バレる理由は3つとも同じ

まったく同じ構造ですね。あまりにきれいに同じ。


(1)食品偽装

ここ数年、やたらと続いたのが食品会社のスキャンダルです。赤福や白い恋人などの菓子メーカーから、吉兆などのレストラン、その他、食肉加工業者まで、「客の残した食材を使いまわし」「回収品を再利用」「実は国産品じゃなかった」などがバレて告発、報道されています。

大半のケースで「不正は十数年にわたり行われており・・」とのことだから、決して「昔はなかった偽装が今は増えてきた」わけではありません。単に「昔は偽装がバレなかったが、今はバレやすくなっている」だけなんです。


なんでバレ易くなったかといえば、不正を知りつつ働いていた人たちが、昔は「みんな正社員だったが、今は大半が非正規雇用や派遣社員だから」ですよね。

いいこととは思いませんが、正社員にはその会社の“家族”として、会社を守ろうという意識があります。その代わり、会社は一生自分を守ってくれる。そういう信頼関係があって「長年続いていた不正」が見えてこなかったんです。

ところが今は、会社になんの恩義も義理もなく、むしろ「頭にきてる」という人がたくさん働いてます。しかもすぐに首にされる。


お一人様2万円以上という高級コース料理の食品が使いまわされていることを、時給800円で使い倒されたあげくに虫けらのように解雇されたバイト社員が「隠してあげる」必要は全くない、ということです。だから内部告発により、どんどんこういったスキャンダルが明るみに出るようになった。

会社が、会社と人生をともにしていた社員だけで経営されていた時代には「バレなかった」ことがね。



(2)社会保険庁

これも、報道されているほぼすべての悪行が「過去何十年も行われてきた」ことです。なのに、なぜここ数年だけあれやこれやとバレはじめるのか、不思議に思いませんか? ここまで無茶苦茶なことが行われていたのに、数年前まではまったく明るみに出ず、隠されていた理由は何なのか?

民主党の議員が調べたから明るみに出たのだという人がいますが、それは余りにおめでたい見方です。民主党の議員に“全部教えてくれる人”が出てきたから、バレ始めただけです。で、そんなの教えてくれるのは誰?


簡単です。社会保険庁の内部者というのは、労組の人なわけです。彼らは過去どんな不正が行われてきたか、全部知ってます。てか、それを実際にやってきたのも見逃してきたのも彼らなのだから。

ご存じのとおり、労組は民主党の最大の支持基盤です。一方で「自民党&官僚」軍団は、社会保険庁から(民主党を支持する)労組を排除しようともくろんだり、社会保険庁解体まで推進しようとしています。


今、社会保険庁の悪事や悪行がバレればバレルほど、これまでずっと政権を担ってきた自民党が叩かれます。民主党はそこを攻めれば、支持が高まります。つまり、自分たち労組が支持している民主党が得をする。

社会保険庁という組織と、労組という労働者団体が一生の命運をともにしていた時代には決して明るみにでなかった悪しき慣行が、事細かに世間に開示されるようになった。最初の事例とまったく同じ構造です。



(3)相撲の八百長

この話だって今初めて問題になるような新しい問題じゃないですよね。でも、当事者の証言がおこわなれる裁判は“今初めて”なんです。

リークしたのは“大麻で首になった外国人力士”ですね。彼に言わせてみれば「六本木の夜なら誰でもやってる大麻で俺を首にする一方、国技とかいって大きな顔をしている相撲界って、八百長だらけやん」みたいな感じなんじゃないでしょうか。

「俺の首を切る、あんたらだけが正義の味方かい?」「なんか変じゃね?」と。

これも力士と相撲協会が“国技たる相撲界のメンバー”という虚構的人生を共有していた時代には決して「バレるはずのない」ことだったわけです。



3つとも、「その組織を運営するための人」を大事にしなくなったから、簡単に切ろうとするから、悪行の内部告発=内部リークが起こるわけです。

悪いことをしてずうっと隠したいなら、それにかかわった人は「一生めんどうをみる」ことが必要なわけ。

正社員だろうと力士だろうと、いったん不正を見せた人は一生抱え込むしかないわけです。簡単に“手切れ”はできないと思うべき。

愛人だって関係が続いてる間は週刊誌に手記を売ったりしません。だからマフィア系ギャングだと「組織から抜けるときは命はないものと思え」を徹底する。



不正を共有した“仲間”を平気で切る。

だから不正の発覚がとまらない。

おんなじ構造だな〜と。



ただ、反対から見れば、派遣社員であれその他の非正規雇用者であれ、「本丸に外部者が入り始めた」ことは結果として“ガバナンスの監視機能”という「別のメリット」をもたらしはじめた、とも言えるんだよね。

つまり非正規社員って、「正社員では持ち得なかったパワーを持っている」ともいえるわけです。



んじゃ。