“セントロ”という場所

ちきりんは最近、「都市のストラクチャー」ということに関心がある。これを調べたり分析したりするのを完全引退後の趣味にしようかなとも思っています。

あちこちに旅行するちきりん。初めての都市を訪れた時にはまず、その「街の構造」「ストラクチャー」を把握するように努めます。何を言っているかというと、例えば東京でいえば、


「東側に江戸から続く下町と、その南に埋め立て地」
「西側に新宿・渋谷を中心とした商業集客地」、で、それらを左右の起点とする山手線の円。
「そのずうっと西側に住宅地である山の手が広がり」
「そのまたずっと西側に、多摩の山々の自然があります。」って感じです。


ううむ。例でしか説明できないなんて、まさに“言葉の敗北”ですが・・伝わったでしょうか?


南米の都市のストラクチャーは極めて似通っています。サンチャゴ、リマ、サンパウロ、ハバナ・・・とても似てます。

(1)「公園と教会を取り囲む下町であるセントロ(旧市街)

(2)「郊外の新興地域、住宅地と中核のショッピングセンター(車で行くしかない)のあるエリア」

(3)「幅広で直線の長い2〜3車線道路を高層ビルが挟んで建ち並ぶ新市街

の3つでできあがってるんです。

人口構成とか予算(街作りにかけられる国家予算)=経済力等によって若干色が違うけど、この基本ストラクチャーは同じ。

★★★

まずは旧市街でとった写真を一枚どうぞ。これが(1)セントロ付近です。

セントロってのは、東京でいえば浅草みたいな感じです。下町。人が多くてわいわい活気があり、雑然としている。人の服装もラフでしょ?

写真の後ろに写っているように、南米の都市のセントロでは、建物自体は欧州諸国が植民地時代に建てたモノなのだが、それが全くメンテされないまま、南米の生活のために使われている点が特徴的。日本の建物とちがって、植民地時代のビルは200年たっても消失はしないのです。

ただメンテしてないからドアや窓は壊れてるし壁ははげてるし全体に汚い。昔は貴族が住んだお屋敷に裸の子供達が走り回り、窓から大量の洗濯物がつきだしてる、って感じ。でも、皆楽しそうで、悲惨な感じはない。

この(1)の旧市街はたいてい観光のメイン地域でもあります。

★★★

(2)そして郊外の新興住宅地。こちらは世田谷的。住むエリアです。住むために必要なもの、ショッピングセンターなどがある。セントロと違って公共交通機関はあまりなくて、移動に車が必要。移動に車が必要な状態にしておくと貧乏な人がこないから望ましいのです。

下記は郊外の新興住宅地にできているスーパーマーケット外観と、中の様子。スーパーがY,Yamadaという名前なのです。日系の方の経営なんでしょうね。

[

セントロでは、お店といえば市場(メルカドと呼ばれる中央市場が必ずある。)、屋台や個別の路面店が中心で、いわゆる「八百屋」「靴屋」の世界ですが、ここでは総合スーパーが中心となるのです。

その他にこのエリアには日本料理レストランなどもあり、ちきりんも食べに行きましたが、自家用車で「中産階級」的ブラジルの方もたくさんこられていました。彼らは、旧市街の屋台の惣菜で食事をしている人たちとはちょっと違う人たちです。はい。

★★★

(3)最後に新市街。イメージで言えば大手町か西新宿。広い敷地を再開発して、ゼロから道路を引き、高層ビルを周りに建てて、作られる。多くの外資系企業はここに進出する。ホテルや金融機関、外交施設もこの地域に建てられます。

収入の高い人が集まるので、レストランやブティックもおしゃれで高価格。セントロとは「ほんとに同じ国?」と思わせるほど違う雰囲気だったりします。物価も違う。

セントロや郊外の新興地とはかなり雰囲気が違いますよね。

★★★

日本は貧富の差が小さいので、どんなエリアの物価もほとんど変わりませんが、南米では、上記の(1)、(2)、(3)では全く物価が違います。同じミネラルウオーターの値段が、60円から150円くらまで2倍以上違う。ランチなどはもっと違う。

あと、都市整備の優先順位として「セントロは捨てます」という方針が非常に明確。いや、余裕があれば整備したいんだろうけど、限りなく後回しにする方針が明確に見えます。そんなお金があれば、まずは新市街、そして郊外を整えて・・・って感じですね。

そうなると人もそうなる。セントロで生まれ育ったが、成功してお金ができたら郊外の新興地に移り住む。もっと成功した子供は新市街で働いて・・・という具合。

反対に一生セントロからでない人、家族もある。

一方で、ちきりんが出張でサンパウロを訪れたら基本的には(3)のエリアのホテルにとまり(3)のエリアだけで仕事をして、あとは空港との間をタクシーで往復するだけだ。(1)や(2)は関係ない。(3)は食事もホテルも施設のレベルも、国際基準だ。もちろん値段も。

それぞれの地域は「別の種類の人のため」に区分されている。

★★★

“なんで””こういうストラクチャー”になるのか?というのがおもしろいよね。しかも南米の大都市は皆同じ。セントロ、郊外新興地、そして新市街。なんで、同じストラクチャーになる?

歴史や文化や人口密度や経済力や、いろんな要素が絡み合って街のストラクチャーが決まってくる。この関係がすごくおもしろいな、と思っているのです。それを写真や図や資料を使って分析できたら、すごくおもしろいんじゃないかと。

南米はこう、米国はこう、中東はこう、とかね。

まあ、巧く言えないんだけど、そういうことに最近関心あります。



んじゃね!