イスラエル旅行の記憶

イスラエルのガザ地区撤退。

パレスチナ問題って日本人の多くにとって、最もわかりにくいニュースの一つなんじゃないでしょうか。


専門家や本は、だいたい二つのアプローチで説明しています。

1)第一次中東戦争は、第二次中東戦争は、第三次・・・みたいな時系列の説明方法。

でもこれ、テスト勉強みたいで苦手です。

どの戦争が、いつで、どことどこが戦争して、原因がなにで、結果がどうか、を覚えるだけで、おなか一杯。

本質的なことが全然わかんない。

2)もうひとつの説明方法は、宗教から始まるやつ。聖地とかモーゼとかユダとか・・・これも超わかんない。

私は未だに「モーゼとは、実在した人なのか? それともお話の中の人なのか?」もわかってない。

お願いだから、誰かもう少しわかりやすく説明してほしいものです。

★★★

実は私、「ヨルダン川西岸」に行ったことがあるんです。

旅行中にガイドが「あの川がヨルダン川だよ」というので、「えっ、こっちは東側?西側?」と聞き、

反対側が西側(ウエストバンク、正確には西の土手みたいな意味)だと聞いて車を止めてもらい、川をわたり(すごい川幅が狭いところだった)写真をとりました。

ニュースで「ヨルダン川西岸」ってよく出てくるから、記念に。単なるミーハーです。

★★★

イスラエルはどんな国だったか? 

テルアビブは海沿いのきれいな街で、おしゃれな感じ。湘南に似てるかな。

海岸線沿いの車道にそって歩道があり、そこをつらつら歩きながら、疲れたら海の見えるおしゃれなカフェへ。


行く前は「テルアビブ」って聞くとそれだけで「こわ〜」って感じだったけど、実際にいけば怖いとは全く感じない街でした。(あたりまえですが、このあたり含め、中東が平和だった時期に行ってるし)

ただしエルサレムはやっぱちょっと怖かったかな。

平和な時期ではあったけど、イスラエルとパレスチナが分割統治してるエリアがあり、ところどころ通行禁止になってて、「ここから先はパレスチナ側の招待がないと入れない」みたいな感じです。

車で走っていても、パレスチナ側の地域を通行する時はいちいち検問があります。

特にパレスチナ側からイスラエル側に入る時の検問は大変。


そして驚くのが、景色の急変。

パレスチナ側に入ると、窓からの景色が一変するんだよね。

急に家がぼろくなり、子供が裸足になる。

アラファト議長の顔があちこちの家の壁に書いてあって、砂埃の中の廃墟に、大勢の子供たちが住んでいる。

おもちゃのガン(おもちゃだと信じたい)をもって戦争ごっこをやっている子もたくさん。

★★★

そしてイスラエルは、パレスチナとの境や他のアラブ国との国境の近くに、「キブツ」という名の「共同農園」を作ってる。一種の入植地なんですけど。

イスラエルがパレスチナに勝てない唯一の要因は、「人口」なんです。

お金も技術も軍事力もすべて勝ってるけど、人口がパレスチナの方が多い。(今は、同じくらい。ただしパレスチナの方が増加率が高い)

国盗りって結局は「陣取りゲーム」だから、人口が少なくては勝てない。

それで、世界中にいるユダヤ人に「帰っておいでよ」と呼びかけてる。

実際、お国のために、欧米から戻るユダヤ人もいる。

でも、欧米から戻ってくる(多くは、別宅をイスラエルにも持つ)人たちは、欧米で成功しているユダヤ人で金持ちです。

だから彼らは大都市にしか住まない。

アラブ諸国との国境とかパレスチナ地区との境には住まない。あたりまえ。


それじゃあイスラエルは困る。

だって、テルアビブとエルサレムにしか人が住まないと「イスラエルの領土は、そこだけでいーじゃん!」と言われかねない。

他のエリアには「どこでも住めます、僕たち」というたくましいパレスチナ人が住み着いてしまう。

そうやって住まれてしまったら、実効支配され、陣取りゲームで負けになる。

それがイスラエル的には困る。とっても困る。


で、イスラエルは考えた。
「ユダヤ人でなくてもいいや。一生住んでくれなくてもいいや。とにかく、国境近くに住む人を探そう」と。

で作られたのが「キブツ」

いわゆる「集団農場」だと思うのだけど、ここには「誰でも無一文で住める」んです。

たとえば、明日ちきりんがイスラエルに行く。

で、キブツで働きたい!というと滞在許可がおりる。

最低限の衣食住はキブツが負担してくれる。

毎日労働する。農業です。

給与はほとんどもらえない。

その代わり、食事とか石けんとか作業着は支給されるし、食堂にテレビもあるから、そこにいる間の生活費はかからない。そういうシステム。


世界中から「珍しいモノ好き」な放浪系若者がやってきて、半年いたり一年いたりします。

日本の旅行社も「キブツ体験ツアー2週間〜」とか言うのをやってたりします。

世界中からいろんな人が来てるから、英語研修に利用する人もいるみたい。往復の交通費以外は費用がかからないから。


キブツの周囲は、高〜い鉄条網や壁で囲まれています。

すぐ外に国境があり、いつテロがやってくるかわからないから。

でもキブツの敷地は広いから、中に農園とか運動場とか管理棟とか最低限のお店とか全部あって、その中だけで暮らしていける。

特定のキブツのワインとかが名物になって、流行したりもします。


イスラエルに行ったとき、「キブツの中も見たい!」と言って見せてもらいました。

一人旅。私のためのガイド(ガン持ってます)とドライバー(ガン持ってます・・・)だから、自由自在。


キブツってのはつまり「人間が住むことによって作る弾丸の盾」なんです。

「日本人の若者やアメリカ人の若者もいるんだぞ。アラブ側、パレスチナ側のテロリストよ、ここに爆弾を打ち込んだりしたら、国際問題になるぞ」という脅しが狙いです。

そういうキブツを、国境に沿って幾つも幾つも設置して、世界から住む人を募集する。

人間は最高の盾なのです。


続きはまた明日。


 http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+shop/