福島の原発事故処理に世界の知恵を

原発に関して、“推進”か“脱 and/or 反”かという議論がよく行われていますが、これに関して私は強い意見を持っていません。(だからあまり発言していません)

推進も“脱 and/or 反”も、どちらかが正解でどちらかが間違いというわけではないでしょう。どちらを選ぶかで、今後の日本の姿(産業環境や外交政策や予算問題など)は変わると思うけど、どっちを選ぶかは国民の選択です。


そうであれば、粛々と民主的な手段で決めればいいわけで、特に立地自治体(近隣含む)の首長&議員選挙は、そのカギになるはずです。

福島のあれだけの惨状を見ても、我が地域の原発を稼働させたいという知事や市村長をその地の住民が選ぶなら、東京に住む私がそれに反対する理由は何もありません。現在、福井県の大飯原発が稼働しているのは、福井県知事の積極姿勢があるからです。

一方で、近隣住民の人たちが稼働を許さないという意思を選挙において明確に示せば、今の状況で、国や電力会社が、知事や市・村長の意向を無視して原発を推進することは不可能だと思います。



それよりも私が「早急にやり方を変えたほうがいいのでは?」と思っているのは、現在進行形で福島第一原発で起こっている、様々な問題の解決方法です。

チェルノブイリと福島は被害が大きいのでよく取り上げられますが、原発事故は他でもたくさん起こっています。東海村JCOの臨界事故やもんじゅのトラブルあれこれを含め、日本でも世界でも定期的にどこかの原発でトラブルが起こってるんです。(参考:List of civillian nuclear accidents


事故の原因は地震など自然災害であったり、人為的なミスや設計上の問題、機械のトラブルや老朽化など様々ですが、ひとつ言えることは、「原発事故はこれからも世界のあちこちで起こり続ける」ということです。

地震大国の日本ではもちろん、これから原発が急増する新興国では(その数の増加に合わせ)今までより頻繁に事故が発生すると考えるべきでしょう。


これを見てみてくださいな → 世界の原発建設予定 中国は今 14基の原発を 70基にする予定なんですよ。

てか、人口が1億人の日本に50基の原発があるんだから、中国の原発が最終的に何基になるのかは、ちょっと想像もできません。。。


世界中で増え続ける原発では、これからも定期的に事故が起こるでしょう。軽微なものもあれば、深刻なものもあるはずです。それはもう避けられないし、たとえ日本だけが脱原発を成し遂げても、「だから安心で無関係」というわけではないのです。


これからの世界は、
・廃炉
・原発事故処理
・使用済み核燃料の安全な保存方法
などについて高い技術と経験値を、早急に蓄積していく必要があります。


中国やインドなどこれから経済発展期を迎える国々は、安全かつ低コストの原発を建設して運営する技術には関心を持っても、上記のような技術に投資をしようとはなかなか思わないでしょう。

実際に大きな事故を起こし、現在進行形でその処理に当たっている日本こそ、そういった技術開発の中心となるべきなんです。

しかしながら、それは「日本だけで問題を解決する」ということではありません。そうではなく、「日本がハブとなって、そういった問題を解決するプラットフォームを創っていく」ことが必要です。


汚染水流出問題などが、選挙が終わるのを待っていたかのように次々と明らかになりましたが、この問題の解決を東電だけに任せているなんて本当に無責任なことです。

国が全面協力するのは当然として、私としては更に広げ、「この問題は、世界で解決するという方針に転換すべきでは?」と考えます。

先日、オープン・イノベーションやオープン・プロブレムソルビングの動きについて書きました。
→ 「世界の知をクラウドで集め始めたグローバル企業


今の福島の問題解決にこそ、こういったアプローチが有効なのでは? この問題を解決するには、原発には直接には関係ないような多彩な分野の技術(ざっと考えただけでも、より効果的で動きやすい防護服の開発からワーカーの健康管理方法、遠隔操作技術から浄化装置にタンクの製造技術など様々な技術)が必要なはずです。

それらすべての分野について、必ずしも日本が一番進んでいるわけでもないでしょう。しかもこれから日本では、原発関連分野において優秀な研究者や開発者を確保することが今までより難しくなります。(志望者も減るだろうし、過去のような潤沢な研究予算がつきません)

でも世界全体で見れば、原発は将来有望な期待の分野であり、次々と新しい頭脳がその分野に流入してきます。

日本国内だけで考えても、現在、東電や経済産業省と取引をしている企業以外にも、役立つノウハウや技術を持っている零細企業や個人の技術者もたくさんいるはずです。


NASAがやっているように、福島の原発事故に関わる様々な問題を解決するためのサイトを立ち上げ、現在、直面している問題をすべて開示し、解決方法のヒントを世界中の研究者や技術者から募集する。

そんなオープン・イノベーション&オープン・プロブレムソルビングのテスト運用を始めてみるべきでは?


日本には「自分の起こした問題は自分たちで解決すべき」という考えがあります。それが責任ある態度だと思ってます。でも、今は本当に「日本だけで解決しよう!」とするべき時でしょうか? この問題は、そういう範囲の問題でしょうか?

そうではなく、「福島を助ける知恵と技術を、世界中から募集します!」と呼びかけるべきでは? そう呼びかけることのデメリットは、いったい何があるんでしょう??

一流の技術力を誇る国がそんなことをするのは恥ずかしい? 原発輸出に悪影響が出る? だから助けを求めないの? それが本当に正しいやり方?


日本は地震大国です。応急措置に追われる福島第一原発を含むエリアが再度、大きな地震に襲われる可能性だってゼロではありません。今そんなことが起こったらいったいどうなるのか、想像するのも恐ろしいです。(参考:最悪の事態は福島ではなく

福島で必要とされている技術は、いつか世界が必要とするものばかりなんです。この問題を、世界で解決しようという姿勢は、きっと大きな支持を受けるはず。


そんじゃーね