コクド西武の総帥、堤氏が逮捕されましたね。
いろいろ言われているけど、その中で一番おもしろかった意見は、猪瀬直樹氏のテレビ番組でのコメントです。
曰く「西武の凋落は、ビジネス自体が時代に遅れたことにある」と。
そうですね、その通り。
本当の問題は証取法違反とかではなく、ビジネス自体に時代をつかむ勢いがなくなったということにあるわけです。
どんなビジネスでも闇の部分はあります。それが取り返しのつかないところまで暴走してしまうか、どういう形で現れるか(現れる前に解消されるか)というのは、その事業の持つ前向きなエネルギーの量によって決まるところがある。
“私をスキーにつれてって”という若い人はもう知らないでしょうが、そういう映画があった時代、若者はこぞって苗場にスキーにでかけてた。
冬の定番、恋人とのデートの定番。現天皇が軽井沢のテニスコートで美智子妃とお会いになった頃から始めて、堤氏の提案したスポーツ、リゾート、別荘ビジネスというのが、時代の先端を走っていた時代があった。
ところがバブル崩壊と共にこの国の余暇のライフスタイルも大きく変わった。
それは地味になったとか貧乏になったとかいうことではないです。
ヒルズを見ればわかります。彼らはお金はあるけど、プリンスホテルにとまってスキーに行ったりしない。既に西武は国民のエンターテイメント市場のニーズを全くつかめていない会社になってしまっていた。
どんなビジネスにも存在するほころびや闇の部分が、疾走するスピードが落ちたときに一気に顕在化する、というやつです。
で、思い出すのはダイエーの中内氏。
堤氏も中内氏もそもそも後継者を育てていない。60になっても70になっても事業の先頭にいようとする。
経営能力とかカリスマ性とかではカバーできない、時代感覚や身体能力の衰えがでてきたんじゃないかな。
でも若い人は誰もカリスマに直言できない。カリスマも時代の変化を受け入れない。そして組織の闇が大きくなり、いつか隠せなくなってしまう。
なんでもっと早くに若い人に引き継がないのか。
中内氏が日本に持ち込んだ割引販売セルフ方式の小売店も、軽井沢や湯沢を作り上げた堤氏も、若き日には時代に“夢”を提示していた。
それが、あの若さで第一線にたっていたからこそできたことなのだという認識がなぜ持てなかったのか。能力より大事なものがあります。それはエネルギーというもの。
多くの戦後復興・大躍進ビジネスモデルが崩壊していきます。それは、高度成長を支えた人たちが、その夢にしがみつき逃れられないことがひとつの原因なのでしょう。
というわけで今日の私の一言。
- 若者へ:恐れるな。能力よりエネルギーこそが事を成す。
- 当時の若者へ:あなたが老いを認めるところから、次のあなたが生まれる・・・