高速道路と大渋滞

今日のタイトルは、2004年(すでに10年近く前)に梅田望夫さんが羽生善治三冠から聞いた話として紹介された概念で、簡単にいえば、

・インターネット学習が登場したため、初心者でもすぐに巧くなれる(ある地点までは、高速道路を走ってすぐに着ける)
+
・多くの人がすぐ巧くなれるため、上級者間での競争はさらに激化しており、「ある程度、できます」というレベルから一歩抜け出すのはめちゃ大変になりつつある(高速道路の先は大渋滞してる)

という話ですね。

元記事→ 「インターネットの普及がもたらした学習の高速道路と大渋滞


上記は将棋の話でしたが、ポーカープロの方も全く同じことを力説されていました。いわく

若い人は、これまでの人より圧倒的に強くなっている。

理由はオンラインでポーカーの練習、対戦ができるようになったから。

オンライン対戦のほうが、カジノでのライブなゲームより圧倒的に効率良く学べる。なぜなら、


・カードを配ったりチップを動かす時間が不要なため、同じ練習時間で 3倍近いゲーム経験(=学び)が得られる

・カジノまで行くためのコスト(時間&費用)が不要


・カジノの無い国の人も豊富な対戦経験が得られる
・カジノに出入りできない年齢から練習が始められる


・ポーカーは 10回に 7回は降りるゲームなので、ライブゲームだと待ち時間が多い。だから食事をしながらゲームをしたりする。

でも、オンラインなら複数ゲームを並行してプレイできる。

時には 9面並行でプレイすることもあり、最初に書いたのと合わせると、3倍×9倍=27倍 も学びの生産性が高くなる。


・メジャートーナメント以外で、世界の主要プレイヤーが一か所のカジノに集まることはないけど、オンラインなら常に世界トップと腕を競える


・プレイデータをダウンロードして分析できるので、勝率分析や癖の補正、分析→仮説立案→実証といった研究が可能になり、学びのスピードが上がった


「ほへー」と思っていたら、プロ格闘ゲーマーの梅原大吾さんまでも、「ゲーセンは自分を育ててくれた場所だし、大好きな場所だけど、最近は格闘ゲームでさえ家からオンライン対戦することによって学べることも増えてきた」とか言い出してる。


これってつまり、「オフラインの学習環境」と「オンラインの学習環境」の競争力、というか、位置づけが、これからは大きく変わるってことよね。


今後は、
・オフラインだけの学習では、もはやトップレベルにはなれない
のだろうし、

・極端な例として、“オフラインだけで勉強する人”と“オンラインだけで勉強する人”がいたなら、
後者(オンラインだけで勉強する人)のほうが、早く高い位置まで行ける時代になりつつある、
ってことなんでしょう。


中には「将棋とポーカーと格闘ゲームの話なんて、オレ&あたしには関係ない」って思える人もいるのかもしれませんが、

あたしにはどう考えても、これからは同じことが、一般的な勉強(学校教育)においても、技術修得においても、それ以外のいかなる職業訓練においても、起こり始めるだろうと思えてしまう。

普通の勉強だって、わざわざ学校に行ってレベルの違う生徒が何十人も同じ場所に集められてひとりの先生の話を聞くとかより、

自分のレベルにあった内容をオンラインで学び、自分のレベルにあった仲間とネットを通じて議論をして学ぶ、みたいなほうが、よほど学びの生産性が高いのでは?


日本みたいに学校という“オフラインの学習場所”が整っている国に生まれ、お金とお受験の時間をかけて“オフラインのいい学校”で勉強しても、“オフラインだけで勉強”しているような子供は、

学校に通うこともできない環境に生まれ育ったけれども、“オンラインでがんがん勉強し始めた人”に勝てなくなる。

そういう時代になるってことじゃない?


そしてさらに大事なことは、「渋滞から抜け出す方法」が必要になること。

オンライン学習によって高レベルのライバルが世界中から集まるようになるため、先進国で教育を受けた人だけがライバルだった今までとは競争倍率が違ってくる。

今までよりずっと熾烈な競争になるよね。


その上、その大渋滞から抜けだすための方法についてはオフラインの学校であれオンラインの教育サイトであれ「教えてもらう」ことでは学べず、自分オリジナルで考える人にしか見つけられない。


これからの子供たちは、親の世代に比べ、
・オンライン学習により、今までより短時間かつ低コストで、はるかにレベルの高いことを学び、
・その上で、よりオリジナリティやユニークさが問われる世界で生き残っていかなくちゃならない。


つまり彼らには、
1)高速道路を使う能力
2)渋滞を抜け出す能力
のふたつの力が必要になるってことなんだけど、


それは、具体的に言えば、
1)オンラインの学習機会を使いこなすための英語とITリテラシーをもって、「日本の物理的な学習場所」ではなく「世界中の人が学んでいるオンラインサイト」で学ぶという姿勢と積極性であり、かつ、

2)“覚える”とか“学ぶ”ではなく、他者との違いを自分で創造できる力
なんだよね。


さらに別の言葉でいえば、

1)オフラインの中で質のいい場所(例:いい学校)にこだわるなんて超ナンセンスな時代になりつつあり、(孟母三遷とかいうけど、ラスベガスに引っ越さなくても世界トップのポーカープロになれますよってのと同じ)

2)勉強でトップクラスになるなんて意味が無く、「いかに他者と大きく違うか」「自分のアタマでオリジナルに考えられるか」が大事になると。


そういうこと?


って考えると、いまんとこまだ、完全に時代に逆行したスタイルで子育てしてる親とか、たくさんいそうでごじゃる。



そんじゃーね

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