依存症と中毒について

○○中毒、△△△依存症という言葉をよく聞きます。一番、伝統的(?)なのは、アルコール依存症、ニコチン中毒、麻薬や覚醒剤、睡眠薬中毒とかかな。便秘薬も依存性ありますよね。

もうひとつメジャー(?)なのがギャンブル分野。競輪、競馬、競艇などのギャンブル依存や、パチンコ中毒。


その他、最近よくとりざたされるのがネットサービスへの依存です。

ケータイ中毒から始まって、ネット中毒、スマホ中毒、ツイッター依存症、オンラインゲーム依存症など。

仕事中毒=ワーカホリックも伝統的かつ広く知られた中毒症状です。創業社長でもない単なる会社員なのに、「俺が休むと仕事が回らない」などと妄言し、休暇をほとんど取らず、帰宅後も頻繁にメールをチェック、みたいな人は明らかに仕事中毒です。


たまに有名人の事例が話題になる「買い物依存症」については、特に裕福でもない女性もかかってて、行き過ぎるとカード破産につながってます。

破産はしなくても、給与の大半をコスメや洋服やカバンにつぎ込んでる女性はたくさんいます。

彼女らは明らかに「買うこと」に依存してる。買った後のモノ(服やカバン)を身に着けて活用することより、遥かに「買う行為」の方が楽しく、“やめられない”のです。


これも芸能人が告白して話題になったかな → セックス依存症。男性でも「あなた、キャバクラ中毒でしょ!?」みたいな人がいます。二日に一度は行かないと気が済まない。

活字中毒、テレビ中毒という言葉も昔からよく聞きますね。ご飯も食べずに本に熱中してる人とかずうっとテレビの前に座ってる人。

あと、「甘いもの中毒」の人も多い。ひっきりなしにチョコやジャンクフードやアイスを食べてる。口寂しいって感じで、ずうっと。オフィスの引き出しとかにもおやつがいっぱいの人です。もちろん過食も「食べる」という行為への依存ですよね。


加えて(さっき指摘されたのですが)、「韓流中毒」もありますね。今まで人気だったハリウッド映画とか、寅さんなど日本映画、日本のドラマなどへの傾倒ぶりとは異なるレベルの中毒性が現れていると思います。

どういうドラマに中毒性が発生してるのかよくわからないのですが、アメリカの一部の連続ドラマに関しても、中毒になってる視聴者がいます。これにかかると、借りてきたシリーズ DVDを、20時間くらい見続けるといった状況に陥ります。

その他、AKBや特定のタイプのアニメへの中毒症状が出ている人もいるでしょう。この分野だけ、なぜか「オタク」という特別名称が付されてますが。


まだ他にもありそうだよね・・。 

なお、中毒と依存症には微妙に意味の違いがあるんですけど、今日はそこが論点じゃないんで触りません。


それと、「人への依存」という分野があるんですが、これはちょっと別扱いとします。

例としては、「息子(をかまうこと)に依存してる母親」ですね。これ、「俺がいないと仕事が回らないはず」と思う仕事中毒の人と同じワナにはまってます。(しかも最近はマザコンより、息子コンの母親のほうが多そう)

「暴力をふるう夫に依存してる耐える私」や「神の力をもつあの人に人生を託して恍惚としている自分」(宗教系)など、絶対的な支配力やカリスマ性をもつ人への依存もよく話題になります。“洗脳”という言葉も使われる分野です。

ペットへの依存も、擬人化されているという意味で、人への依存の一種でしょう。


★★★


さて、依存症&中毒について考えたことをまとめておくと、


1)○○中毒、△△△依存症に関する問題は、○○や△△△の部分ではなく、中毒になっていること、依存症になっていることにあります。

買い物もマンガも活字もセックスも、そしてもちろん仕事も、それ自体が“悪”なわけではありません。それに依存する精神状態や、それによって引き起こされる状況が問題なわけです。

何に依存するかという、「依存の対象」は人によって異なりますが、依存を生む精神状態や状況、中毒に陥っていくプロセスには、依存の対象に関わらず、多くの共通点があると思います。


この「依存のメカニズム」、「中毒に陥るプロセスやその影響」について、私は一度も教育を受けたことがありません。(私が学校に通ったのはもうずいぶん前なので、今の教育ではカバーされているのでしょうか?)

上記を全部を合わせると、多くの人が一生の間に一度くらいは、何かへの依存に陥るのではないでしょうか? 

そうであれば、そういう「人間のメンタルな弱さ」、「そこからの逃避行動と逃げ込む先」みたいなことについて、高校生くらいで一度、教えたらどうかなと思います。


2)○○中毒、△△△依存症という言葉を論じる際、自分の価値観を反映させ、選択的に(一部の依存対象物に関してのみ)「○○や△△△側に問題がある」という論調で報じるメディアがや人が存在します。

たとえば、買い物中毒については「支出をコントロールできないこと」を問題視するのに、「ネット中毒」については、「ネットの怖さ」を問題視する、みたいな態度ですね。

活字依存症やキャバクラ依存症については気にもしないけど、ゲーム依存症については「人格を破壊する」だの「頭が悪くなる」だのと、平気で“とんでも科学”に飛躍します。

何を問題だと考えているのか、論じる側、報道する側の価値観が見えて、非常に興味深いです。


3)とはいえ、中には「麻薬やニコチンは存在自体が悪だろう?」と言われる人もいるでしょう。

ここは議論のある点でしょうが、私としては「存在自体が悪」とまでは言えない気もします。

現在、薬については医師の処方が必要だし、たばこやアルコールやギャンブルについては年齢制限が導入されています。

つまり「使用方法を守れば問題はない」と認定されているわけです。中毒性のある薬でも、緩和ケアに絶大な効果があったり、アルコールが存在したおかげで仲間と分かり合えた、妻にプロポーズできた、みたいな人もいるでしょ。


一番、議論になるのは、ニコチンとギャンブルかな。やらない人にとっては、メリットなどまったく感じられないかもしれません。たしかに、「雇用と税収」という社会全体のメリットがなければ、正当化の議論は組み立てにくいようにも感じます。

でもこれらはどちらも日本では(日本でも)公的部門が絡んで提供してる分野なわけですから、「社会的な絶対悪だ」というコンセンサスがあるとは、現状ではとても言えません。


いずれにせよ、○○側、△△△側を社会から抹消できない以上、なにか特定のモノや行為に依存してしまうメカニズムの方に焦点を当てたほうが、よほど建設的だと思えます。




そんじゃーね


http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+personal/  http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+shop/