尊敬できるけど友達にはなれません

ブッシュ大統領が、洪水への対応が遅れたことについて「問題があった」と認め「なぜ問題が起こったかを究明する」と言ってました。

これね、すごく偉いよね、と思うのです。

まあ、作戦っちゃー作戦なんだけど。でも、日本で首相が「政府の対応に問題があったと認める」ってすごく少ない気がするのだよ。

日本は政治家は、とにかく頑固に自分や行政側の「過ちを認めない」という悪い癖がある。なんだかんだ言い訳する、正当化しようとする。誰にでもミスはあるのに。

とりあえず謝罪して、ミスの再発防止に力入れた方が前向きよね。そういう意味では、久しぶりに(すんごい久しぶりに)こーゆーところ、アメリカは偉いよね、と思った。


911のテロが起こった時に、政治家(上院議員とか、そういう人)が言っていたの。「なぜアメリカがアラブの人達に憎まれるのか。まず私たちはこのことを分析せねばならない」って。

これ、本当にわかってなくて、分析しようと言っているのだろうか?って、ちきりんは驚いたよ。

そんな(明確で簡単な)ことが、ほんとにあんたわかってないのか?あんた。政治家なんでしょ?オレンジ農家とかじゃないんでしょ??って。


ちきりんが教えてあげましょう、とさえ思ったよ。(明らかに核を持っていそうな)イスラエルには核査察も求めないし、イスラエルが国連決議無視しても、なんの非難もしないし、非難決議があがってきたら拒否権発動してつぶすし、そのイスラエルに超多額な補助金と最新軍備をあげちゃうから、アラブの人に嫌われるのよ。わからんかい?そんな簡単なこと。って感じだ。


が、しかし、こうも思う。

もし本当に「なぜアラブに嫌われるのかわからない」状態で911みたいな攻撃を受けたら、マジで頭にくるだろう。その中で、「嫌われる原因を分析しなくては」という姿勢を見せられる、ということにはある種、感心するわけです。普通だったら怒りまくって「ぶっころせー」でしょ。でも「なぜ嫌われるのか勉強しよう」と。


アメリカってそういう国なのだ。無茶苦茶当たり前のことを、すごいまじめに分析する。
一言で言えば「アホだが努力家」って感じだ。

反対に日本は、そこそこ頭いいのに、まったくまじめにやらない人みたいだ。当たり前のことをまじめにやることを「くさい」とか「かっこわるい」と思っているみたいに感じる。

★★★

ちきりんは、アメリカという国にとてもミックスした気持ちがある。
(1)好きかキライか、という感情論だと、キライだ。
(2)偉いか、偉くないか、という客観論理だと、偉いと思う。
んだよね。

たとえば、差別をなくそうとか、すごい努力するのよ。(努力して、結果がでているわけではないですが。)すごくまじめに努力する。新しい人を受け入れようとか、新しいアイデアを受け入れようとか、そういう懐の深さもすごくある。

でも、ほんとに訳のわかんないことをする。余りに無知で、あまりに視野が狭い。アメリカには「イラクの人を救うためにアメリカはイラクに爆弾落とした」と“信じている“人がたくさんいるんだよ。びっくりする。ほんとにそんなこと信じてるの?

信じてます。これはね、自分の国のひいき目じゃなくて、誠実にまじめに信じてる。

日本だと、イラクに自衛隊だしたのを「イラクの人を救うため」なんて理由を信じている人ってほとんどいないでしょ?皆、政治的パフォーマンスだとか、軍隊を持ちたいからその実績作りだとか、アメリカに気に入られたいから、とか思ってるでしょ。

アメリカでは、普通の人はホントに信じてるですよ。「米軍は正義のためにイラクに行った」って。んでね、学ぶのに3,4年かかるのよ。

努力はするわけ。素直に努力する。だから3,4年たつと「あれはイラクの人のためではなかった」ということを、ジャーナリストが暴き、世論が変わったりする。なんだけどさ、んなこと、理解するのに、なんで3年も4年もかかるのさ???ってのが不思議なのだよ。

「ジャーナリストが暴く」必要なんてないでしょ。自明よ、自明。


ほんと、努力するけどアホ。



たとえばお店の売り上げが落ちるでしょ。すごい店員のサービスの悪い店の売り上げがね。日本人は何も調べずに「サービスを良くしないとだめだ。お客様は神様だと思え」って言うんだよね。

アメリカ人は「なんで売上げがおちたんだろう?」って、なんだか面倒なアンケートとかをやりまくった後で、2ヶ月後くらいに「配送を依頼されたケースの3割で、配送が1ヶ月以上遅れていた」とかいう結論に達する。そんで「配送を依頼されたら、忘れないようにポストイットを貼りましょう」みたいな、おとぼけた解決方法を「鬼の首でもとったように」報告するんだよね。ポストイットを忘れず貼って配送を忘れなかった社員を「表彰」したりとかの工夫もする。

超日本人のちきりんから言うと、「あほちゃうん」だ。


エンロン事件とかもそうよね。日本人的な感想で言えば、企業の不正経理なんて「無茶したらいかんで」「悪い奴がおるなあ」「どこも同じやで」といった感じだが、アメリカはまじめにまじめに考える。「なんで不正経理が起こったのだろう、なぜこんなことが見逃されたのだろう。どうしたら防げたのだろう。何が悪かったんだろう」って。延々まじめに考えます。


感情的にはついていけないのだが、でもね、そういう地道な(ばかみたいな)努力じゃないと克服できないこともある。まじめに考える、って大事なことなんだと思う。そういう意味で「偉いなあ」と思うことはある。でも、あまりに「アホすぎる」とも、よく思う。


尊敬はできるが友達にはなれない。なりたくもない。


ちきりんにとってのアメリカはそういう国だ。



また明日