GDPは100兆円くらい下げたほうがいいのでは? 

過去10年以上、500兆円付近で停滞してる日本の国内総生産 = GDP を、今から 100兆円増やして 600兆円にしようというのが安倍総理の目標のひとつらしいけど、

あたし的には、むしろ日本は GDPを 100兆円くらい減少させたら、すごくいい国になると思ってるんだよね。


たとえば、美容室でヘアカットして1回 5000円を払っていた人が 1000円カットに行き始めると、1回につき 4000円、2ヶ月に一度として年間で 2万 4000円分、GDPが下がります。

人口の 4割、5000万人が年に 2万 4000円、美容院に使うお金を減らすと、GDPは 1兆円以上減ることになるわけですが、これって別に悪いことじゃないよね?

★★★

政府はスマホ代が高すぎるから、通話も通信もごくたまにしかしない人向けに格安プランを出すよう通信キャリアに求めてるけど、これも、月に 1万円払っていた人が月 5000円になると年間 6万円の支出減。

5000万人が格安スマホに転換すると、3兆円の GDPの減少につながります。


年賀状は今でも 50億枚も売れてるらしいけど、こんな慣習がなくなって、半分の人が出さなくなると、52円掛ける 25億枚で 1300億円の GDP 減。お歳暮やお中元も同じ。

てか反対に GDP を何がなんでも増やしたいなら(=安倍さんが言うように 600兆円にしたいなら!)、国民みんなに年賀状やお歳暮をおくることを奨励すればいいんだけど、ほんとにみんな、そんな方向がいいと思ってるの?

★★★

新刊の単行本って 1500円くらいするけど、それを電子本のセールや中古で買う人が増えて、平均単価 600円くらいになれば、年間発売冊数の 6億冊 × 900円で、5400億円分 GDPは減少するし、

不動産に関しても、新築好きの日本では毎年 100万戸くらいの新築不動産が販売されているのにたいして、中古住宅の取引量は 20万戸にも達しない。

これが 欧米みたいに中古住宅の取引数の方が多い 状態まで増え、不動産の平均購入価格が 2割ほど安くなるだけで 5兆円以上、GDP は減ります。


英会話学習もスカイプ英会話に変わると、月 2万円の月謝が 5000円になる。年間 1.5万円の節約を 1000万人分として 1500億円の GDP 減。

100均ショップの登場で、今まで 300円だったものが全部 3分の1 の値段になったんだから、それらの GDP 押し下げ効果も大きそう。

他にも、LCCや(新幹線ではなく)高速バスで旅行する人が増えたり、車を買わずにレンタカーやシェアカーを使うとか、

大学に行く代わりに、海外の一流大学の無料講座(動画やネット配信)と大学検定で教育を受けるという人がでてきたら?

家だってシェアハウスなら一人で家賃を払うより何割かは安くて済むでしょ。この分も GDP の低下につながります。


今でも大学って、合格後すぐに入学金を払えと言ってきて、そのあと第一志望の大学に合格・進学することになっても、払った入学金を返してくれないんだけど、ああいうのも禁止したらその分 GDP が減るし、

他の店で買ったドレスを持ち込むと「持ち込み料」とかいう意味不明な理由で多額の手数料をとる結婚式場とかが淘汰されたら、持ち込み料分の GDP も下がる。

ちょっとでもいい漢字(そもそも“いい漢字”って何?って感じですが)を含む戒名を付けてもらうため、何十万円もお寺さんに包むとか、これからの若い人が続けるとは思えないけど、それで GDP が下がっても、なんか問題ある?


GDP が下がるっていうと、

・節約モードで消費が停滞した状態、とか、
・価値あるモノが売れず、廉価な粗悪品しか売れない状況とか、
・一円でも安い調味料を買うため自転車でスーパーをハシゴする主婦とか
・正社員を減らして安い非正規雇用を増やす企業
なんかを思い浮かべるかもしれないけど、


今や GDP が減るのは、

・無駄や虚飾の習慣を廃し、
・分け合えるモノはどんどんシェアするなど、合理的に行動し、
・不要なモノにお金を払うのをやめて、
・その分、残業せずに個人の時間を増やす、
みたいな生活をも意味するわけで、


「GDPが増える=豊かな生活」、「GDPが減る=貧しい生活」 ってわけでもないんじゃないの?


高度成長時代は、みんなが新築の不動産を買い、自分の家専用の自家用車を保有し、年賀状出して、お歳暮やお中元を贈って、

教育費は聖域だと言って無制限にお金をつぎ込み、一日で終わってしまう成人式や結婚式や葬式に何百万円もつぎ込む、

それらへの支払いのために止めどなく残業し、単身赴任までして稼ぎを増やす・・・

そういうことで GDP を伸ばし、GDP が伸びる=豊かな生活だと信じていたわけですが、

これからは GDP をシュリンクさせることのほうが、豊かな生活につながりそう。


格安眼鏡がわかりやすいと思うのだけど、JINS や眼鏡市場、Zoff のおかげで、今まで 3万円だった眼鏡は 3000円になりました。

複数の眼鏡を買う人が増え、ファッショングラスを使う人も増えたけど、それでも 3万円分 × 1本 = 3万円だった GDP は 3000円 × 5本 = 1万 5千円と半額くらいになったはず。

でもこれにより、今までは一種類の眼鏡しか持ってなかった人がアレコレ気分に合わせて多彩な眼鏡を使い分けられるようになり、機能としての眼鏡が必要ない人もファッションアイテムとして眼鏡を楽しめるようになった。

眼鏡の GDP は半額になったけど、眼鏡に関する生活は豊かになってる。


なので、安倍さんの目標は GDP を 600兆円にすることらしいですが、あたしとしては、GDP は 400兆円を目指すべきだと思ってます。


そして、消えた 100兆円を、今は無い、新しく生まれる新たな市場価値でもういちど増やせばいい。

ざっくり言って今のお金の使われ方のうち、2割くらいは無駄だと思わない? 

まずはその 2割分、100兆円の無駄を排除してこそ、次に「本当に価値あるもの」を生みだす余裕(人材や時間)が捻出できるんじゃないかな。


このまま無駄な消費を増やして GDP を600兆円にするのを目指すのではなく、不要な 100兆円分の市場を減らして 400兆円を目標にしようよ。

そして、その後で 100兆円増やして(元の)500兆円にする。

これこそが日本にとっての成長戦略だと(あたしは)思っているでございます。



 そんじゃーね


<追記>
コレなんてまさに「 GDP が減って豊かになった例」と言えます ↓

「GDP が減るなんてとんでもない。GDP は常に増えていくべき」という人は、「音楽 CD しか音楽を聴く方法がなく、CDが売れまくり、GDP が伸びる社会」が続いていたほうが、豊かな社会だったと思っているのでしょうか?


http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+shop/