それでも僕は、伝えたい

新刊 『ゼロ』 が絶好調 ( 30万部!)の堀江貴文さんと対談をさせていただきました。堀江さんとお会いするのはこれが初めてです。


(写真:平岩紗希)


私は 3年前、初著である『ゆるく考えよう』に、堀江さんの推薦文を頂いています。当時の“ちきりん”は書店では無名の存在でした。

今も覚えているのですが、発売日に某大型書店のスタッフの方が「今日入った“きちりん”とかいう人の本がよく売れてるんだけど、これは誰?」と呟かれ、他の方から「その人、たぶん“ちきりん”だと思います」と応答されるくらい「誰それ?」状態だったんです。

だから堀江さんには本当に感謝していたのですが、ずっと直接お礼が言えていなかったので、今回ようやくその機会が得られてほっとしました。


こちらが堀江さんの新刊 『ゼロ』 ↓

ゼロ―――なにもない自分に小さなイチを足していく
堀江 貴文
ダイヤモンド社
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これを読んで私が感じたのは、「ひえー、堀江さん、ここまで歩みよるんだー!」という新鮮な驚きでした。


★★★

本書では、九州の小さな町で生まれ育った時の家庭環境から、東京に出てきても女の子と気の利いた会話のひとつもできなかった大学時代、そして、逮捕や拘留という過酷な状況下でどれほど寂しくつらい思いをしたかという、これまでの半生が素直に語られています。


・・・なんで、堀江さんは今さら(そしてわざわざ)こんなことを語ろうとするのか?


それは、
・自分だって、生まれた時から恵まれた条件の中で育ってきたわけではない。
・パソコンだって、親から買ってもらったわけではなく、自分で早朝から新聞配達をして苦労して手に入れたのだ。
・もともと寂しがりやで、一人で号泣したり、不安で眠れなくなる夜もたくさんあった。


みたいな、「苦労と努力と弱さと恵まれなさを見せなければ、伝わらないコトがある」と思われたからですよね。てか、より正確にいえば、そういうモノを見せなければ伝わらない人、最初にそういう話をしないと聞く耳を持たない人、が世の中にはいるんです。



(写真:平岩紗希)


普通の人は、誰かスゴイことをやってる人を見た時、
「この人は、自分より圧倒的に恵まれた条件に生まれたから、こんなスゴイことができるのだ」とか、
「この人はなんの苦労もせずして、こんな結果を手に入れていてズルい」とか、
「この人はずっと幸せな家庭に生まれ育ち、今まで、なんの悩みも問題もなかったに違いない」
などとは、考えません。


誰だってすべてに恵まれたりしてるわけがないし、それなりの結果を出している人で苦労や努力をしてない人なんていないんです。そんなことは本人がわざわざ言わなくても、わかります。


ところが・・・、そういうことを言わないとわからない人もいるんです。彼らは何を聞いても、
「アイツは強者だから、ああいうことが言えるのだ」
「あいつはもともと恵まれているから、そんなことができたのだ」
「なんの苦労もしてないのに偉そうに!」
と考えてしまう。そして、その人からのメッセージを受け止めようとしない。まったく聞こうとしないんです。


こういう人に会った時、あたしならどうするか?


「そんじゃーね!」で終わりです。

だって、しゃーないやん。そんなことまで説明しないとわからない人とか、面倒すぎる。


ところが堀江さんは違いました。「今までは伝える努力をしていなかったから伝わらなかった。一度、必死で伝える努力をしてみたい。それをせずして、伝わらないって諦めたくはない」と考えたんです。

だから今回の本では、自分の生い立ちや境遇を振り返りながら(おそらく元々の自分の趣味ではない)“恵まれなさや、弱さや大変さ”を敢えて前面に出してきてる。



(写真:平岩紗希)


『ゼロ』を読んで、「ここまでして伝えたいんだ」って、ちょっと感動しました。フェースブックにまとめられてる 今回のプロモーション活動の様子を見てもわかるけど、尋常じゃない走り回り方なんだよね。

この一生懸命さがあるから、いろんな人が集まるし、ついてくるんでしょう。ここまで努力できるってホントにスゴイ。



な・の・に・


先日来、話題になっている朝日新聞の編集委員 鈴木繁氏が書いた『ゼロ』についての感想がコレ。。

若者に新聞を読んでもらうことはもはや諦めざるを得ず、とにもかくにも高齢者が喜ぶ記事を書かねばならない、という今の新聞が置かれている立場はわかります。

わかるけど、ねえ・・。これが、2013年という時点において、朝日新聞の編集委員の書く文章なのだということを、みんなよーく覚えておこうね。


あたしだったら、「ほらね。言ってもわからない人はいるんですよ。面倒だから、そんな人に伝える努力なんてしたくない。関わりたくないでござる」って思っちゃう。


でも、堀江さんは違うんです。

彼は、「それでも僕は伝える努力をしたい」と思ってる。「伝わらない人たちにも、なんとか伝えたい」って。


堀江さんに限るわけではありませんが、私は、そういう人をこそ応援したい。人を皮肉って後ろから笑ってる人じゃなくて、一番前に立って、リスクをとって頑張る人。自分をさらけだして、100%の力でぶつかっていく人をね。

残念ながら私自身にはここまでの努力はできないけれど、それでも、自分にできないことをやってる人を、応援したり尊敬することはできる。

必死で頑張っている人を、貶めたり嗤ったり、足を引っ張ったりするようなコトだけはしたくない。



そんじゃーね。


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