連載08) 教育の多様化で街興し!

<日本の地方と若者の政治参加を考える特別連作エントリ>
バックナンバーは下記です。
連載01)  新宮市に行ってきた!  
連載02)   並河哲次 新宮市議 26才
連載03)   新人議員、大災害の衝撃!
連載04)   非常時対応とは? 復興とは?
連載05)   “ワンパターンの地方再生策”を脱するには?
連載06)   新卒就活カードを敢えて捨てた理由
連載07)   社会を変えたいなら、まずは自分の生き方を変えること


今日は、並河さんの選挙時の公約であった「教育の多様化」についてお聞きしました。

★★★


ちきりん「教育分野について公約を掲げられたとのことですが、具体的にはどんな教育を実現したいのですか?」

並河氏「教育の多様性を実現したいです。先生だけに教えてもらうのではなく、社会の中の多彩な人と会う機会を子供に与えたい。学校にそういう人を呼ぶということだけではなく、子供たちをどんどん外にも出していきたいですね。」

ちきりん「外に出すとは、具体的には?」

並河氏「たとえば条件をつけながらですが、アルバイトを認めるとか、NPO活動も学校教育の一環として認めて参加させるとかです。

あと、学校に外の人を呼ぶ方も、講演のような一時的なものだけではなく、部活動を社会人と一緒にやるなどの方法が考えられます。お金をかけずに簡単にやれることもたくさんあるんです。」


ちきりん「それはよさそうですね。子供に大人の社会をもっと見せるべきですよね。他には?」

並河氏「受ける授業や専攻を選べるようにするのもあるし、学校自体が多様性を持つべきとも思います。前期はA校にいって、後期は隣のB校に行くというのでもいい。」

ちきりん「それはおもしろいアイデアですね。大学でも、1年生は東京の大学に行き、2年目は和歌山県の大学というように、国内留学の制度があってもいい。」

並河氏「そうです。姉妹校として提携し、プロセスを明示するだけでそういう体験をする人が増えると思います。」



写真:2012年 新宮市を訪れた田植えボランティアの人達  本人提供


ちきりん「他に教育に関してはどんなことを?」

並河氏「とにかく若い人に投資したいです。今は限られた財政の中から、採算の取れていない観光施設に毎年補助を出し続けたり、工場誘致とか高速道路建設とか、よそ頼みの地域振興ばかりにお金がいっています。

でも、投資すべきは未来を担う子供達です。新宮市には3つの高校がありますが、ひとつは私立で授業料も高いですから、普通の家では子供はふたつの高校のいずれかに進学することになります。高校進学の段階から『ほとんどチョイスがない』ような状況なんです。

学校教育は真ん中の子供に合わせて教えられるので、これでは特によくできる子でも上にどんどん伸びていくことができない。また小学校からみんな知り合いで、世界が拡がらない。」


ちきりん「なるほど。狭い世界の中で従来型の教育を受けて、既存の価値観だけをもって外に出たら、結局は今の就活ヒエラルキーの“中から下”みたいなところに放り込まれるだけになってしまうと・・」

並河氏「新宮市はカリフォルニアのサンタクルーズ市と姉妹都市で、短期交換留学もしています。ものすごくいい機会なのに、希望者の子供の全員を派遣することができていないんです。

余りにもったいないでしょ? サンタクルーズ市ってシリコンバレーのすぐ近くなんですよ。こんなスゴイ機会があるのに、それがどれだけ価値のあることかあまり知られていない。」

ちきりん「確かにそれは、行きたい子供は全員送ってあげたいですよね!」


並河氏「そうです。教育は、今いる子供達のためになる上に、人を呼ぶこともできる分野なんです。教育がよければ住みたいと思う人が集まるし、新しい教育に携われるとなれば、全国からここに来て活動したいと思う人も集まります。新宮市をそういうことで活性化する市にしたいんです。」

ちきりん「最初に住んでいたNPOの共育学舎でも、教育をやってるんですよね?」

並河氏「夏休みなどに小中学生向けのキャンプをやったり、あと、大学生や社会人含め、何かをやりたい人が短期や長期に滞在して、自分のやりたい分野に取り組んでいます。」


ちきりん「やりたいことは何でもいいんですか?誰でも行けるんですか?」

並河氏「誰でもウエルカムです。教育、農業、環境なんかに興味のある人に向いているけれど、限定していません。意欲がある人なら自分のやりたいことにじっくり取り組める、そういう場所を提供してくれています。

また、田舎に住みたい人、農業をやってみたい人に機会をあたえる。そいういう人に、余っている農地を仲介する仕組みを促進するというのも、議員として考えています。」



写真 NPO共育学舎で頂いたランチ。ほぼすべて近隣で栽培したオーガニックな素材。 ちきりん撮影


ちきりん「仕事がないというのは、地方の共通の課題ですよね。だから若い人が住み続けられない。普通は『だから工場の誘致を』もしくは『観光を』となるのに、これは異なるアプローチですね。」

並河氏「僕の住んでみた実感では、仕事がないと思い込んでいる、といった方が正しいと思います。仕事はいくらでもあります。既存の企業や組織に雇ってもらおうと思うから仕事がないんです。ここで求められているモノはたくさんあるんです。それを提供すれば、かならず仕事になります。

贅沢ができるほどのお金は稼げないかもしれないけれど、普通にやっていける程度にはできるはずなんです。」

ちきりん「なるほど。私の頭が固くなってるのかもしれませんね。地方というととにかく『仕事がないよね』と思ってしまうのは固定観念に取り憑かれていたのかもしれません。」


★★★

工場誘致でも観光でもなく、「教育」を全面に出して街を活性化でき、外部から人を呼べたら、スゴクよさそうですね。やりようと工夫によってはお金も掛からなさそうです。ぜひ実現してほしいし、先行きを見守りたいと思えるお話でした。


いよいよ次回は最終回です!


そんじゃーね! (続く)