防災省と広域行政が必要って話

大地震に襲われた熊本には、全国から(受付や仕事配分が間に合わないくらい)多数のボランティアが詰めかけてるらしい。

すごい! & すばらしい!!  けど、

足りてないのはボランティアというより行政職員なんじゃないの?


被害状況を確認して罹災証明を出すにしろ、仮住宅を手配するにしろ、大量の震災瓦礫や家財ゴミを処分するにしろ、

支援物資や支援金を配分するにしろ、ボランティアを必要とされる場所にスムーズに派遣するにしろ、道路補修の優先順位を決めるにしろ、

行政担当者の絶対数が足りなくて滞ってるコトがたくさんあるはず。


なのでここんとこ「防災省」の必要性を指摘する声があちこちからあがってますが、あたしもそれ、大賛成です。

どんだけ自然災害、多いねん、この国!? って感じだもん。


ここ 20年ほどだけでも、神戸と新潟と東北と熊本で震度 7の地震が起こり、東京直下型から南海トラフ型まで、さらに大きな地震さえ、いつでも起こりうる。

海で地震があれば津波に襲われるし

福島だけでなく、原発はまだまだたくさん(こんな地震の多い国に)存在してる。

火山だってあちこちで噴火するし、毎年、大型の台風が日本列島を直撃してくる。

ゲリラ豪雨で堤防が決壊、川も大氾濫したし、広島駅のスグ近く、みたいな住宅密集地でさえ大規模な土砂崩れが起こってる。


そんな大きな災害が起こった時、常に問題になるのが、「行政スタッフの質と量、両面の不足」です。

今回の被災地、南阿蘇村の村役場と益城町の町役場に何人の職員が働いてるのか知らないけど、どう考えても手が回ってないはず。

遠くの自治体から支援人員も送られてるだろうけど、「初めて行く村」では右も左もわからない。道がわからないのはもちろん、町内の地区名を漢字でどう読むのかさえわからなさそう。


加えて、質的にも厳しい。そもそもみんな大きな災害に遭ったことが無い。

1995年に阪神淡路大震災があった時、神戸には大地震の経験者なんて誰もいなかった。

三陸地方だって「前にこれほど大きな津波が来たのは明治 29年」だったし、熊本の大地震も明治以来の 100年ぶり。

つまり同地域での自然災害に関しては、その間隔が人間の寿命を超えてるため、多くの自治体は「経験者ゼロ」の状態で未曾有の災害に対応する必要がある。


でも、もし防災省があったら、その人達は、
1995年には神戸の災害対応に関わり、
2004年には新潟中越地震に駆けつけ、
2011年には東北沿岸部で経験を積んだ上で、
今回、2016年には熊本で活動にあたることができる。


この間 21年だから、
・神戸の時に 23歳の防災省の新入職員だった人は、今 44歳で部長として前線の指揮がとれるし、
・神戸の時に 35歳のベテラン職員だった人は、今回は 56歳の局長として統合指揮がとれる。

その間に毎年、川の氾濫から台風被害、大規模土砂崩れまでいろんな災害が起こってるので、防災省職員の非常時対応スキルや経験値は、ものすごーく上がってるはず。


日本では災害の時によく自衛隊が活躍してるけど、彼らはあちこちの災害で経験を積んでどんどんスキルを上げている。

それと同じコトが行政職でも必要な気がするでごじゃるのよ。

だっていつもは住民票の発行とか保育園の申し込みの受付とかやってるのに、いきなり数百人が寝泊まりする避難所の運営とか任されても困るでしょ。


★★★


防災省に

・避難所開設・運営課
・ボランティアマネジメント課
・支援物資、寄付配分課


・医療支援課 (入院患者、障害者、高齢者の移転先探し、医師ボランティア受付など含む)
・被災証明課 (被害状況の調査担当でもある)
・仮設住宅課 (仮住居の調達、建設、配分)


・がれきゴミ処理課
・外部連携課(自衛隊、警察、消防庁、政府、他府県との連絡調整課)
・広報、メディア対応課(マスメディア&ソーシャルメディアの担当) 外国語対応も


・原発事故対応課 

などがあって、


全スタッフが一ヵ所に集まってると、その場所で災害が起こった時にヤバイので、拠点は日本の 3ヵ所くらいに分けて構え、ふだんは

・全国の自治体職員の研修を受け入れて防災教育をしたり、


・海外の被災地に出向いてボランティアをしつつ経験を積んだり、


・南海トラフや都市直下型地震、原発事故時の避難計画のシミュレーションをしつつ、


・コンビニやヤマト運輸で研修を受けて、荷物配分の方法などロジスティックスについて学び、


・各地の仮設住宅や復興住宅を回って、「災害の 2年後」のニーズを先取りして調査、


・全国各地の氾濫しそうな川や、土砂崩れの多い場所、噴火する可能性のある山のエリアも事前に訪れ、災害前から土地勘を養っておく

など、いろんな準備や訓練がしておける。


その上で、いざ大きな災害が起こったら一斉に被災地にはいって「プロ」として仕事を始める。
そういう体制が必要な気がするよね。


★★★

それと、
防災省に加えてもうひとつ考えるべきは、防災に関する広域行政協力体制を作ること。

前回のエントリでも書いたけど、避難所が開設されるエリアの大半が、「余震が続いているエリア」「ライフラインが止まってるエリア」「スーパーもコンビニも開いてないし、病院だって大混乱してるエリア」だってのは、どう考えても合理的じゃない。


災害が起こったら、避難所の多くは近隣の県や町で開設すべきだし、

ボランティアセンターだって近隣都市に設置して、そこからバスで送り出せばいい。そのほうがボランティア個人個人がそれぞれの交通手段で被災地まで向かうより交通量だって減らせるはず。


そしてなにより理解すべきは、小さな自治体をそのまま残しておくと、イザという時に必要な住民サービスが提供できなくなる、という点。

自治体の消滅は社会の進歩の印」 というエントリで書いたように、

現代社会に必要な行政サービスを提供するためには、自治体はある程度の規模にまとまったほうがいいんです。


村の名前を残したい。歴史が違う隣町とは一緒にされたくない。そういう気持ちはわかります。

でも、人口が減っていくなか自治体を統合しないということは、役場の人数はどんどん減っていくということで、

それでは大災害が起こった時にまったく対応できない。


なにが本当に、住民のためになるのか。

よーく考えようというお話。


そうでないと、

1次被害 = 災害による直接の死亡者


2次被害 = 避難のストレスで亡くなる災害関連死、に加え


3次被害 = 災害後、長期間にわたって休日ゼロ・徹夜続きで働き続けた行政職員の過労死

が起こりかねません。



 そんじゃーね


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