選挙総括

さっき読んだ「日刊ゲンダイ」があまりに過激だったので、最初にその話を。いわゆるスポーツ紙ですね、キヨスクで買いました。


日刊ゲンダイ曰く
「この国の民主主義は死んだ」
「この選挙結果は狂気の果てだ」
「この国では選挙民のレベルが上がらない限り、何度選挙をやっても同じだ」

まじ? 日刊ゲンダイって何様??共産党か社民党か民主党の機関誌??

いくら結果が気に入らないとはいえ、一応、国民の6割が投票した結果について、愚民呼ばわりはないだろうと思うのだけど。

★★★

さて、本題に戻りましょう。選挙総括。昨日から今日にかけて「つまり、どういうことよ」ってのを考えてみた。

(1)選挙の構造が変わった。都市世論で動く国になった。
これは大きい。実は、今回だけでなく前回もそうでした。前回と今回の共通点であり、大きな特徴は、関東での民主党圧勝(前回)自民党圧勝(今回)に象徴されるように、都市で勝つ政党が全国の結果を象徴する、ということが明確になったことです。

これはある意味当たり前。人口の数%しかいない農業をやっている人が支持する政党が与党になるなんて、明らかに変だった。人口の大半が住んでいる地域(関東、関西、中部、そしてその他の中核都市)での結果が、日本の意見として反映されるようになった。選挙の構造が変わったのです。

自民党の関東なんて、本当は比例区で8人当選できるのに、名簿に7名しかいなくて、社民党に1議席あげちゃうんだよ。それくらい今回は自民は都市で強かった。

そして、これは次のステップとして、選挙の構造変化→行政の構造改革(地方優先行政から都市優先行政へ)につながっていくでしょう。地方にダムを造るのも大事かもしれんが、都市の公害や渋滞や高齢化問題や治安にもお金を使わなくてはならなくなる。

都市の人が優先っていうと、「地方切り捨て」的な感情論にすぐなるんだけど、ちきりんは、もうそれはやめたほうがいいと思ってる。なんだかんだ言っても、都市に住んでいる人の多くは田舎の経験もある。田舎から出てきてるんです。ちきりんしかり。どっちにも住んでみて、やっぱり今の制度はおかしいと思うもの。ホリエモンも孫さんも九州の田舎町に住んでいたのだ。

★★★

(2)比例の地域ブロックがある限り、弱小政党も10くらいとれる。でも10しかとれない。

今回、共産党と社民党が9とか7とかの議席です。ちきりんはゼロ?とか思っていた。でもそうはならない。比例の地方ブロックがあるからです。一定数の支持者がいると、比例で一名は送り込める。一定規模の有権者がいる地方ブロックの数だけ送り込めます。それがだいたい10くらいなんだな、とわかった。

公明党は34から30くらいに減った。これも同じこと。ここも与党自民党から離れたら、おそらく少しずつ10に近づいていくんだと思う。創価学会って集票マシンとしてすごい!というイメージがある。実際そうでしょう。でもね、それをもってしても小選挙区では勝てない。だからそもそも候補者をあまり立ててない。

Big 2でなければ小選挙区での当選は無理。でも弱小政党はゼロにはならない。比例区は、既存の政治体制に文句がある人の「ガス抜き」ツールとしての役割を果たしていくわけですね。

★★★

(3)今回の結果は2大政党制に近づいた。

今回は2大政党にならず自民圧勝になったわけですが、日刊ゲンダイと同様に「こんな大勝するのはまずい」という人が結構いる。「2大政党制が遠ざかった」という人がいる。でもちきりんは、当面これでいいよ、と思ってる。むしろ今回の結果で、2大政党制に近づいたとさえ思う。

だって、ちょっと議論に時間かかりすぎだもの、今までの体制だと。反対されると何も可決できない。すると「自民党の責任」が問いにくい。できなかったのが自民党のせいなのか、野党の反対のせいなのか見えないんだもん。それに、野党は「反対だけしている党」に見えてしまう。

