官僚と新聞記者、兄と弟

昨日の続きですが、あの話には別の背景もあると思います。

「税金で留学したのに、高給の外資系企業に転職する公務員はひどい!」という批判は、新聞やテレビ、雑誌などのマスコミが指摘、報道しているのですが、実は、批判側のマスコミと批判される側の官僚達は、元々は同じ大学の学生、もしくは「同じ大学に通うかもしれなかった人たち」ですよね。

ある人たちは官僚(権力側)となり、ある人たちは“権力の監視機関であるマスコミという在野の分野”を選んだわけです。けれど元々はほとんど同じようなグループにいたのです。

官僚を育てるための東大に入ったか、在野の反権力、マスコミに人材を輩出する早稲田大学に入ったか、の違いなんて微妙な違いです。「東大に入れていたら官僚になっていたけど、早稲田大学に進学することになったのでマスコミに就職した」人がいても不思議ではありませんよね。

昨日書いた「税金返せ論」は、そういう二つのグループのさや当て的な色合いがあるとも言えます。たとえて言えば、兄弟げんかみたいなもんです。


お兄ちゃんも弟もとても優秀で有意の青年だった。お兄ちゃんは「権力側」に、弟は「権力を監視する側」に道を選ぶ。お兄ちゃんは、給料は安いが税金で留学する。マスコミには企業派遣制度があまりないので、弟にはそんなチャンスはない。ただし、弟の会社(マスコミ業界)の給与水準はかなり高い。安月給で官費留学のお兄ちゃんと、高給取りだが派遣留学の制度がない弟。これならバランスがとれています。

ところが、留学帰りのお兄ちゃんが外資系企業に転職し、弟よりずっと高い年収をもらいはじめた。「それはずるいだろ?」と弟が記事を書く。そういう話です。

外部の人から見れば、お兄ちゃんも弟も「とっても恵まれたエリート」です。こんな話に、市井の人が首をつっこむのは結構滑稽であったりもします。


そもそもお兄ちゃんの生涯賃金は“官費留学”と“天下り”を併せて初めて、新聞社で働く高給取りの弟と同等になるシステムです。本当はこういうねじれは解消した方がいいよね。安月給の代わりに官費留学と天下りで埋め合わせる、みたいなことをしてるから弟にたたかれる。

官費留学や天下りは廃止して、かわりに給与は適切な額を払えばいいのですよね。そうすれば初めて「そういう額に見合う仕事をしていますか?お兄ちゃん!」という議論が、国民の審判を受けるんだと思います。今のようなごまかした「生涯報酬」の払い方は欺瞞にすぎる、と思います。


ではまた明日!