もしもあなたが“ジャパンサミット”を主催するなら?

先日、“Japan Summit 2011”というイベントをのぞかせて頂きました。(多くの考えるきっかけを頂け、とても有意義でした。それらについては今後少しずつ書いていこうと思います。)


これは経済誌“The Economist”を発行するエコノミストグループ主催のカンファレンスで、朝8時半から夕方6時まで様々なトピックについて政治家や経済人による講演とパネルディスカッションが行われました。場所はホテルオークラの巨大なバンケットルームです。(参加者は150名くらいでしょうか)

日本では11回目の開催だそうですが、同グループは、ベトナム・サミット、中国・サミット、インド・サミットなど他地域でも同様の会議を開催し、さらに地域ではなく課題をテーマにしたもの、たとえば“Women in Asia”や“Healthcare in Asia 2011”“Feeding Asia”なども主催しています。(もちろん欧州、南米やアフリカなど他地域でもやっていると思います。)


ちきりんがまず理解したのは、「メディアグループが、こういったシンポジウムを世界のあちこちで開く」という視点の持ち方と行動原理です。

彼らはこうした会を通じて「世界のどこに投資機会がありそうか、成長機会がありそうか」を常時ウオッチし、エコノミスト誌の読者であるグローバル企業のエグゼクティブに定期的にその情報を伝えようとしています。

同時に各国の政治家や経済人とコネクションを作り、その後の公式、非公式な関係強化を通じて、その国への理解を深める手立ても得ようとしているのでしょう。

最近は日本のメディアグループ(特に経済やビジネスに強いところ)が同じような視点でのカンファレンスを主催することも増えていますが、今回のイベントを見て、まだその広がりと能動性において、かなりの差があると感じました。


また「何年か後、既存メディアではなくネットメディアがこういうイベントを開くようになったら、カンファレンスの内容はどう変わるだろう?」と考えるのも興味深いものでした。

今回は壇上で講演する人も、会場の参加者もほぼ全員が伝統的なビジネススーツに身を固め、平均年齢も高く、さらに大半の人が世界的な大企業のビジネスパーソンでした。

会はいくつかの大企業がスポンサーしていますが、一般の参加料は10万円〜16万円であり、会議はクローズドで行われます。(後から一部動画がサイトには載ります。)


でも、将来ネットメディアがこういった会を主催するようになったら、参加者の服装が、まずは大きく変わるでしょう。参加料の設定、会議をネットで流すかどうかなど運営スタイルも変わるはずです。(シリコンバレーで開催されるネットやIT関係のグローバルカンファレンスなら、既にかなり“異なる風景”になっていると思うのですが、一般的な“政治経済”のカンファレンスの光景がいつ変わるのか?が、興味深いところです。)

さらにカンファレンスの骨格である、議論のトピックとスピーカーの顔ぶれ自体も、今回と同じにはならないでしょう。


たとえば、今回の議題は下記です。

(1)日本の再活性化に向けて
(2)日本のリーダーシップ体制(政治側?)
(3)エネルギーの未来
(4)分権型社会の到来
(5)モデル都市、未来都市の姿
(6)財政再建問題
(7)日本経済の展望(高齢化社会を迎えて)
(8)グローバリゼーションのための日本人の人材の質
(9)2012年 世界のリーダー

よく練られたトピック構成だと思います。でも、もし20歳くらい平均年齢が低いスタッフが中心のネットメディアが“ジャパンサミット”を主催すれば、トピック構成も違ったモノになりそうですよね。


そして下記のスピーカーとパネリストの顔ぶれも、主催者の性格によってずいぶん違うものになりえると思われます。


<政治家>
・民主党 政策調査会長 前原誠司
・自由民主党 政務調査会 会長 茂木敏充
・自由民主党 前政務調査会 会長、 元農林水産大臣 石破茂
・自由民主党 シャドウ・キャビネット 官房副長官 林芳正
・宮城県知事 村井嘉浩
・九州地方知事会 会長、 大分県知事 広瀬勝貞
・関西広域連合  広域連合長、 兵庫県知事  井戸敏三


<経済団体・企業人>
・日本経済団体連合会 会長  米倉弘昌
・トヨタ自動車 技監 渡邉浩之
・テムザック 代表取締役 高本陽一
・モンベル 代表 辰野勇
・メリルリンチ日本証券 調査部 日本チーフエコノミスト マネージング・ディレクター 吉川雅幸
・マッキンゼー・アンド・カンパニー 日本支社長 ジョルジュ・デヴォー
・ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン 代表執行役員、社長 フレデリコ・モンテイロ
・日本GE 代表取締役社長兼CEO マーク・ノーボン
・ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン 社長


<アカデミック・研究機関・国際団体>
・東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授 井堀利宏
・上智大学国際教養学部 教授 中野晃一
・政策研究大学院大学  教授  井川博
・政策研究大学院大学 教授 黒川清
・臨床教育研究所「虹」所長、法政大学キャリアデザイン学部 教授 尾木直樹
・一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 客員教授 近藤正晃ジェームス
・東京大学社会科学研究所 博士研究員 元UBSグローバル・アセット・マネジメント エクイティ・リサーチアナリスト ポール・スキャリス
・テンプル大学ジャパンキャンパス 現代アジア研究所 所長 ロバート・ デュジャリック
・環境エネルギー政策研究所 所長 飯田哲也
・国連事務総長特別顧問(人間の安全保障) 前国連大使 高須幸雄


<その他>
・元経済産業省 経済産業事務官 古賀茂明
・都市計画家、 まちづくりカンパニー・シープネットワーク 代表取締役 西郷真理子


★★★


ちきりんは先日「ゼロベースで考えることが大事」というエントリを書きましたが、今回のカンファレンスはまさにその課題として最適なお題のように思えました。

もしも皆さんが今、「日本の今後を考えるためのジャパン・サミットという会議を主催するとしたら」、誰を呼び、どんなトピックで議論をしてもらいたいと思いますか?


最近はビジネス界だけでなく、アカデミックな分野でもNPOの分野でも、また学生向けのものなど、様々なカンファレンスが開かれます。日本だけで開かれるものに加え、日中韓合同やアジア全体の会議、グローバルなイベントも増えています。

日本でもこれらに参加する人も増えてきていると思うのですが、今回感じたのは、「参加」という立ち位置の他に「主催」という立ち位置で考えてみるのもおもしろいかも、ということです。

「ジャパン・サミット」という言葉を額面通り受け取れば、この会議にでれば今後の日本にとっての重要課題が網羅されており、それらについて「キーパーソン」と言える人達が議論をする、そういう場だということになります。

そのトピックやスピーカーを考えることは、まさに「今、日本にとって重要なことは何なのか?」を考えることでもあります。


「自分のアタマで考える」のが大好きなちきりんブログの皆さんには、是非「自分が“ジャパンサミット”の主催者だったら、どんな議題を選ぶだろう?誰を呼ぶだろう?」って考えてみてほしいです。それらの主催企画案を議論すること自体が、たぶんとってもおもしろい。

たくさんの学びが得られた会だったのですが、まずはこのことから。


そんじゃーね。