続)天皇制の議論の在り方

天皇制に関して、女系天皇の是非云々ということでアレコレ話題になっているので、ちきりんも考えてみました。

まずは何が「解くべき課題」なのか?、あらためて考えてみましょう。


最初の課題は、
(1)父系による万世一系の天皇制を維持すべきか? という問題です。

「そんなん、どうでもいいじゃん」という意見の人もいるんでしょう。

これが「どうでもいい」なら、話は簡単です。皇室典範を変え、女性&女系天皇を認めてしまえばよいだけ。

ではこれが Yes(=父系による万世一系は絶対守る必要がある!)なら、次の課題はなんでしょう?


それは (2)父系天皇制維持は、今の制度で維持可能なのか? という問いですよね。

経済的な理由で子供の数を制限する必要は(天皇家には)ないと思うけど、今の男性皇族の少なさを考えると、次の世代には男子の皇位継承者がいなくなっちゃうんじゃないの?

秋篠宮ご夫妻のガンバリにより、とりあえず問題は一世代分だけは先送りされそうですが、「現在の条件下で父系原則を維持することは、早晩不可能になる」でしょう。

たとえ秋篠宮家に(予定通り!?)男児がお生まれになっても、その子が成人してから男子を持てるかどうか、誰にもわからない。

今だって浩宮様しか男児がいなかったら大ピンチに陥ってたわけで、いくら医学が進んでも一人じゃヤバイはずなんです。

秋篠宮のご決断は、「とりあえず今国会での皇室典範改正を阻止」する効果はあるものの、それ以上のものではありません。 ということで、この二つ目の問いへの答はたぶん No でしょう。


じゃあ、その次に考えるべきことは?
それは、 (3)では、どのような方法で、制度維持を可能に(転換)するのか? という選択問題です。

側室制度はさすがに無理っぽいけど、宮家を拡大(昔の宮家を戻す)とか、旧宮家から父系原則に沿った人を養子とする制度とか、制度的な解決策だけでもいろいろあります。

その他に科学で解決しようというなら産み分け技術はもちろん、「天皇と皇后の卵子と精子を採取して冷凍保存しておく」とか、それこそ技術大国ニッポンの採りうる方法論はそれなりにあるんでしょう。


というわけで、この問題に関する議論には、

(1)父系天皇制維持の必要性ありやなしや
(2)現在の制度の限界ありやなしや
(3)具体的解決の方法論

という3つのステップがあるわけですね。


ちなみに、「女系天皇」を認めるか?という話は、(1)に関わる議論です。つまり根本的な問題です。

ただし、「女性天皇」を認めるか?というのは(3)の話です。

女性天皇というのは、「今は男性で即位できる人がいないから、ピンチヒッターで天皇をやってね!」という立場であって、「長子が女性だったから、当然の権利として即位」したわけではありません。

彼女たちは、天皇である間は結婚も出産もしないという不文律だけど厳然たる縛りのもとに、「女系天皇を認めないという制度を維持するために、女性天皇を認める」という運用がされてきたわけです。


今回の議論がぐちゃぐちゃなのは、(1)の根本的な議論が全く行われないまま、(3)の方法論のひとつとして「女性でもいい」「よくない」的な議論が始まってしまったことなんじゃないかな。



ではまた明日・・・


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