自殺にみる男女格差

自殺に関するデータを見ていたら、自殺って男女差がすごく大きいんだと知って驚きました。

下記のグラフは、1978年から2009年まで、過去30年ほどの男女の自殺比率です。縦軸は「人口10万人当たりの自殺者数」で単位は“人”、青線が男性、赤線が女性です。一目で「男性は女性より圧倒的に自殺率が高い」とわかります。男性は女性の倍以上の比率で自殺するのです。



  (2009年の自殺者実数では、男性23,472名、女性9,373名の合計32,845名)


しかも女性の自殺率は過去30年で、大きく変ってはいません。最近よく「自殺が異常なペースで増えている!」と聞きますが、実際には「日本では、男性の自殺が異常なペースで増えている」というべきなのです。男性の自殺率は過去30年で6割増であり、特に1998年くらいからは男性だけ急増しています。*1

「なぜ男性の自殺がこんなに増えているのか」、同じ資料に男女別の自殺理由もあったので見てみました。この資料によると、自殺者の74%以上について、遺書などで自殺原因がわかっています。その、自殺理由がわかっている人について、一人最大3個の理由を挙げて、その数を集計したデータがありました。それによると、大きく分けて自殺の理由は4つに分れます。


ひとつは経済状態や仕事が原因となるもの。倒産、生活苦、負債、失業、事業の不振、仕事疲れ、職場環境の変化や職場の人間関係によるものです。

2番目は人間関係によるもの。家庭問題(親子や夫婦の不和、家族の死亡や子育て・介護の悩みなど)と男女関係(結婚、失恋、不倫など)です。

3番目が健康問題。身体的な病気の他、うつ病による自殺も含みます。

4番目が学校問題とその他。


で、男女別にそれぞれの項目が自殺理由と考えられる人の数をみてみると下記のようになります。


(上述のように複数要因での自殺があるため、合計は人数より多くなっています。)


よく「自殺の原因で一番多いのは健康問題」と言われます。確かに男女合計では健康問題での自殺が一番多いです。しかし、実は男性に限ってみれば健康問題より経済・仕事関係の理由での自殺の方が多いのです。上記棒グラフをご覧ください。

すぐにわかることは、経済的な理由で自殺する男女差の大きさです。全体に男性の方が自殺する人が多いので、すべての要因で男性(水色のバー)の方が高くなっています。しかし、他の理由では男女差はせいぜい倍程度ですが、経済的理由で自殺する人は、男性10人にたいして女性1人という割合で男性が圧倒的に多いのです。驚くべきデータですよね・・・

経済・仕事問題での自殺が、健康問題での自殺より(男女合計として)少ないのは、女性がお金や仕事のために死なないからです。また、経済的な理由での自殺男女比がここまで違わなければ、全体での男女の自殺比率格差もかなり縮小することでしょう。


男性の人生ににとって、経済力や仕事がどれだけの重みを持つものか、重要なことなのか、再認識させられます。“女性にとっては全く「死を選ぶ理由」とはならないお金や仕事のこと”で、これだけの男性が死を選んでいるという現実。


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ちょっとびっくりしたです。



元データ:http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/link/keisatsutyo.html

*1:追記:男性の自殺が急増した1998年頃の状況:1997年に北海道拓殖銀行、三洋証券、山一証券などが倒産、98年にも日本長期信用銀行が国有化されるなど、1997-1998年は日本の金融破綻の年。多くの企業がリストラに踏み切り、中小、零細企業では倒産に追い込まれたところも多い。