雑感〜出張の地より〜

東証の西室社長。前は東芝の社長だった方です。御年66才くらいかな。元気だね〜。しっかりされてますね〜。東証は相変わらず笑えるけど。(取引を個別銘柄で一日1時間に制限するって、何さ??証券取引所の体をなしてないです。)

この西室さん、ちきりん一度会ったことあります。といっても面識があるわけではなく、西室さんが出られていた会議に(テーブルではなく、事務方控え椅子みたいな場所に)座ってたことが一度あるんです。経団連の会議だったと思う。大きな楕円形のテーブルに、経団連の主要企業であるメーカーのトップと、反対側にはずらりと大手銀行のトップが座り、いろいろ話し合うような会議だった。

まあいろんな話が出ていて、大半は「儲かりまっか」「ぼちぼちでんな」的などーでもいい話だったのだが、最後の方で、西室さんが発言した内容をちきりんははっきり覚えている。というか、この会議で覚えているのは、この西室氏の発言だけだ。

当時、理系の学生が銀行に就職し始めていた時だった。所謂“文系就職”ってやつね。今まで理系学生を教授推薦の形で確実に確保していたメーカーは、人材採用に苦労していた。今でもだが、メーカーの給与と銀行の給与はものすごく格差があった。(今は銀行が下がったから、少しましになっているかも。)

西室氏の発言は「おかしいではないですか。あなた達の業界には競争がない。これが金利ですといって規制で守られた金利を要求する。その金利で、我々の倍の給与を払って、我々の競争力の源泉である優秀な理系の学生を横取りしていく。あなた達が高い給与を餌に学生をもっていけるのは、あなた達の仕事にそれだけの価値があるからなのか。」って。

これは、この手の会議では、相当の発言です。普通、こういう激しい言い方はしない。エライ人が、ある種公的な会議で。だから、ちきりんはこの発言をすごく印象深く覚えている。西室氏はすごく怒っていたと思う。それはビビッドに伝わった。とてもシンシアな発言だった。素直な正直な怒りだった。


ちきりんは二つのことを感じました。
「メーカーって、銀行に怒ってるんだ・・」
「西室さんてエライ人だ・・」


西室さんの口調からは、人材採用だけではなく、他の面でも根強い銀行への怒りがあることがよくわかった。

なんの公からの庇護も受けず、爪に火をともすようにコスト削減して国際競争に揉まれ、中国やらに追い上げられて給与もあげられず、そのあげくに学生から「かっこわるい安月給の仕事」と逃げられる。当時、大蔵省の護送船団の元で甘アマした仕事をして余剰利益をむさぼっていた銀行。

「なんかおかしいだろ?」という根本的な疑問が、そこにあったと思います。「なんか、おかしいんだ!」ちきりんが最初にそう感じたのは、あの発言からだったと思う。

そしてその「なんかおかしい」ことは、その後、金融ビッグバンとバブル崩壊によって顕在化する。でも、その「なんかおかしい」事へのクンクン感が、当時の西室氏をはじめメーカーの方には当時からビビッドに存在していたのだと思う。そう、「なんかおかしい」ことというのは、何らか臭っているものなのだ、と思う。


ああいう会議で、歯に衣着せぬものいいをする、ってのは大物だと思いました。もちろん他の出席者も名だたる大企業の経営者なんですけどね。毒にも薬にもならないことしか言わないトップとはひと味もふた味も違いました。民間から東証の社長になった時(昔は東証の社長というかトップは大蔵省事務次官の独占ポストだった。)、「ああ、この人が」と思いました。

活躍して欲しいです。でも一方で、こんな年の人が未だに意気軒昂では・・・若い人はニートにでもなるしかないか、って感じでしょうか。お年の方で元気な方多い・・・


ではまた明日。


とある古都のホテルにて