきりんにとっては“無駄な input ”なんです。


★★★


昔は、皆こんなに input しなかった。というよりできなかった。input は時間もコストもかかります。今は大学院までいく人も多いけど、昔は中卒で働く人も多かった。input の年数は倍に増えてるんです。

もちろん、昔は input が足りないから、出せるoutput にも限界がありました。新技術を知らないと、新商品はできない。だから日本でも経済発展に伴って、皆が input に力を入れるようになりました。

企業はもともと、「工場」=「製品を作り出す output の場」だったけど、そのうち「研究所」という「 input の場」にもお金をかけるようになります。当初の研究所の存在意義は、よりよいものを工場で output するための研究だった、はず。

ところが、いつしか「 input のために input する」人が研究所に集まり始め、彼らはずうっと研究してるわけです。ずうっと input している。output につながらなくても気にしない・・。

こうして、output 目的のために始めたinput 作業が自己目的化し、「巨額の研究費を投資しているのに、全く新製品のでない会社」ができてしまうわけですね。そのくせ「研究所で働いている人の方が工場で働いている人よりエライ」みたいな風潮まで出てきてしまう。

本来、民間企業の研究は製品につながらなければ意味がない。input だけでは(自己満足はあっても)他者にはなんの価値もない。


★★★


右肩上がり時代は「 output につながらない input のコスト」も企業は負担できた。でも今は「新しい価値」が世に提供できない企業は淘汰されます。

大事なのは output なんです。日本がここまで高度成長したのは output の質と量のレベルが高かったからです。output なしに input し続ける人が増えたら、将来はとても暗い。


と思っていたら、最近は新しい傾向も目立ちます。就職環境が厳しい中で、「とりあえず起業する」みたいな人もでてきました。走りながら経営を学ぶ彼等は、MBAで経営を勉強しつつ、起業も経営もしない人よりよほどマシ。

自営業(数人の会社の経営者)の友人が、「成長機会が乏しい」と言ってました。確かに、自分が先頭にたってビジネスをやっていると output に追いまくられ、なかなか input 時間を確保できない。

それでも「 input だけ」より「 output だけ」の方がいい。input だけの人なんて、いてもいなくても世の中は何も変わらない。


就職や転職の時だって問われるのは「あなた何が( output )できるの?」ということです。それなのに履歴書に輝かしい「学歴」や「資格」を連ねて「僕はこれだけ input しました!」とアピールする人がいる。

何がすごいのか全然わからない。学歴や資格はinputの記録だが、問われるのは(その input で)どんな output を出したの?という点です。


★★★


分母に input、分子に output をとると、その式で「生産性」が計算できます。この生産性の、ポジティブな経年変化が成長と呼ばれるのです。

工場でも経済でも人間でも同じです。昨日より高い生産性で仕事ができる自分になっている、それが成長したってことなんです。「昨日は8時間働いて8時間分の仕事がこなせたが、今日は 10 時間働いて、10 時間分の仕事が仕上がった」ことは、成長とは呼びません。

また、「昨日は知らなかったことが今日はわかってる」も、成長ではないです。それって、inputの量が増えただけでしょ? それで output が変わらないなら、退化じゃん!?

昨日できなかったことができた、昨日より価値の高いなにかが生み出せた、昨日よりよりよい働き方や方法論を実践できた・・・それが、成長したってことなんです。


な・の・に、口では成長したいと言いつつ、input ばかりして output しない人がいる。



よく式を見てください。分母が input、分子が output です。この数値をあげるためには分子の output を増やす必要があります。

分母の数字である input を増やしたら生産性は低下します。それじゃあ成長どころか退化ですよ。「勉強ばかりしてると成長できない」ってことなんです。

なにはともあれ、output することが大事です。



 ではまた明日。


http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+personal/  http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+shop/