お坊さんと王様@ラオス

シリーズでお送りしているラオス旅行記の続き。

ラオスは敬虔な仏教国。今日はお坊さん関係の話と、その昔、王国であったラオスの王様関係の話です。



ちきりん 「お坊さんになる人って、小さいころから仏教が好きで、それでお坊さんになると決めるの?」

Tさん 「出家には 3種類あります。ひとつが習慣出家。男子はみな 3ヶ月は習慣として出家します。
もうひとつは厄払い出家。自分や家族に悪いことが続いたとき、厄払いとして 3日とか 1週間だけ出家します」

ちきりん 「へー!」

Tさん 「最後が、教育を受けるための出家です。ラオスでは義務教育は無料とされていますが、実際には教科書代や課外活動のためお金がかかります。

でも 10歳でお坊さんになると、一般の学校ではなくお坊さんの学校に通えます。こちらは食べ物も托鉢などでまかなえ、生活費を含めてすべて無料です。

だから、田舎の貧しい家に生まれたけど勉強したい子は、親に勧められたり、自分で決めて 10才くらいで出家する場合があります」

ちきりん 「教育を受けるために仏門に入るんだ! で、教育が終わったら、他の職業についてもいいの?」

Tさん 「はい。高校の課程を終えたときにお坊さんをやめて、公務員になる人もいます。ラオスで英語やフランス語のガイドをやっている人の中にも、教育はお坊さんになって受けた、という人がたくさんいます」

ちきりん 「じゃあ子供の出家って、貧困家庭向け無料教育の福祉制度でもあるのね! 教育内容はお坊さんの学校も一般の学校も同じ?」

Tさん 「お坊さんの学校では仏教についても学びますが、それ以外は同じです」

ちきりん 「にゃるほどねー。それはいいシステムかも」



<お寺へのお供え物を売る店>


ちきりん 「真っ暗闇の洞窟で座禅を組むのって、修業とはいえ怖そう・・・」

Tさん 「お坊さんには 2種類のお坊さんがいます。

1)布教や読経や説教を行うお坊さん
2)ひたすら修行をするお坊さん

1)は仏教を広める人、2)は仏教の修行を突きつめる人です。


2の人は布教も説教もせず、ひたすら自分を無にするための修行に専念します。

光の全くない洞窟の中で何日も(ごく少量の水と植物性の食べ物だけを摂取しながら)座禅を組み、何を食べても味がしない、目の前にいるのが人間か動物かさえ気にならなくなるような、無の境地を追求します。

生きながらにして死の境地に至ることを目指す厳しい修行です。

こういう修行をしているお坊さんは修行僧、高僧と呼ばれ、大臣も王様もひとめ会って拝みたいと考えますが、なかなか会えません。


1)のお坊さんは、修行に専念する2)のお坊さんに代わり、一般の人に仏教の教えを説いたり、座禅のやり方を教えたりします。

ラオスでは男子はみな 3ヶ月お坊さんをやるといいましたが、それは1)のお坊さんのことです。

でも自分は、それに加えて 2ヶ月弱、2)のほうもやってみました。飲まず喰わず、眠らず暗闇で座禅をしてると、たしかに頭が空洞になる瞬間があります。

目の前にいるのが人間か動物か、ふっとわからなくなる。

けど、自分の場合は美人が拝んでいると、「あっ、きれいなお姉さんだ!」とすぐに現世にもどってしまいます。

私には修行は無理です」



その他、お坊さんとお寺関係でいくつか。


Tさん 「お寺は必ず多くの人の寄付で作ります。お金持ちがひとりでお金を出してお寺を作っても御利益はないと言われています。お寺は誰にも独占できない。みんなのものだから」

★★★

Tさん 「お寺には毎日、多くの人が食べ物を持ってくるので、お坊さんが食べきれないほど集まります。

お坊さんは集まったご飯のすべてを、一口ずつ食べます。

お坊さんがひとくち食べた残りを食べると御利益があるとされているので、ひとくち食べて残し、残りは周りの人や貧しい人にまわします」

★★★

Tさん 「仏像を国内外に移動させることは禁じられています。

今でもタイのお坊さんが、仏像をラオスのお寺や洞窟で祭るため持ってくることがありますが、そういう場合は、どの時代のどの仏像をどこに持っていくか、申請書を出してちゃんと記録します。

そうしないと、時代や宗派の違う仏像が混じってしまい、あとから、歴史の研究ができなくなるからです」

ちきりん 「さすが、そういうところはしっかりしてるんですねー」



次はお坊さんではなく、王様の話。ラオスは社会主義国になる前は王国でした。


Tさん 王宮だった建物内部の壁画を見ながら、「これは王様が象にのって道を通るところです。みんな道端で横座りになって、王様を見送ります」
ちきりん 「横座りがラオスの正式の座り方?」
Tさん 「男も女も横座りが正式です」
ちきりん 「でもこの絵だと、沿道に座ってるのは女性ばっかりですね。なぜ?」
Tさん 「いいところに気が付きましたね。王様が道を通るとき、女性はきれいに着飾って道に座ります。運がいいと愛人にしてもらえるからです」
ちきりん 「まじ?」
Tさん 「そして男性は、王様がやってくると聞くと隠れます」
ちきりん 「なぜ?」
Tさん 「体がしっかりしてると、「おいお前、家来になれ」とか「軍隊にはいれ」とか言われる。それを避けるためにです」
ちきりん 「それでこの壁画、沿道には女性しか書かれてないの?」
Tさん 「はい」
ちきりん 「ホントに?」
Tさん 「はい」



<ガイドさんの話を聞きながらとったメモの一部。手元は見ず、視線はガイドさんに向けたままメモを取るので、字が汚くて後から判別するのが大変・・>


ちきりん 「ラオスが社会主義になって王国が滅びた時、王様の家族は中国のラストエンペラーみたいに逮捕されたり投獄されたりしてないの?」
Tさん 「してません。ただ、一部の人はそれを怖れ、タイ経由でアメリカやフランスに亡命しました」
ちきりん 「逃げたのは一部だけ? じゃあラオス国内にも、今でも王族の子孫が残ってる?」
Tさん 「たくさんいます。今は普通の人として暮らしています」
ちきりん 「みんな、お金持ち?」
Tさん 「お金持ちの人もいるし、貧乏な人もいます。普通と同じです。
そういえば私の友達は、王室の子孫の女性と結婚しました。それで仲間から、夜ベッドに入るときに(昔なら王女様なので)緊張しないか? とか、からかわれています」
ちきりん 「そーすか。。。」


他にもおもしろい話をたくさん聞いているのですが、なかなか追いつきません。
気長に少しずつ書いていきたいです。



そんじゃーね。

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