アメリカに来ると、どこの国の人がどんな職業についているか、というのが、かなり偏っているなあ、と思います。
もちろん、いわゆる「大学でて就職」というなら、(一応)民族的ルーツにかかわらず、学歴とか能力によって分布する“はず”で、そうではなくて、ここでは、「アメリカで通用するアカデミック、プロフェッショナルなクレジットを全く持たずに、アメリカに移住してきた人」の職業分布です。←ううむ、カタカナ多いな。
ええっと「米国社会で通用する学歴、職歴、資格を全く持たずに、米国に移住してきた人」ですね。
★★★
(1)タクシードライバー(NYなど大都市ね)
アジア人っていないですね。南米の人もあまり会わない。多いのは、ロシア系、その周辺の国、東欧の小国、中東系などの人が多いと思います。英語ネイティブの人なんて、まず会わない。
(2)ホテルの掃除
一番多いのが、南米だと思います。次が中国人。英語ネイティブの人も、地方にいくと増えます。
(3)洗濯屋
独占?っていうくらい韓国語の人が多いです。
(4)デリ、タバコ屋
韓国の人が多いですね。あと中国系もあります。ネイティブではアフリカン・アメリカンの方になります。
(5)アパートの大家、レストラン経営者
この辺でようやく日本語の人、登場です。もちろん、規模が大きくなれば、移住者系でない人の仕事です。このあたりからがボーダーなんだと思う。アメリカ市民として教育された人の職業と。
★★★
いずれも、まともなリサーチを経ていない(not fact base)、超ちきりん個人経験値的なお話です。念のため。
★★★
さて、(1)〜(5)の発展段階説。
(1)は、常用雇用ではないんですよね。NYのイエローキャブ。歩合です。一日幾らでイエローキャブを借りる。んで、その日の料金は、その賃料を除いてすべて収入です。やっぱり雇用されるってのは、それなりに壁が高いんだと思う。だからまずはここからスタート。
(2)は、一応、常用雇用です。ホテルに雇われています。ちきりんが定宿にしているNYのあるホテルは、ホテル自体のオーナーがコロコロ替わるんですが、そのたびに、掃除の方の言葉が“スペイン語”→“中国語”→“スペイン語”とか変わって非常におもしろい。たぶん、支配人も替わり、House keeping managerも替わり、一気に雇われる人も替わるんだと思う。
(3)これは、一応、不動産の賃貸をすることが必要です。もしくは、洗濯屋の設備全体を借りて、運営しているのかもしれない。雇用されるということより、壁が高いです。それなりの信用を築いてないと貸してもらえないから。
誰かが言っていたのは、「韓国人の洗濯屋がすごい洗濯がうまいので、他の民族がやってる洗濯屋が生き残れないのだ」と言っていた。本当かどうか不明。でも、異常に比率高いと思います、アンニョンハセヨの洗濯屋さん。やっぱ、基本的に細かい仕事の得意なのは、日本人と韓国人で、んで、日本人は洗濯屋をやらないから、こうなってるってことかなと思ってます。
(4)これも不動産の賃貸か、デリの中でイチコーナーを借り上げることが必要。これはねえ、韓国人は(日本人、中国人と違って)、中華も韓国料理も、日本料理もカバーする、ってのが大きい気がする。日本人がデリやると、なぜか日本料理ばっかやる。中国人もキムチ食べないあるよ、と。(ほんとかい??)
