第4話 「買うと決める」と「買う」の分離

<これまでのあらすじ>
第1話 ウォールストリートから八日市へ
第2話 価値を伝える
第3話 「市場の選択」という幸運


ラブリーの北川社長から「アマゾンでは接客するのが難しい」と聞いた時、「!」って思いました。

確かにアマゾンの画面は「買う」という目的に最適化されているため、「どんな商品なのか理解する」とか、「買うべきかどうか検討する」ために必要な情報量は多くありません。


実はラブリーが運営するパジャマ工房では、規格外に大きなパジャマも 1500円から 2000円の追加料金でオーダーメイドできます。

すごく背が高い人なら、幅は通常サイズで丈だけ長くしてもらえるし、おなかがどーんと出ているお父さんでもキレイに着られるパジャマが手に入る。

→ パジャマのオーダーメードについて


一度オーダーするとサイズを保存しておいてくれるので、次回からは「胴囲だけ前回プラス 3センチで」といった調整オーダーも可能。もちろんネットでも申し込めるし、特殊な依頼については電話でも相談できます。

その他、「こっちの生地で、あっちのデザインのパジャマを」とか「上着は一つ、ズボンは 2本という組み合わせ」で買うこともできる。
 


ところがアマゾンでは、そんな複雑な売り方はできません。彼らは購入履歴など情報を独占したいためか、顧客と売り主(店舗)が直接につながること自体を、歓迎してないっぽい。


とはいえアマゾンサイトの高い利便性を愛するユーザーの中には、「楽天の店ってゴチャゴチャすぎて見る気もしない」という人もいます。


これって、なんかもったいなくないですか? ポテンシャルな顧客を取り逃がしてるというか・・・



北川社長から「アマゾンでは接客が難しくて」という言葉を聞いたとき、私の頭に浮かんだのは、コジマ、ヤマダ電器、ビッグカメラなどの家電量販店の置かれた立場でした。

ああいう店で売られてる大型テレビや高級掃除機だって、ほんとは“丁寧な商品説明や情報”、すなわち「接客」無しに売れる商品ではないんです。


でもアマゾン始め、ネットで家電を買う人は(まだマジョリティではないけど)どんどん増えています。

なぜなら、彼らは接客によって手に入れるべき「情報」をリアル店舗で手に入れ、その後、ネットで「購買」するから。いわゆる「実店舗のショールーム化」ってやつです。


ここでは、
・接客されたり情報を得る場所 と、
・購入する場所 の分離が起こっています。
コ難しく言えば、「価値供給プロセスのアンバンドリング」もしくは「ショッピング機能のアンバンドリング」かな。


で、これと同じことが、ウェブサイト同士でも起こる可能性があるのかも? と思ったんです。


たとえば私はよく本をブログで紹介します。それを読んで「この本を買おう!」と思った人は、アマゾンや楽天ブックス、もしくは電子書籍のサイトなど、お気に入りの販売サイトに移動して本を買います。

この時、本の販売サイトにもレビューや本の内容説明は載っているけれど「そんなの読まずに買う」人もたくさんいるはずです。


なぜなら先にちきりんブログを読んで、「この本をぜひ読みたい!」と思った時点で、購買についての意思決定は完了しており、あとは「購買」するだけだから。

これって、「情報を得る場所と購買場所の分離」ですよね? 



こちらは、私がラブリーのオーガニックコットンのパジャマを勧めてるエントリなんですが、→ 「ちきりんセレクト:極上オーガニックパジャマのご紹介


「ショッピングサイトはアマゾンしか使わない」という人の中には、

「ちきりんのブログで情報収集」→「アマゾンで購入」

って人も、いるんじゃないでしょうか?


こんな高いパジャマ、アマゾンに載ってる情報だけでは買う気になれない。楽天のショップページのように、詳細な情報がないと価格に見合う価値があるとは納得できない。

でも「楽天のページはどうも自分には合わない。読む気がしない」って人でも、「ちきりんブログで情報を得てアマゾンで買う」という選択肢があれば、「情報収集」と「購買」を別々のサイトで行うことが可能になる。



(予定表には“ちきりん訪問”の文字が!)


もちろん、「情報提供」と「接客」は違うので、接客と言えるレベルの顧客との関わりをもとうと思えば、さらに一工夫が必要になります。でもやりようによっては、それさえ不可能じゃないかも。

a) 購入検討に必要な情報は、(自分が信頼している)ちきりんブログで得る
b) 購入は、一番便利なアマゾンで買う
c) 接客が必要な部分は、品番と注文番号を通して、直接ラブリーと連絡する

といった「ショッピング機能のアンバンドリング」がネットの上でも起こること( or 今後進むこと)は、決して不思議なことではありません。てか、そういうニーズは確実にあると思う。


そして、上記の例では a) は私のブログですが、それと同じ機能をもつサイトを売り手の店舗自身が用意することだって可能なんです。

必要な情報を体系的に全部載せたサイトを作り、購入はアマゾンサイトに任せてしまう、みたいなサイトね。こうなると、ショップ主導による「ショッピング機能のアンバンドリング化の推進」って話になる。


そして、上記の a) b) c) が起こった時に“中抜き”されるのは、楽天市場のような、無料での接客や情報提供をウリにして客を集め、続けて「購買」もしてもらい、そこから利益を得てるサイト(=これまでの家電量販店)ってことになるんです。


いえ、ホントにそんなことが起こるのかよくわかりませんけど、いろいろ考えてると、ネット販売ってこれからもホント面白いなと思えた次第です。


そんじゃーね!

<関連過去エントリ>
→ 考)“販売以外”の店舗価値

<関連サイト>

→ 初コラボ 真夏用レディース ちきりんパジャマが新発売!

→ 真夏用メンズ ガーゼパジャマも開発!

→ 真冬用 信じられない肌触りのオーガニックコットンパジャマ


http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+personal/  http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+shop/