高齢化時代の災害避難の在り方

大型台風 26号で、伊豆大島に大きな被害が出ました。

記録的な大雨で大規模な土石流が発生。ふたつの集落( 300棟もの家屋!?)が飲み込まれ、死者が 20人を超え、行方不明も 20人以上。

さらに問題になっているのが、大島町に避難勧告や避難指示が出ていなかったということ。


なんだけど、最近あたしはこの「避難勧告」や「避難指示」について、すごい疑問に思ってる。

というのも、たとえ適切な時期に警報が出されたとしても、そのタイミングでは既にかなりの暴風、暴雨が始まってる。

しかも住んでるのも高齢者ばっかりだったりすると、高齢者が単身で、もしくは高齢者だけで避難するなんて、現実的なんだろうか?


高齢者の中には、普段から歩くのに杖や歩行補助具が必要な人も多いし、台風でもなんでもない晴天の日にコロんで骨折する・・みたいな人もたくさんいる。

てか、避難する方がいいとさえ言い切れない。

川が氾濫しそうな時もよく避難勧告が出てるけど、家が床上浸水したって死なないでしょ。

だけど、お年寄りが外に出て、風に煽られ、滑って転んで後頭部を打ったら死んじゃうんだよ。どっちが危ないか、よーく考えようって感じです。


気象庁は最近、「これまでに経験のないような大雨」とか「ただちに命を守る行動を」と、相当に言葉に工夫して、人命を守ろうとしてる。それは評価できる。

なんだけど、高齢化が進むこれからは、自治体の防災担当者側も今までにない発想が必要なんじゃないかと思った。


たとえば、

台風が来るとわかった時点(たいてい二日前くらいから天気図でわかってるじゃん)で、マイクロバスを出し、危ない地域に住んでる高齢者は全員、公民館に移してしまう。(自分たちで避難できる若い人は除く)

もしくは、すぐ裏手が山になってる高齢者の家には、頑丈な鉄製の箱(前面だけ格子みたいな箱)を押入れの下段にセットしておく。

で、普段は押入れとして使い、大雨の日にはその中に入っててもらうとか → たとえばこういう商品を配るとか。

この中で寝てれば、家が土砂に押しつぶされても二階が落ちてきてもケガはしないし、土砂の下でも呼吸できる空間で救助を待てる。


他にもこういうのとか→ 「家の中に作るシェルター部屋

山沿いに済む高齢者の家なんて、一部屋をコレに改造して、大雨が降り始めたらその部屋にいる、という避難方法の方が現実的では? 


いや、具体的な方法は専門家が考えればいいんだけど、これから益々高齢化が進む日本において、「みんなで公民館に避難する」ってのがベストな方法とも思えないんだよね。

自分のこととして考えてみても、足腰が弱ってきて、杖なしでは歩けなくなってる段階で、「記録的大雨です。避難指示がでました」って言われて、杖ついてカッパ来て、避難所に行こうと思う??

自分は元気でも、家族に寝たきりや車いすの人がいたら、そんなタイミングで避難なんてできないでしょ。


だから、「避難指示を出す」に代わる、なんらかもうちょっと実質的な命の守り方を、山間いの村を抱える自治体は、智恵を集めて考えたほうがいい。

たしかに今回は、大島町の対応にも問題があったのかもしれない。台風が来ることは前日からわかってたのに、町長も副町長も出張してたって何なの? そんな大事な用事があるの? とかね。

説明責任が必要な部分は確かにあるでしょう。

とはいえ、このままマスコミが「大島町は早めに避難指示を出さなかった!」と非難を続け、今後あちこちの自治体が数時間ほど早めに指示を出すようになったとしても、それが問題の解決につながるとは正直あまり思えない。

そんな不毛なプレッシャーをかけるより、もっと現実に即した、それこそ「命を守るための解決策」を、みんなで考えるべきだと思います。



そんじゃーね


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