考)“販売以外”の店舗価値

一昨日、店舗販売からネット販売へのシフトに伴い、実店舗は販売以外の価値の提供拠点として先鋭化するんじゃなかろーか、と書いた。

そこで今日は「販売以外の価値にはどんなものがあるか」、ちょっくら考えてみるです。


(1)買い物の楽しみの提供

何も買わなくてもショッピングは楽しい。ので、“ブラブラ商品を見てまわる楽しみ”を提供できる店は残りそう。というか、それを主目的に設計されれば、今より楽しいお店がでてきてもおかしくない。

一番わかりやすいのはドンキホーテみたいな店です。主要価値は“販売”ではなく“溜まり場の提供”“暇つぶしの場所の提供”にある。もちろん“付随機能としての販売”も行われるんですが。

百貨店ももういちど夢を売ることができれば、いくつかは残ると思う。昔の新宿伊勢丹とかそういう場所だったように記憶する。ショッピングセンターなら“子連れママのためのコミュニティの提供”を主目的に再設計すればいい。

もちろん収益はネット側(販売)であげるんだけど、“楽しい場所である実店舗”で「見た見たコレ!」というものを買って貰う。ていうか、雑貨とか点数が多すぎるので実店舗で購買意欲を刺激するのは大事なことだと思う。


(2)ショールーム店舗

いくら機能が最重要なものでも実物を見てみたい、というニーズはあるはず。パソコンなら通販でもいいけど、テレビになるとやっぱり質感も見ておこうかな、とかね。なので、ショールーム的な店舗機能は残るはず。

実は今、キッチンシンクとかトイレタリー用品ってそういう売られ方をしている。松下電工やクリナップのお店はショールームとしてキッチン設備を客に見せている。TOTOやINAXも同じように各地にショールームを持っている。けど、販売はそこではほとんど行わず、工務店やゼネコン、リフォーム屋経由で売る。

家電や家具も今後はそういう諷に"ショールーム機能”と“販売”を分離するようになるんじゃないかな。もちろん販売はネットでね。


(3)フィッティング店舗

アマゾンは靴を「いくらでも注文して、要らないのを返品してください。買った靴の分だけお金を請求します」という形で売り始めてる。(ちきりんの体験記はこちらです!) ただバリエーションが圧倒的に多い服でアレをやるのは厳しそうだ。

じゃあってことで、たとえば、平日の夜にネットで「試着してみたい衣服10着」を選んでおき、土曜日の試着日を予約しておく。で、当日“フィッティング店舗”に行くと、そこに「予約した服」がすべてそろっていて、で、2時間くらいかけていろいろ検討して、その場で買うモノだけ選ぶ、ってのは便利そうじゃない?

しかも、デパートなら「ブランド横断的」に試着したい服を一カ所に集めておいてくれたら非常によいです。必要な人は「コーディネーション・アドバイザーの予約」もしておけば、販売員がついてくれる。

店舗がどう変わるかというと、百貨店の4階から6階まではすべてフィッティングルームになる。しかも4階はレディース専用、5階は小さな子供連れの人用として、フィッティングルームも2畳くらいのものにし、子供も一緒に個別ルームに入れるようにすると、お母さんは圧倒的に行きやすくなる。もちろん同じ階には喫茶店やレストランも置く。

で、フィッティング店舗は売上げの一定比率をメーカーから受け取る。

もちろん客が選んだ“試着したい服”にあわせて「この服を試着したお客様は、この鞄もお求めです」という例のアマゾン方式で、「余分な買い物品」もフィッティングルームに用意しておく。コーディネーションして“ついで買い”する人もいそう。


(4)非標準商品(サービス)へのアドバイザリー店舗

旅行にしろ金融にしろ、標準的なサービスはネット取引に移行する。でも「個別ニーズ」は人が対応するほうが効率的。パック旅行や決まり切った注文などの定型業務がIT化すれば、人は時間が余るからもっともっと「個別に対応サービス」が提供しやすくなるはず。

これは課金方法を考える必要があるけどね。(考えはあるのですが、長くなるのでまたそのうち)


(5)バックヤードとしての店舗

ちきりんが利用する駅前のスーパーマーケット。今までも宅配サービスはあった(買ったものを預けると当日か翌日に配達してくれる)のだけど、今はそれに加えて「ネット通販」も始めてる。その日の朝10時までに注文すれば午後に届くので超便利。

この利用が多くなると、スーパーマーケットの店舗はアマゾンの倉庫のように、バックヤード、もしくは、配送拠点としての店舗になる。もちろん現地で買う人もいるけど、売上の大半はネット通販注文からあがってくる。

各スーパーは、自分のスーパーから半径数キロのエリアだけをネット販売の対象とするので、注文をうけたら店員が袋に商品をいれてそれを軽トラックに載せる。軽トラックは30分事に近隣の配達に回る。ネット販売というよりほとんど“買い物代行業”ですね。

スーパーって夕食前の数時間だけが突出して混むんです。だから昼間の暇な時間の活用として、この“買い物代行業的”ネット通販スーパーは設備&人件費効率のためにもいい。ただ、今はほとんど手数料をとってないので大赤字なサービスだと思う。むしろ「これで食べていく」という“本気のビジネス構築”が必要だとは思います。


(7)取り次ぎ店舗

たとえば、時計の電池交換、靴の修理、クリーニング、住民票の請求など、すべてネットで見積もり、予約をして、“窓口で預けたり、受け取る”という方式になりそう。すると、この“取り次ぎ代行業的店舗”てのが現われるのではないか、という気もする。

最近でてきている“ミールデリバリー”(電話やネットで申し込むと食事が届けられる)も、家まで運ぶのもアリだが、この拠点で受け取る方式もできそう。もちろん、家(マンション)に宅配ボックスがない人の“荷物受け取り代行”も行う。


(8)自分がいく必要のある店舗
歯医者、美容院、ネイルアート、スポーツジム、レストランやカフェ、居酒屋などは店舗として残るよね。それでも予約はすべてネット(携帯からの予約含む)になりそうだけど。


というわけで、“販売”という主目的がなくなっても、店舗はそれなりに存在しえる。というか、むしろ“販売”という圧倒的に大きな(安直な)目的がなくなる方が、それぞれが厳しく存在価値を問われて、より素敵な場所になっていく可能性もあるんじゃないかな。

もちろん、顧客のニーズを把握した上で“販売以外の付加目的”を明確に定義でき、それを提供できる店舗だけが残っていくんだろうけど。


大きく言えば、今までは
「実店舗での販売をサポートするネット」だったのが、

「ネット販売をサポートするための実店舗」になっていくっていうかね。


ちきりんですらこれだけ思いつくんだから、実際にはもっとクリエィティブな実店舗がでてくると思う。


楽しみだよね。


そんじゃーね


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