死蔵切手とプリペイドカード

私が郵便局も NTT も JR も嫌いな理由の一つは、「金儲けのために、ユーザーの利益に全くならない金券を発行しまくる」からです。

JRのオレンジカード、NTTのテレホンカード、そして極めつけが郵便切手。これらはどれも「死蔵されること」が非常においしいカードです。


どのカードも、使いにくければ使いにくいほど発行元企業は儲かります。

だから発行部数の少ないデザインを作ってプレミアム感を高め、使われにくくしたり、

結婚記念写真や孫の写真をカードにするサービスを提供して、使われにくくしたり、

「切手はシートごと保存すると価値が上がる」などという噂を流布して、使われにくくするなど、

各社「使わせない」工夫に必死です。


実際これらのカードが何枚も“死蔵”されている家はごまんとあるはず。おじいちゃん、おばあちゃんのおうちの引き出しに、忘れられた切手が山ほどあったりしませんか?


この「公共3兄弟」の真似をしたのが、英会話スクールとエステショップ。

いずれも 50回券などの大量チケットを一括売りしたあげく、予約を取りにくくしたり、やる気をなくさせるなど様々な方法を駆使して、

「 15回くらい通ったところで止めてしまい、残りの受講券は後は死蔵してくれますように!」と願います。


というか、最初から全部は使われないことを前提に仕入れをする。

NOVA の教室スペースも外人講師も、売ったチケットが全部使われたら足りない数しか用意されてないのでは? 最初から“その日は予約いっぱいです〜”とか言うつもりなんだから。


でもね。英会話ショップやエステショップはまあいいです。だって民間だから。

彼らには、一円も税金は投入されていないし、競合もある。あまりに予約が取りにくければ客が競合に流れます。

でも、事実上の独占企業であり、有形無形の税金補助を受けている公的事業体が、そーゆーあくどい商売をやっていいの? と思います。


だからちきりんは、JR も NTT も郵便局も(ついでに NHK も)好きじゃない。年賀状も出す気がしないし、電話もできる限り他の会社を使う( DoCoMo も使わない)。


NTT から請求書がくるといつも思う。

未だに封筒に上質紙に印刷された請求書が届く・・・・他の通信キャリアから届く請求書は、はがき方式(剥がすと4面くらいになるモノ)ばかりなのに。

NTTが、如何にコスト意識のない会社か、よくわかる。まだまだ無駄なコストだらけなんだよね。

そしてそのコスト分は、ユーザーに請求される電話代に上乗せされている。なんで、あんなきれいな紙に印刷し、わざわざ封筒で、請求書を送ってくるの?


理由は、そういう封筒や紙を納めている会社に、NTTや郵政省(今は総務省)の役人が天下っているからですよね。


★★★


郵便局も「いったいいくらの切手が死蔵されているか」の開示さえしない。アメリカでさえ、数千億円の死蔵切手があるといわれてる。(←ちゃんと開示されてる)

日本は世界有数の「記念切手発行国」です。先進国としてはダントツに多い。

たぶんアメリカの倍の額ではきかない。少なくとも 5000億円、へたしたら兆の額の死蔵切手があると見られている。


切手は「郵便を運ぶことの対価」です。

一方、死蔵切手とは、対価を伴わない収入です。お金をとってサービスを提供していない、ということ。それをまるで「ユーザーがそれを望んでいる」かのように、仕向けてる。


もしもこれが民間事業で、どこの会社でも切手を発売できたら、郵便局の切手だけがコレクション対象になることはありえないんです。

「郵政公社しか発行できない」という独占保証があるから記念切手ビジネスは成り立ってる。独占的地位というのは、こんなことのために与えられているわけ??


