二つの全く異なる人生を生きられる(くらい、働く時間は長くなる)

『未来の働き方を考えよう』には、「人生は二回生きられる」という副題がついています。

ここでの「二回の人生」の意味は、「転職してふたつの異なる会社で働くこと」でも、「途中で職業を変え、ふたつの職業を経験すること」でもありません。もっと広い意味なんです。


これからは働く期間がどんどん長くなるのだから、私たちは、
・一生の間に、ふたつの異なるコンセプトの働き方を体験できるはず、もしくは、
・ふたつの異なるスタイルの働き方を選べるはず
ということ。つまり、転職回数自体は、ゼロでも 10回でもいいんです。


そして、本書のブログ書評大賞に選ばれた方のブログを読んでいると、「ふたつの働き方」「二回の人生」には、読まれる方の立場に応じてさらに多彩な意味があると感じます。


<大賞ブログその1>
「人生をシェアしあうこと」 Rosebush

「子育てで30代使っちゃったなぁ」と未練がましく不貞腐れていた私、と自称される女性からの書評↓

結局、人は自分の人生を一度きりしか生きられない。
・子どもを産む/産まない(或は、産めない)
・働き続ける/続けない(或は、働けない/続けられない)
・親の介護に時間を費やした/殆ど費やさ無かった


等々、一人一人の人生は全く違うシナリオで、たまたまある一時期だけ「親族」や「友人/同僚」として共に誰かと過ごす事はあっても、基本的に「巻き戻し」無しの一本道を一人で歩いている。


だからこそ「これまで歩いた道」をシェアし合いたいと渇望するのかもしれない。 本(物語)は「別の人生」を擬似的に体験出来る優れた「横糸」だ。

本当にその通りですよね。(そして、なんて素敵な表現なのでしょう)


上記は、私のひとつ前の本、『世界を歩いて考えよう』の感想(だと思うの)ですが、たしかにあれだけの旅行をしようと思えば、切り捨てなければならなかった人生があるし、反対に、他のものを選んだために、「世界を歩く」という選択肢を切り捨てたという人もたくさんいるでしょう。

本を読むと、そういう“自分が選ばなかった方の人生”を想像体験できると。確かにそうですね。


そして「人生は二回、生きられる」の意味は、そういった「 Aを選んだから Bは一切なし」、「 Bを選んだから Aは私には無関係」ではなく、「最初に Aを選び、ずっとそれでやってきたけど、次は Bを実現できないか?」と考えてみてもいいじゃない!? という呼びかけなんです。


それは、簡単なことではないでしょうが、「そんなことは考えるのも無駄」なことでもありません。人生は、そして働く期間は、私たちの想像を超えて長くなりつつあるからです。

しかも、いろんな働き方を可能にする技術やインフラが次々と登場し、普及し始めています。

最終章に書いたように、「自分はどんな生活をしたいと思っているんだろ?」と真摯に考え、それにいたるシナリオを複数、想像してみて、さらに「市場で稼ぐ力」を付けていく。

そうしたら、「ありえなかったはずの、もうひとつの人生」も手に入るんです。



<大賞ブログその2>

ふたつめの書評大賞は、就活を終えたばかりの大学院生の方が書いてくださいました。
14年卒の就活を終えた大学生が選んだ未来の働き方 れぽわーるず.comより


以下、引用↓

23年くらい生きてきて臨んだ就職活動ではありませんが、自分の将来について考えれば考えるほどよくわからなくなってしまうのが本音でした。大学は工学系、しかし、エンジニアとしての道に違和感を感じつつ、手探り状態で始めた就職活動だったのです。


そんな僕に対して、「将来やりたいこと」を聞かれても、ハッキリとはイメージ出来ませんでした。できれば、「働きながら考えたい」と思っていたのです。実際にビジネスの現場に立って、そこから得られた経験から将来を想像する、そんな働き方を理想としていました。
(原文ママ)


これも「ほんと、その通りだよね」と思いました。

20代前半、まだ働いたこともない学生に、「このタイミングで、一生やるべき仕事(勤めるべき組織)を選べ」というのは、(よく考えれば誰にも分ると思うけど)あまりに無茶でしょう。

「働きながら考えたい」のは当然です。それの何が悪い?


