ライバル出現〜サッカー〜

サッカーのワールドカップが近づいてくると、日本の“国民的スポーツ”はいつの間にかサッカーになってしまったのね、と実感させられます。

多くの人が認めるように、野球の人気が無くなった最大の原因は、野球界の怠慢さにあります。いかに客を呼ぶか、楽しませるか、という視点も努力もないまま、一部のスタープレーヤーに依存してあれだけの人気を保持してきた、それはそれで驚くべきことだったのかもしれません。

消費者、この場合、テレビ視聴者や野球少年はそれでも野球を支持してきました。ななぜならスポーツエンターテイメントがそれしかなかったからですよね。相撲も野球と同じくらい同じくらい努力しない業界ですし。

そこに“努力する業界”サッカーが現れた。というか、“努力せざるを得ない業界”と言ってもいい。新規参入者はどこの世界でも大変です。すごい努力が必要。


しかも、サッカーは、自分の唯一の強みを大いに活用しています。それは“グローバルなスポーツである”ということ。

サッカーでは、日本が目指しているのは世界一である、というメッセージを発信し続けました。これはメジャーリーグのファーム化している野球や、“相撲は日本だけでやっていればいい”という相撲界との絶対的な差別化要因となっています。

“世界に挑戦する日本”という位置づけにしてナショナリズムという感情を利用しているのです。


スポーツだけでなく、「日本の無競争市場に競合が現れる」というのは他でも起こっています。例えば大学。今や“東大とHBSに合格してHBSに行く”とか“慶應とMITに合格したからMITに行く”っていう人がでてきている。東大にとっては、“ライバルなんていないもん”という状況が変わりつつあります。

病院も同じ。手術するのに、わざわざアメリカの病院に行く人がでてきている。医療ミスやら説明責任やらスピードやらを考えると、コストの高さや異環境の不便さはかまわない、という人たちです。(ただしお金は相当ある、という人ですが)

今まで競合がなかった業界や会社では、こういう状態への対応が本当に遅い。なにせ独占状態がたいていすごく長期間にわたってきたので、概念として競争というものがどういうものか理解できないのでしょう。


もうひとつのポイントは、“日本で一番モデル”の危うさ、将来性のなさ、でしょう。今や衛星テレビやケーブルテレビ、ネットで、海外のスポーツの情報がビビッドに手に入ります。よりレベルの高いものが見られる中で、“日本で一番を目指して死ぬほど努力しているアスリート”ってのは、“なんで、そんなとこに目標をおいてんの?”という気にさせる。

背の低いバスケプレーヤーが米国でプロリーグを目指す、私たちはそのダイナミックさに見せられている。野茂が一番エライ!ってのと同じです。勝ち負けの前に、世界にチャレンジする姿勢をみて視聴者は興奮する。

一方で巨人軍の“今年こそ日本一に!”という目標自体が虚しくうつる。そんな目標たてられてもね、って思う。


ドラマでは韓国に、スポーツでは米国、欧州に侵食されつつある大消費国ニッポン。“日本から世界を目指す”エンターテイメント産業(企業)が出てこない限り、私たちはこの戦いに勝てないでしょう。


がんばれニッポン!



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