完全なる休日

自然に起きる。目覚ましもならない。電話もならない。ピンポンもならない。自然に目覚める。まずは、これでないと「完全な休日」は始まらない。

そして天気がいい。暑くも寒くもない。時間は朝の9時〜10時の間。カーテンの隙間から水色の空と、太陽の光が見える。お布団のさわさわ感を十分に楽しんでから、ベッドを降りる。

とりあえず冷たいコーヒーに牛乳をたっぷりいれたミルクコーヒーを一口。

テレビもつけない。パソコンもつけない。ぼーっと20分ほど惚ける。


それからお風呂を沸かす。誰とも口を聞かず、テレビの音もない。そのままお風呂に入る。湯船でのんびりする。リラックス系バスソルトを沈めて、バス枕に頭を委ねる。何にも考えない。何にも。


お風呂から上がって、麻のロングローブでくつろぐ。よく冷えた白ワインを入れる。空腹に白ワインが染み渡る。ミネラルウオーターのコップも持ってきて、酔いすぎないように交互に口に含む。おつまみは要らない。

お気に入りの雪肌精とボディローションをつけて、爪を切る。手も足も。そしてまた惚ける。


今日「やらねばならない」ことは、何ひとつない。やりたいこと、もひとつもない。予定のない休日。

ナン系のパンをちょっとだけ暖めて、クリームチーズをたっぷりのせて食す。薫り高いコーヒーを一口だけストレートで、その後はたっぷりの牛乳を混ぜて飲む。テレビはまだつけない。パソコンもまだつけない。このふたつの機械は「完全なる休日」を最もたやすく壊してしまう怖い機械だ。静かに、ひとりで、ゆっくりと朝ご飯を食べる。


たまっている郵便物を見る。くだらないDM、いつもなら封も切らない郵便物をひとつひとつ、ゆっくりと開封して、特に何も考えず、捨てたりその辺に保存したりする。そうこうしているうちに髪の毛が半分乾く。

有機綿・生成のがぶっとした靴下をはく。体を締め付けない、自然素材のたっぷり系の洋服に着替える。さわやか系のコロンを胸と手首に一吹き。

それからDVDを選ぶ。撮り貯めて、いつ見ることができるのか?と思っていたドラマの中から、あまり深刻すぎないメロドラマ、チープでほんわかして、性善説で世の中が回っているという幻想を確信に変えてくれるタイプのドラマを選ぶ。

くだらない番組を一瞬でも見なくていいように、注意深くDVDとテレビのスイッチを入れる。

そしてしばし、ドラマと現実を重ね合わせながら妄想の世界にふけり、「んなことあるわけないだろ」というつっこみを、自分が自分に入れてしまわないよう気を付けながら、ドラマを見終わる。

★★★

おそばをゆでる。お昼ご飯ね。お気に入りのおそば。鴨肉をローストして、ネギと一緒に食べる。冷たいおそばがいい。輪島の塗りのきれいな、それでいてモダンなデザインのそばちょこ。職人さんの体の動きが感じられるようなお皿。竹のすのこ。ここでお酒は冷酒に変更。最初に鴨肉にネギを包んでおつまみに食べる。最後にそばを一気にすべりこませる。おいしい・・・


雑誌か、本か、アルバムか・・・宮沢りえが貴乃花とつきあっていた時に購入したという、巨大なふかふかのソファに体を半分以上沈めて、なんの役にも立たない何かを鑑賞する。それを見ながら、いろんなことを考える。考えたことをメモる。夜にブログに書きたいことが、でてきたりもする。ふむふむ、している間に眠くなる。酔いもまわっている。ソファに小さなブランケットをひろげて、そのままお昼寝。

1時間後、「自然に」目が覚める。

洗濯と掃除と、書類の片づけをする。家がきれいになると嬉しい。それから町にでる。黒のTシャツ、黒のテロテロパンツ。全身真っ黒の洋服を着ることが、ちきりんは多い。そこに、買ってから一度も使っていないどこかの国のエスニックな布を首に巻く。黒に明るい色が映える。美容師かアーティストみたいな自分が気に入ってる。町にでる。あるいて15分のデパートを含むショッピングセンター。要らないけれど、楽しいモノをたくさん売っている。適当に、買うものも、欲しいモノもない店を、目的なく見て回る。もう何も欲しいと思うものはない。

最後にデパ地下で、産地直送の「日本一おいしいよ」と言われる生タラコ、新鮮なお刺身と、お総菜をいくつか買う。今日は料理をする気はない。簡単に食べられるものがいい。ご飯だけ、家に帰ってから炊いてみる。お米をとぐ時のしゃりしゃりという音が、ちきりんはとても好きだ。

ニュースをみながら、夕食を始める。ニュースが終わって、食事も終わってから、大事な人に電話をして、お互いに楽しく生きていることを確認する。つまらない社会事件について、愚にもつかない意見を交換して、切る。

シャワーだけ浴びて・・・また気持ちの良いパジャマに着替える。天井の明かりは付けず、薄暗い中でラム酒を片手に、ブログをちょこっと更新。ソリティアを15分。メールは開かない。そして、眠る。

★★★



これが、ちきりんの考える「完全なる休日」


今年は夏前に、一度だけ。


せめて1ヶ月に一度は、完全なる休日を楽しみたい。


妄想ちきりん


ではまた明日。