『未来の働き方を考えよう』では、目安として 40代でのオリジナル人生の設計を勧めていますが、これは、
・ 20代から 10年程度は、とりあえず働きながらアレコレ体験し、
・ 30代を通して、自分のやりたいことを見極め、複数の将来シナリオを作っていろんな選択肢を考えながら、
・ 40代になったら、自分オリジナルの働き方に移行しようよ
という話です。


「 40代の再出発」と言うと、「そんな年齢から再出発なんて遅すぎて不可能では?」と感じる人もいるようですが、今の学生さんなんて確実に 70歳までは働くわけで、それって 40才からでも 30年あるんですよ。

遅すぎなんてことはあり得ないし、世の中のコト、自分のことがよくわかってきて、しかも一定のスキルや経験がついてきたそういう時期こそ、「オリジナルの働き方に移行するベストタイミング」なんです。

寧ろ反対に、40歳の段階で「あと 30年、何も考えず今のままの道を進めば楽しい人生である」みたいな人って少数派じゃない? もっと他にもやりたいこと、試してみたいことがあるでしょう?


いずれにせよ、「人生は一回勝負」で、「 20代前半の学生の時に、正しい道をひとつ選ぶべし そして一生その道を行くべし」という意味不明な思い込みは捨てたほうがいい。もう一回あるんだから、最初は「働きながら、考える」でいいんです。

このブログは、「それが自然なことでしょ?」という気持ちを、すごく素直に綴ってくださったと思います。



<大賞ブログその3>

3つ目の大賞ブログは、「キャリアを 40代で捨ててリセットするのはリスキー?」「馬場秀和ブログ」です。

下記、引用↓

 こう、何となく「今は不景気だから仕方ない。いずれ景気が上向けば雇用環境も改善される」だとか、「とりあえず定年までは我慢。その後にゆっくり人生を楽しもう」だとか、自分でも薄々「嘘くさい」と感じている考えに身を任して、とりあえず今日を生きている私たち。そんな私たちの「思考停止」を、ちきりんさんは容赦なく突いてきます。


それまでに築いてきたキャリアを40代で捨てて、職や働き方をリセットする。そんなリスキーなことに挑戦するなんてボクには無理です、という読者を想定して、どうしてそれが最も危険が少ない、幸せな人生への近道であるのかを説得してゆきます。


貯金(ストック)より収入を得る状況(フロー)の方が重要、それまでの会社にしがみつくと「市場で稼ぐ能力のない人」になる危険が高まる、人生の有限性を真剣に考えよう、そもそも自分が心からやりたいことが何なのか考えたことがない人生ってどうなの。


私の本からの引用と、それをご自身の言葉でまとめていただいた上記のような部分がテンポよく、ざっと読むだけで、『未来の働き方を考えよう』で伝えたいことの肝がきれいに伝わります。


最後にこう書いていただけたのも、ありがたかったです。

 「若者は就活なんでやめて起業せよ」とか「これからは会社に縛られないノマドな働き方がトレンド」とかいった、けっこう無責任に感じられるビジネス書と違って、「 40代になって色々と判ってから働き方を見直そう」というのは、地味ながら、現実的で、説得力のある力強い提言だと思います。自分の人生を主体的に生きたいと思うすべての人、特に 20代および 40代の方にお勧めします。


私のメッセージを、「転職しろ」とか「起業しろ」であると誤解している人がタマにいますが、そんなことを言ってるつもりは全くありません。

私が一貫して言ってきたのは、「考えよう」ってことなんです。

「もう、この仕事を続けるしかないのだから、他の働き方なんて考えるのは時間の無駄」とか、「会社を辞めたら食べていけないのだから、そんなことは考えないようにしてる」とか、「なんの取り柄も資格もないから、他の道なんて(考えても)見つかるわけがない」とか、


それって完全な思考停止じゃん!?

とりあえず考えてみようよと。


私がこの本に書いたのは、「未来の働き方を考えるベースだけはまとめておいたから、あとはみんなそれぞれ考えてね!」、「その時、考えるプロセスはこんな感じでどうでしょう?」という、考えるための土台であり、提案に過ぎません。

未来の働き方を考えよう 人生は二回、生きられる

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それぞれの道を選んだ方の、そして、それぞれの年代の方の、いろんな形の「2回目の働き方」、「ふたつの人生スタイル」がありえるはず。

みんなで一緒に考えましょう!


ブログ書評大賞の発表サイトでは、上記で紹介した3名の方に加え、5名の方の次点ブログが紹介されています。どれも“じんわり”響きます。ぜひご覧ください。

また、未来の働き方に関してツイッターで話し合う、Social book reading with Chikirin を 9月14日(土)の午後に開催です。


そんじゃーね!