金正男氏の運命やいかに・・・(いろんな意味で)

10年ぶりくらいにハードカバーの本を買いました。
しかも付箋を貼りながら熟読!


私は連合赤軍、よど号事件などの新左翼や北朝鮮関係の話題が好きで、「どんだけ?」っていうくらい関連本を読んでいます ↓


金正男氏に興味を持ったきっかけは、金正日氏の2番目の妻であり、金正男氏の実母であるソン・ヘリムさんの姉、ヘランさんが書いた本(下記)を読んだこと。

北朝鮮はるかなり―金正日官邸で暮らした20年 (文春文庫)
成 〓琅
文藝春秋
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彼女は自らも息子と娘をつれて、妹家族(=金正日、金正男、ソン・ヘリム)と長い間、同居しており、その頃の話を書いた本です。

(ヘリム、ヘラン姉妹は韓国出身なので、親に連れられて北に来た経緯や、その後の体験についても書いてあります。)


表紙の写真は、前列が金正日氏と幼い頃の金正男氏。正男君はごく普通の男の子に見えます。

そして後ろが著者のソン・ヘランさんにその息子と娘。なぜ金正男の母親であるソン・ヘリムさんが写ってないかというと、病気だったからです。

鬱病とか不眠症といった病気ですが、そもそも「美人で映画女優になり、有名作家と結婚して子供もいたのに、金正日に見初められて略奪され(?)て離婚&再婚。

ところが義理の親の金日成に反対されて(長男を生んだにも関わらず)正式に妻と認めてもらえず、加えて金正日が浮気を始めて別の女のところに・・・」みたいな状況では精神の安定を保てる方がおかしい。


ちなみに、姉一家は後に北朝鮮を脱出しており、著者の息子(正男の従兄弟)の李韓泳氏は韓国で北のロイヤルファミリーに関する暴露本(下記)を出版しました。


そして・・・


ある日、


待ち伏せしていた男等にピストルで頭を撃ち抜かれ殺害されました・・・


こわーーーーーー!



彼の母であり『北朝鮮はるかなり』を書いたソン・ヘランさんも、北朝鮮から亡命後は、滞在先を超極秘にして隠れまくっている(いた?)とのこと。

実際、この本の原稿を編集者とやりとりする時にも、世界中に点在する何人ものダミーのエージェントを介してやりとりしたらしいです。今も彼女がどこにいるのか誰も知りません。

で、この本『北朝鮮はるかなり』は内容がすごくいい。

北朝鮮はるかなり―金正日官邸で暮らした20年 (文春文庫)
成 〓琅
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『金正日が愛した女たち』の方は世界が想像しているとおりの「北朝鮮の権力者のめちゃくちゃな生活」が描かれてるんだけど、

『北朝鮮はるかなり』の方は、もっとごく普通の「お父さんとお母さんと金正男くん」的な一家族の風景が描かれてる。

もちろんそれは「すごく特殊」な家族であることは間違いないのだけど、それでも政治とか経済とか独裁とか喜び組的な世界ではなく、

「家庭の食卓」とか「家の中のこと」「教育問題」「親子の会話」などについて書かれていて、とても興味深かった。

それ以来、正男ファンな私は、今回の本も超楽しみにしてました。


前から書いているように、ちきりんは「北朝鮮の崩壊」はそんなに簡単には起こらないと思ってます。

中東の春みたいなことがスグに起こったりはしません。(過去エントリ→ 「北朝鮮はそんな簡単に崩壊しない」)

でも数年後に、今回、三代目の後継者となった正恩氏が実質的なトップになる必要がでてきたタイミングでは、いろいろおもしろいこと(&やっかいなこと)が起こるかもしれないとも思います。

それがどんなことなのか、その時、後ろで糸を引いている人や国がどんな動きをするのか、興味は尽きないわけですが、

金正男氏と五味洋治氏のインタビュー&メール記録のこの本は、それらを想像していく上ですごく参考になりました。

なにげないメールのやりとりの中に緊迫感が漂っていたり、金正男氏の様子からいろんなことが伺えたり・・・、北朝鮮フリークの人には奥深い一冊になっています。


で、今回読んだこちらの本の話に戻ると・・・最初の感想は「こんな本、勝手に出しちゃっていいのかな?」ってことです。

上記に紹介した本とは違って、こちらは当事者である金正男氏が自分で出した本ではなく、インタビュアーが(ある意味、勝手に)出した本なんだよね。

こんな内容を暴露されたら、殺されちゃうんじゃないの? って思えます。

父・金正日と私 金正男独占告白
五味 洋治
文藝春秋
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とりあえずは、正男さんの無事を祈りたい。



そんじゃーね


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