韓国人はカバレッジを広くやるので流行るのよね。そのうち寿司も餃子も韓国料理だ、みたいな感じになるのではないかしら。彼らのこだわりのなさが効いているのかもしれない。
(5)このあたりになると、かなりの「上流階級 of 移住者」です。不動産を保有する人もいるし、借りるにしても、かなり大きなスペースを借りる。それなりの貯蓄がないとできないビジネスです。あと、アジア料理の中で、日本料理だけが「ブランド・プレミアム」がついているんですよね。寿司、神戸ビーフ、Japanese cuisineは、フレンチと対抗する高級料理なんで、中華料理、韓国料理とは一線を画すのに成功してます。「日本は高い国である」というアメリカ人のパーセプション(=思いこみ)を逆手にとったマーケティングですね。
というわけで、不動産が借りられないうちは、歩合系の仕事をするしかないんだと思う。タクシードライバーの他に、前に書いた「露店」もあります。あれもタクシーと同じ仕組みの商売です。商材一切を一日幾らで借りて、セントラルパークの前に一日たってて、売れた分の利益だけを持ち帰れる。最近、アジアの顔の人も出てきました。
他にも一部、工場で働く人もいます。これは(2)のバリエーション。一応、雇用されてる。ホテルの清掃と同様、社会保険とかはカバーされてないと思いますが。
★★★
話変わりますが、日本でも夜になると商店街とか繁華街で、アクセサリーなどの露店を出している人がいますが、あれも同じ仕組みです。日本であれをやっている人は、大半が「ちょこちょこお小遣いを稼ぎながら、世界放浪」をしているバックパッカー達です。移住者ではないです。(日本では移住者は別の職業ですね・・)
アクセサリー露店やってる人は、国籍的には(これも、ちきりん経験的に)、イスラエルの人と北欧(スウェーデン等々)の人で7割とかじゃないかしら。フランス人だのイギリス人だのは余りいないと思うな。北欧とイスラエルの人はやたらと世界旅行が好きなのよね。しかも、日本みたいな辺境なところまでやってくる。
★★★
なんでか?
(1)北欧の人たち・・・基本的に北欧ってのは、つまんない国なんです。なんたって、お日様さえ出ないんだもんな、まともに。フィヨルドとかオーロラとか、若者が毎日見ててもしゃーない。
産業もなければエンターテイメントもない。すごい高額の税金をかけて高福祉国。元気な人、若い人に極めてつまらない国、一方で、困っている人、シニアな方に極めて住みやすい国、なんです。だから、「元気な」若者の多くが放浪か留学、他国で働くという選択肢を選びます。
多くは、欧州内の旅行をしているのだけど、一部はアジアまでやってきたりするのです。アジアの混沌としたエネルギーの興奮に引かれるんだと思う。自分の国のエネルギーレベルの低さと比べて。ちきりんは「混沌好き」なんで、北欧にいって、アジアに行くと「あ〜アジアに生まれてよかった!」と思います。
(2)イスラエルの方々・・・この国はねえ・・・すごい抑圧されてるわけです。女性も含め全員に兵役があり、基本的に「常時、緊張状態」にあります。そして極めて民族主義的な思想を持たざるを得ない。あの国は、すべての家に「地下・核シェルターがある」んです。
そういう生活の抑圧感から逃れるように、若者は「兵役後」で「結婚&ちゃんとした就職前」に、数年の旅に出る。あそこで一生ってのは、考えられない。だけど、あの土地に住むこと自体が国民の義務である。(パレスチナとの領土問題に勝つためには、陣地の椅子取り合戦が必要で、「あそこに住む」ってのがイスラエル国民の大事な責務。)んで、せめて人生の一時期だけでも、広い世界を見たい!ということになるんだと思う。
★★★
ちきりんが一番最初に、民族と職業の問題に気が付いたのは、十代の終わりにイギリスやヨーロッパを放浪した時です。イギリスでファーストフードばっかり食べていて気が付いた。「なんで白人がいないの?」って。そして、フランスでゴミ収集車を見て驚いた。「誰もフランス人に見えないよ」って。
「すべての職業を日本人がやっている国、ニッポン」っていうのが、普通ではなく特殊なのだと知ったのでありました。
おもしろいと思うのは、上に書いた(1)〜(5)のヒエラルキーが、それぞれの人の「元の国」の経済力格差を反映しているということです。アメリカは世界中から移住者がやってくるから、こういう「レイヤー」が見える。ヨーロッパだと、ドイツはトルコ人とか、偏っているから、ここまで違いが鮮明にならない。
★★★
アメリカのホテルに泊まっていて「こんにちは」という掃除の人がいない理由はいくつかあって、
A)今はもう日本から「経済的な理由で」移住者としてアメリカにわたるという人がいない。
B)日本で受けた教育がそのままアメリカで通用する。
C)日本語が話せる、ということ自体が、売れるスキルとして認められる。
D)日本のカルチャー自体が、プレミアムカルチャーとして認識されている。
などがあると思います。
だから、タクシードライバーになる必要がない。寿司職人とか空手の先生とか、うまく行けば日本語教えるとか、日系企業や日本と取引したい企業に雇ってもらえる。
こうやって、元の国の経済力→移住者の経済力、という影響力が働いているように思います。
ということでした。
ではでは