メンテで儲ける

ちきりんは旅行先でとった写真をフォトショップ(簡易版)で加工し、「旅行のまとめ写真集」を自分で作って保存しています。また、気に入った写真にメッセージをいれてオリジナルの暑中見舞い葉書などを作ることもあります。

こんな感じです。



葉書として送るためにプリントする際、家庭用のインクジェットプリンタで“高画質印刷”をするわけですが、たかだか2万円もしないプリンタなのに本当にキレイに印刷できて感激します。

ただ、高画質で印刷するとインクがすぐに無くなるんですよね。ちきりん家のプリンタのインクタンクは黒、赤、青、黄の4種に分かれていて、替えのインクタンクは純正品だと1種類が800円です。(家電量販店での値段ですから定価は1000円くらいでしょう。)4種類全部替えると3200円です。

これ、インクを6回変えたら、プリンタ本体が買える値段になります。プリンタの値段は2万円弱だったから、こちらではメーカーは利益がでていないのでしょう。彼らは最初からインクで儲けるつもりなのだと思います。


ですが、インクが高いと思う人はたくさんいるため、安い詰め替えインクがサードパーティ(プリンタメーカーとは無関係の会社)から発売されています。一番安いのはインクを詰め替えるタイプのものなのですが、コレがめんどうな商品です。手がインクだらけになるんです・・・。

「ちきりん不器用だから」という理由もありますが、根本的な原因は、プリンタメーカーがインクタンクを(わざと)“詰め替え”が難しいように作っているからでしょう。

プリンタメーカーとしては(純正インクで儲けようと思っているのに)他の会社にそんなものを売って欲しくありません。「勝手に余計なモンを作るな!」って感じす。実際、一部の詰め替えインク製造会社には訴訟を起こしているようです。

ちきりんは毎回、手をインクだらけにしながら思います。「企業の戦略って、時に消費者に意地悪だよね」、と。

★★★

このように「最初のハードは格安で売り、メンテや補充品がはすごく高い。そっちで儲ける。」という商品はよくあります。最初にこういう儲け方を思いついた人は本当にエライですね。

以前よく問題になった役所などのシステム構築費の“1円入札”もそのひとつです。とりあえず最初のシステムだけ落札できれば、翌年からの拡張費やアップグレード費用はすべて自社が独占できるので、入札価格1円などというめちゃくちゃなことが起こります。

その他に有名なのは、エレベーターです。マンションにお住まいの皆さん、エレベーターってやたらと点検してませんか?マンションもオフィスビルも、エレベーターは最初に一度設置したらあとは何十年も取り替えません。なのでビルを建てる最初に自社エレベーターを選んでもらえれば、向こう40〜50年も「メンテの仕事は独占」できます。

詰め替えインクと違って命にかかわる商品だから、関係ない会社が「見よう見まねでメンテする」のは難しいし、ビル管理側もできれば作った会社の系列会社にメンテしてほしいですよね。というわけで、一度“箱”が売れたら、向こう40年分のメンテ料金が「他社との競合なしに受注できる」なら、最初の“箱”は少々安くしてもとにかく売れ!ということになります。

★★★

もうひとつ、事実上「メンテで儲ける」形になっているのが、「国家資格ビジネス」です。民間が主導して始まった資格でも、国家資格に認定されると応募者が桁違いに増えるため、資格の多くが「国家資格化」を目指します。

それらの資格をとるには、もちろん受験料もかかりますが、合格後にも資格を維持するために毎年、年会費がかかるものも多いです。30才で資格をとった人が60才までその資格を維持してくれたら、資格の主催団体には毎年、年会費収入が入ってくるわけです。

人気資格ではこれが相当額になります。しかも、そんなに集めたお金をいったい何に使っているのでしょう?実際には一年に一度、会員名簿を更新するくらいで後はほとんどまともに活動していないところも多く、「国家資格のメンテ」は本当に美味しいビジネスになっています。

特に合格が難しい資格ほど、「せっかく苦労してとった資格だから、(たとえ自分の今の職業に全く関係なくても)失効させたくない!」という思いが強くなります。そして多くの人が、決して安くない年会費をせっせと払ってくれるのです。資格の累積保有者数が多い団体の場合、この額は驚くような規模になっています。

そしてそういう団体には「資格を国家資格に認定してくれた霞ヶ関の担当官庁」の人が天下っています。みんなが払う年会費の使い道の一部が、そういう人の年収や(その人の人生における)何度目かの退職金になるというわけです。


特に使っていない資格の年会費をずっと払っている人は、よく考えた方がいいと思います。その資格、本当に必要ですか?

国家資格までメンテ・ビジネスで儲ける時代です。


ではまた明日