億の横領

酒販店組合の事務局長さんが、組合費の横領で逮捕されました。

東京三菱銀行でもベテラン女性社員(今は派遣契約)が数億円を横領、そーいえば、チリのアニータさんに貢いだ男性も、青森県住宅供給公社に勤めていた準公務員で、横領額はなんと数十億円。

こういう“億の単位のお金の横領”、わかんないようでわかります。


私も昔、金融機関に勤めていた頃は、億の単位のお金を毎日「計算」してました。

億の現金は見たことないけれど、エクセルと電卓で計算するお金の単位は、大半が“億円”の単位でした。

こーゆーのを毎日毎日、あっちの口座からこっちの口座に動かして、しかも、だーれもそれをきちんとチェックしていないことを、それを担当してる本人はわかりすぎるくらいわかってます。


あんな仕組みでは、悪いことする人が一定比率で現れるのはとても自然だと思います。麻痺しちゃいますから、感覚が。

毎日いじくってる数億円単位のお金と、自分の給与口座に振り込まれる 20万円というお金が、バランスとれてないんだよね。そして、「こんなにあるんだから、ちょっとくらい」みたいな気になっちゃう。

そこでタイミングよく(?)、離婚で慰謝料が必要になったり、ギャンブルにはまってしまったり、キャバクラで気に入ったお姉ちゃんに「ねえねえアレ買って」みたいに言われたら・・・・ねぇ。


そういうのを防ぐのは、不正防止・発見の仕組みです。

大手の都市銀行では、人事異動が発令されてから新任地に移るまで、短い銀行だと 3日です。

また、定期的に強制的な有給休暇をとらされます。

不正をしている人が、それを隠すヒマを与えられずに、新担当者に仕事を引き継ぐためです。

もしくは、顧客からの問い合わせの電話を握りつぶせなくするためです。


そういう知恵が昔から民間の銀行にはありました。

そうしないと「必ず横領がありうる」からです。

だからこれまで民間銀行で横領をするのは、異動や転勤のない女性行員が大半だったのです。

(ただし最近は金融取引が複雑になってきたため、大手銀行でも横領の手法はかなり高度化してます)


★★★


多額の横領が起こりやすいのは、常に内部横領に警戒してる大手銀行ではなく、上のように準公務員とか組合とか、いわゆる「甘い」団体ばかりです。

発覚してないだけで、もっともっとあるだろうと思います。

学校、各種公団に財団法人、特定郵便局、その他の公的な団体や、職業組合、町内会、地方の信金信組、労組の活動費などなど。

具体的な用途もないのに律儀に毎月“会費”を集め、不必要に多額な貯金を抱えてる団体って、たくさんあるんだよね。

しかもほとんど引き出しをしないから、担当者は「少しくらい猫ババしてもバレない」と思ってしまいます。


しかも、こういうところは転勤もないし、異動辞令も、チェック機能もない。一生バレない人も、一定数いるんでしょう。

すごいよね、億を横領して一生ばれない。

そんな人、いないと思います? ぜーったい、いると思うよ。


★★★


このブログ読んでいる人で、マンションに住んでいる人も多いでしょう。

いくつかのマンションの管理組合の積み立て費用も、横領されてる可能性があると思います。

特に、長く同じ人が“奇特にも自分から管理組合長を引き受けてくれてる”ようなマンションは要注意です。


・1人の処理で、億のお金を自分の口座に移せる。
・誰も、その担当者のやっていることをチェックしてない。
・そういう状態で 20年過ぎている・・・


いいかげん、あんまり適当な仕組みのところに、億の単位のお金をゆだねるシステムはやめた方がいいと思うです。


ちなみにニュースで横領がバレて逮捕された場合「 200万円を横領した疑いで逮捕」とか報じられますが、あれは実際の横領総額ではありません。

逮捕状は「とりあえず証明できた額のみ」で出されます。


たとえ億円の横領をしていても、その額を(何年も前の記録を確認して)確定させるのには時間がかかります。

だから、今月と先月の横領分だけでまずは逮捕状を請求し、捕まえてから調べるんです。

なので、「数百万円の横領」で逮捕された人でも、実は億円単位の横領をしてたりします。

大変なことだよ。



 ではまた明日!


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