むしろ数年は一党で安定過半数を握り、どんどん実際の政策を実現してみてほしい。そうしたら結果がでる。いいにしろ悪いにしろね。そして、それが誰の責任かということもとても明確だ。結果がダメならまた民主党に揺り戻しがいくでしょう。

やたらと勢力が拮抗して何も進まないより、一党が絶対多数をもってどんどんいろいろやってみて、結果がだめなら、別の政党に政権を託す、その方法の方がいいと思う。そういう意味で、2大政党制の実現に、今回かならずしも遠ざかったわけでもないと思うよ。

★★★

(4)選挙制度の残された問題は、投票率向上と一票の格差問題

小選挙区+比例という制度は、上記の(2)と(3)にあるように、ちきりんはいいシステムだと思ってる。あとは、いかに投票率を上げるか、と、一票の格差問題だ。

投票率は、いくらでも工夫が可能だ。選挙場所が公民館とか小学校とかでしょ、今。せめてコンビニとか、できれば自宅でPCで、というようにしてほしい。これは実現味がでてきた。なぜなら自民党が都市型政党になる可能性があるからだ((1)参照)。都市で投票率があがることが有利である、と判断すれば、彼らはそれをやろうとするだろう。イマドキ、小学校と公民館はないだろ?と思うもの。

あとね、一票の格差。これも、まだ4倍程度まで許されてるよね。でもそれ変だよ。なんで??倍も変だと思うよ。同じ票くれよ!!これは実は次に書く(5)の問題と被さってる。立法も行政も司法も「一票の格差を違憲状態であったとしても、田舎に有利に設定することにより」「田舎を守ろう」としている。ちきりんは、田舎を守る必要はあると思ってる。でもね、この方法で守ろうとするのは不適切だ。目標は正しいが、方法論は違う。一票が同じ重みをもたないと、田舎から大物議員が沢山でてくる。彼らは選挙や行政の構造改革にことごとく反対だ。少数の特定者の意見を不当に尊重する制度は変だと思う。

★★★

(5)地方をどうするのか。根本的な改革が必要だ。

ちきりんだってもともとは田舎の人だ。田舎がなくなっていいとは思っていない。住めない場所にしないでほしい。豊かな田舎は日本の財産だ。都市だけの国なんて全くなってほしくない。補助金や一票の格差で守られる地方ではなく、皆が住みたいと思う地方を再生してほしい。

無理か?可能だと思うよ。先進国では一都市集中の方がむしろ少ないのだ。田舎だって(田中角栄氏の時代とは違って)最低限の生活は確保されるようになってきた。一生都市に住むとか、一生田舎かである必要はない。子供の頃田舎でもいいし、働き始めてから一度は田舎でもいい、引退したら田舎に住むもあるだろう。この豊かな日本をみんなで維持する方法を考えるべきだ。

方法論は、地方分権、道州制だと思う。まずは違いを出す必要がある。プチ東京では魅力がない。独自性が必要なのだ。今までの地方開発はとにかく「地方を東京みたいにする」だからね。新幹線とめて飛行場作ってオペラハウスと美術館作って。そんな東京にもあるもの作っても、東京の人がそこに住みたいとは思わないだろう??訪れたいとも思わないだろう?

これは、大きな課題だ。でも、三位一体の改革は(他の諸問題と同様に)枝葉末節では官僚の抵抗にあい大変な骨抜きリスクを負っているものの、方向としては極めて正しい議論だ。だから、これが郵政の次の課題、というのはその通り、と思う。(ちなみに、郵政の次は政府系金融機関民営化です。農協、中小企業公庫、政策銀行、開発銀行等々ね。皆さん、今真っ青でしょう・・。ただし、これは郵政問題とセットの課題。大きな区切りでは、次は三位一体改革です。)

★★★

というわけで、超偏見と独断、ちきりんがピックの今後の日本の課題は、

A 選挙制度改革
B 行政の構造改革(郵政だけでなく、財政、年金、少子高齢化、教育とか全部これ)
C 地方改革

だと思います。


とりあえず絶対多数なんだから、自民党なんでもやってくれ。結果で判断すればいいのさ。



ではまた明日!