しかも、郵便局は非常にえげつない「記念切手営業」をやってる。

田舎の高齢者に「○○さんのために、この記念切手“お取り置き”しておきましたよ」とか言って、売ってる。今年からはきっと“この投資信託、○○様のためにお取り置きしておきましたよ〜”とか言うに違いない。


やめなさないってば。


「もっと重要な」問題もあります。

切手に収入印紙・・・郵便局は「事実上、お金を印刷する権限を持っている」んです。

けれども、そこに適用されてる規律も監督も、ホントのお金を印刷している場所より圧倒的に緩い。


お札の印刷局は文字通り「お札を印刷できる」けれど、勝手にそんなことができるわけではない。でもね、郵便局が「今年、いくらの切手を印刷するか」って、誰かきちんと管理してるの?


切手は金券ショップに持ち込めば、すぐに現金化できます。郵便局は、合法的な錬金術を保有しているとも言えるんです。

特に収入印紙は高額額面だし、小さいから「 1000万円分」くらい、持ち出すのもすごく簡単。


銀行だったら「 100万円が課長のデスクの引き出しに入ってる」なんてことはありえない。

ところが郵便局では、いつでも現金化できる切手も収入印紙も、その辺の引き出しからホイッっと取り出されてる。


こんな管理体制で、よく問題が起こらないよね? 
てか、起こってるけど、わかってないだけでは??


こういう特権がなくなるだけでも、企業会計が適用される民営化には絶対反対! したい人たちがいるんだろうなと思います。


★★★

今までNTTは2種類のプリペイドカードを発行していたけど、ICカードの方は発行を中止しました。

ICカードが使える電話機も撤去する予定とのこと。ICカードシステムの開発のために投資された資金は全部無駄になる。

それらのコストも、未だに大半の人がNTTに払わざるを得ない「電話の基本料金」に上乗せされてる。

こういうシステムの値段は巨額だから、その設計を受注したシステム会社は、よろこんでNTTや郵政省の使えない中高年社員を高額給与で受け入れてくれてるんでしょう。


★★★


私は仕事に必要だったため、すごく早くに携帯電話を使い始めました。

全国津々浦々へ出張をする仕事だったから、当時は DoCoMo 以外のチョイスはなかった。DoCoMo と他社のカバー範囲が全然違っていたから。

でもね、DoCoMo が他社より圧倒的に早く全国をカバーできたのは、国民の税金で作られた全国の電話局がアンテナをたてる場所を提供・サーチしたからでしょ。

新規参入の会社はいちいち全国の市町村まで出張して、アンテナをたてる場所を探しまくらねばならなかった。ものすごい不利だったわけです。


でも・・・全国の電話基地局はもともと税金で作られたはず。それで他社より有利になって、だから DoCoMo だけ高い価格を設定します、ってのはおかしいじゃん。国民に還元すべきじゃん。と思う。

当時はそれしか選択肢がなかったから DoCoMo を使っていたけど、もう一生使わない。年賀状もださない。JRに乗らざるを得ないのだけが、残念なところです。


私はほんとに“公的な会社”が嫌い。

独占企業が多く、客に他にチョイスのないことを利用して、「それはないんじゃないの?」みたいなことを平気でやってるのがとても腹立たしい。


みなさん、家の引き出しの奥深くに眠っている各種プリペイドカードや切手を使いましょう!!


くだらないものを集めるのはやめましょう。


記念切手をよくよく見てみてほしい。それは単なる「紙に模様が印刷されたもの」にすぎません。そんなもの集めて何の意味がある??

今なら同じものはいくらでもパソコンで作成できます。パソコンで作ったものに価値がないのは、それには「公的な郵便制度のお墨付きがないから」です。

お金の対価は「デザインや記念性」ではなく、「郵便局しか発行できない」という特権に対して払われているってこと。


ちきりんに言わせれば、記念切手を買い、使わず保存するという行為は、「公的な郵便制度への寄付行為」と同義です。

「税金を多めに払っていただければ、小さな紙にパソコンで模様を印刷して差し上げます」と言われているようなものです。


まったくもって腹立たしい。



また明日



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