ちきりん流 災害への備えについて

今日は「防災の日」なので、防災のために私がやってることをまとめておきます。


1.長い時間、滞在する場所から対策をとる

地震は「いつ起こるか、わからない」です。

これは「自分が滞在する時間が長い場所で、地震に遭う可能性が高い」ってことを意味します。

簡単にいえば、毎日4時間いる場所で地震に遭う可能性は、2時間いる場所で地震に遭う可能性の倍です。

たとえばある人が、平日に往復 1時間、通勤のために地下鉄に乗るとします。オフィスには朝 9時から午後 7時までいて、自宅には夜 9時から朝 7時までいる。土日は午前 10時から夕方 5時まで出かけ、その他の時間は家にいるとしましょう。

一週間の合計で考えると、この人が地下鉄に乗っている時間は合計 5時間、オフィスにいる時間は 50時間、家にいる時間は 84時間です。

このため、自宅で大地震に遭遇する確率は、地下鉄に乗っている時に地震に遭う確率の 17倍です。

また、この人が地震に遭遇する場所が「自宅かオフィスのいずれか」である確率は 80%です。

なので、基本はこの二つの場所に絞って災害対策を行えばいいということになります。

このように、家族それぞれ、どこにいる時間が何時間なのか、週単位で計算してみましょう。子供なら学校、幼児なら保育園が長いはず。

前述したように、滞在時間の比率は「そこで地震に遭う確率」と同じなので、まずは滞在時間の長いところで地震が起こった場合、家族とどう連絡をとるのかを確認しておけばよいのです。


そして、それぞれの場所での対策を考えます。

もし会社での滞在時間が長いなら、自宅だけではなく会社にスニーカーや着替え、常備薬などを置いておくべきです。

特に「昼間はずっとコンタクトだが、夜はメガネ」とか、「毎日、夜寝る前に持病の薬を飲んでいる」という人は、

会社に予備のメガネやコンタクト、常備薬を置いておかないと、地震で電車が止まってしまったとき、数日間それらなしで過ごさねばなりません。

「生活に不可欠なものを家にだけ置いている」のは、会社に長い時間いる人にとっては大きなリスクなのです。


次に、家の中でどこに最も長い時間いるか、考えてみましょう。
するとおそらく大半の人は「ベッドの上」に最も長くいるはずです。

そうであれば、最も意味のある防災対策は、「ベッド周りから危ないものを除去する」ことです。

背の高い本箱や、固い枠にガラスの入った絵画フレーム、アイアン枠にガラスをはめ込んだ室内窓、落ちてきた時にケガをしかねないガラス製の照明器具・・・

こういうものを、寝ている時の「頭部近く」「頭部の上」に配置するのは絶対にNGです。


地震の最初の揺れがガツンときた時、これらが落下、転倒、割れることによって顔や目、首などに大ケガをして出血してしまったら、

停電で暗闇の中、次々と押し寄せる余震に怯えながら、パニックせず冷静に止血できる人などいません。

隣に寝ている子供の顔にガラス片が刺さって泣き叫んでいても、暗闇では状況さえ把握できないでしょう。

あたりまえですが、大地震のときには救急車は来ません。通報が殺到して消防署もパニックになるからです。

マンションは最初のガツンで停電すると、電気はもちろん水もでません。自分でケガの手当をするのも大変です。

したがって防災バッグなんて買う前に、まずは自分がもっとも長くいる場所、特に、寝ている際、頭部に近くなる場所を徹底的に安全にしておくのが大事です。


2.逃げ道を確保する

逃げ道を確保するため、地震が来たらすぐにドアを開けろと言われます。
ドア枠やドアが変形し、開かなくなって、逃げられなくなるのを防ぐためです。

同じ趣旨で、玄関を安全な場所にすることと、玄関まで安全に行けるようにすることも大事です。

なので私は、本物の鏡は玄関には置きません。

玄関で鏡が割れると、飛び散った破片が玄関においてある靴に入ってしまいます。

玄関に出しっぱなしにしてある靴は一番よく履く靴なのに、災害時、イザ逃げようという際にその靴が履けなくなるのってつらくないですか?

ガラス片を出して履けばいいじゃないかって?

停電中で暗闇の中で? 余震の続くなかで? 掃除機も動かないのに?

