農業もまじめにやりましょう

昨日ニュースで、「日本のリンゴがアジアで高く売られている。農業も輸出できる。今の輸出額を5年で倍にする計画」とやっていました。

小泉さんが「攻めの農業」と行っているとのこと。ちきりん的には「何をいまさら」という感じです。なぜ農業って今までずっと「守る産業」として扱われていたのか。今の目標だって小さすぎ、と思います。


そもそも、8兆円の産業規模の農業に3兆円の補助金が使われている、とも言われてるんだけど、それってありえない規模の補助金でしょ。

「儲からない産業だから、巨額の補助金を出している」とも言えるし、「そんな額の補助金がでたら、どんな産業でもやる気なくなるでしょ」とも言えます。

自動車産業だって毎年20兆円の補助金だしたら、みんな頑張らなくなってしまう。


以前、日本のネギ農家を守るために中国からのネギ輸入を規制しようという議論がありました。

「中国産はコストが安すぎて、とても対抗できない」という意見が大勢で、「日本でネギなんて作らなくてもいい」という意見までありました。

でも、“香味野菜”として香りが重要で、あんなにしおれやすい野菜が外国産に負けている、という時点で、ちきりんは「それは努力不足では?」と感じてしまいます。

海外から輸送されてもまったく品質が劣化しない家電製品とは違って、野菜なんて取れたての方がおいしいに決まっています。

どんなに気を遣っても、あちこち運ばれる時の振動や環境変化が野菜にいいわけがない。何で日本のネギが中国のネギに勝てないかな?


フランスで朝ご飯を食べると、卵のおいしさに感動します。

乳製品はもちろん、トマト、ニンジンなど野菜もおいしい。でも特に卵は格別で、これが両親が言っていた「昔の卵はおいしかった」というやつね、と思います。

これから急速に高齢化が進む日本。年を取れば食べる量は減るわけで、少量でおいしいものを高めの価格設定で買う層は少なくないはずです。

でも、ネギを始めとする野菜について、新鮮さや風味のよさを農家や農協の関連団体が大々的にアピールしている広告をどのくらい見たことがありますか? 

ちきりんの知る限り、大々的な野菜のマーケティングは、企業が市場に参入しているきのこやトマトに限られています

ビールでさえ“新鮮さ”をアピールする広告が打たれる時代に、なぜ生鮮食品のおいしさの宣伝、マーケティングアピールがこんなに少ないのでしょう。


お米だって同じです。

米の消費量が減ることに対して、ご飯をもっと食べてもらうためにどんな工夫が行われてきたのでしょう?

備蓄米とか米飯給食とか、“お国のお金”で米を買うことはしても、“もっと消費者に米を買ってもらう”工夫は果たしてどの程度行われてきたのでしょうか?

飲料やお菓子、洋服や通信サービス、どんな商品も大量の宣伝が行われています。

マーケティング上のあの手この手の進化、付加価値をつけようとする工夫。商品性の改良はもちろんですが、「積極的に売ろうとして必死の努力をする」ことなしにモノが売れる時代ではありません。

ごく一部の“ブランド米”“ブランド果物”を除いて、何の“売る努力”の見えない農産物が、「価格だけで選ばれる状態」に陥ってしまうのはある意味当然の帰結と言えます。

もちろん、すべての農家にそれを期待するのは無理でしょう。それは、職人さんに営業や広告もやれと言っているようなものです。

でも、「農協って何のためにあるの?」「農水省の役割は?」とは思います。彼らは“補助金分配機構”である以上の役割も果たすつもりはないのでしょうか?

家電メーカーがやっているように、日本で手に入るすべての国、地域のネギを研究して、自地域のネギの差別化戦略を検討している農協はあるのでしょうか? 

ネギの消費量を増やすマーケティングを手がけている農協はあるのでしょうか? 

農産物もほかの消費財・消費サービスと同じです。誰かがマーケティングや販売戦略の検討をまじめにやらないと、差別化できないし売れません。


最近は、目新しい野菜を海外から探してきて日本で栽培できるよう改良し、食べ方や料理法を積極的に紹介しながら新たな市場を作っていこうとしている野菜農家や農業関連商社(もしくは地方公共団体の支援部署)も出てきています。

ネギについては「カットネギ」が売られ始めるようになってから“めんどくさがりや”の人にもネギが売れるようになった。これは“市場拡大”につながっていると思います。

農家への戸別所得補償とやらの前に、ちきりんとしては、こういった“ビジネスとして当たり前の努力や工夫”が農業分野でももっともっと積極的に行われることを期待したいです。



ではまた明日


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