というわけで、我が家では玄関には下記のような「割れない鏡」を置いています。

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見た目も映りも完全な鏡だし、軽いし割れないので、もう何年も愛用しています。(ただし表面素材は柔らかいので、引っ掻くと傷がつきます)

あとは玄関まで安全に移動できるよう、ベッドの側にビニール袋に入れたスニーカーを置いてます。

夜、大半の人は裸足で寝てると思いますが、停電で真っ暗になり、倒れた本や家具が散乱する中、手探りで歩き、靴のある玄関まで“裸足で”辿り着くのはかなり大変です。

ベッドサイドに靴をおいておけば、食器が割れて飛び散った台所を通って玄関に逃げたり、避難用具を探す際、ベッド横からすぐに靴を履いて移動できます。

そのまま置いておくと、ベッド周りで割れたなにかの破片が入り込むので、「スニーカーをビニール袋にいれて」枕元に置いておくのがベストです。

私は古くなって履かなくなったスニーカーを巾着袋に入れ、ベッドの足にくくりつけてベッド下に押し込んでます。これで「揺れてスニーカーがどこかに飛んでいった」みたいなことお起こりません。


3.現金と通信手段の“備蓄”

備蓄については、いろんな防災グッズも売られてますが、最近はそれらに加え、「現金」の備蓄が必要だと感じます。

電気や通信網が寸断されると、ATMも止まるし、カードや電子マネーも(使用時に通信が必要なため)使えません。

実は災害が起こっても、周辺地ではタクシーが動いている場合もあるし、大人なら 20キロも歩けば、ホテルが空いている場所までたどり着けたりします。

今はカードや電子マネーが普及し、現金の「決済用」としての価値は落ちています。でも災害時用の「防災グッズ」としては、まだ現金には大きな意味があるのです。

なので、財布に1万円、自宅に 10万円ほどの現金を“備蓄”しておくのは、泥棒や火事のリスクを差し引いても、意味のある災害対策です。(だからと言って何百万も家におくのはお勧めしません)


もうひとつ、通信手段の備蓄も大事です。

通信手段というと、電源ばかりが注目されますが、実は災害が起こった時、「どの回線がつながりやすいか」は状況や地域によって大きく異なります。

最近は割引制度を利用して家族全員が同じ会社のケータイを使っている人も多いのですが、

家の中に、固定電話もあり、auを使ってる人、ソフトバンクを使ってる人、ドコモを使ってる人、さらにWiMaxパソコンと光フレッツ回線など、できる限り異なる回線が使われていることは、災害対策としてそれなりに有効です。

なお、災害時はスマホの電気を節約することがとても大事なので、ラジオや懐中電灯など長い時間使いたいものに関しては、電池式の専用機を(電池とともに)用意しておいたほうがいいと思います。

「なんでもスマホでできる」からといって「なんでもスマホ」を使っていたら、スマホの電池がすぐに切れてしまいます。


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4.備蓄したものを使ってみる

備蓄が必要なものについては別のエントリに書きましたが、そういった備蓄品に関しては「計画的に使う」ことも大事です。

備蓄品が消費期限切れとなって使えなくなってしまうのを防ぐためだけではありません。

使ってみると「これホントにいる?」とか、「もっとたくさんの量が必要だ」など、よくわかるからです。

なので、一年のうちのどこか 二日ほど、
・水道の水を一切使わず、備蓄の水だけで暮らしてみる、
・新たな買い物をせず、家にあるものだけを食べて二日ほどすごしてみる、
・1週間に必要なトイレットペーパーが何ロールなのか、きちんと記録を付けてみる、
というような防災訓練(実験)をしてみましょう。

備蓄品だけで暮らしてみれば、何が不要で何が必要かもよくわかります。

簡易トイレなども「買って終わり」の人が多いのですが、買ったら一回は使ってみるべきです。そうすれば、本当に不可欠なものなのか、不要なものなのか、一瞬にして理解できます。

今日は防災の日なんだから、家族全員、簡易トイレでうんちしてみたらどうでしょう? 

高かったのにもったいないって? 

使えるかどうかもわからない「高いモノ」を買っておくことの方がもったいないです。

備蓄のスタートラインは、「自分は何が必要なのか」を理解することなのですから。


あと、グッズとして備蓄しておいたほうがいいものについては、下記のエントリにまとめています。
こちらもどうぞ参考にしてみてくださいな。
→ 「超個人的 防災グッズ ランキング」



そんじゃーね。


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