ちきりんは昔から紙にエンピツでいろいろ文章を書いていました。
その雑文が友達の間で回覧されたりしていたので、“こういうこと”自体は昔からやっていました。
ブログを書いてみようと思ったのは「流行っているらしいから」です。 流行ってるってことは何らか流行る理由があるわけで、それって何?という興味もありました。
実際やってみて、なんでブログがここまで流行っているのか、と考えてみたのですが、 ひとつのポイントは「コミニケーションの独裁性」と「独裁者を信奉する声」が「バランスよく維持できる」という点、じゃないかなと思います。
もちろん、よく言われている「HPに比べて簡単」「他者とつながれる」という理由も否定しませんが、「簡単だから流行る」ってのは論理として変です。簡単でもニーズのないものは流行らないでしょ。
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ここでいう「コミニケーション独裁」とは、自分の声、意見を、他者の意見、声よりも大きく目立たせることが可能、すなわち、「自分の発言を、他者の発言より重く位置づけることが可能」ということです。
たとえば巨大掲示板なんかでは、自分のいいたい方向に議論を向けるとか、自分の意見の方に結論を導く、みたいな「議論のコントロール」が不可能といえるほど難しいですよね。
常にいろんな方向へ進む力が働き、“荒らし”と呼ばれる人たちが意図を持って混乱させる。
あそこではコミニケーションにおいて、究極的な民主制が維持されており、「烏合政治ってのは、こういうことね」とよくわかる。
なんのルールもないと、生産的に何かを達成するのはすごく難しい。
自分でHPを開設しても他者の反応を得るには、結局は掲示板的な機能を使う必要があり、その中では、民主的なコミニケーションルールが適用されてしまう。
これだと、コミニケーションの主導権争いにおいて、HPオーナーが有利にはならない。
その点ブログは、「書いている本人がコミニケーション独裁」を維持でき、同時に「信奉者だが、決して自分を脅かさない人たち」からの反応を、安心して集めることができる。これが流行っている理由かな、と思っています。
★★★
このブログでも、コメントを寄せてくださる方は、基本的にこのブログをおもしろいと思ってくださる方でしょう。
しかし「コメントではコミニケーションの主導権はとれない」仕組みになっているから、コミニケーション独裁者にとっては、「自分の信奉者ではあるが、反乱を起こして、自分の地位を脅かしたりは決してしない人たち」に囲まれることが可能になる。
これがたぶん「誰かに自分を理解してもらいたいけど、私の世界は他人に邪魔されたくない」という傾向のある現代人の志向にあっている。んで、流行っているんじゃないかと、思っています。
ちきりんも他の方のブログにコメントする時があります。
その際は反対に、自分はそのブログの独裁者の信奉者にされてしまう・なってしまう・にしかなりえない・と、よく意識します。
そのブログはあくまで、その人の「独裁ワールド」であり、神聖にして不可侵、って感じです。
たまに「気にいらねーよ」というコメントをいただくこともありますが、そういう時も独裁者がとりうるいくつかオプションがあり、削除もできるし無視もできる。
そして、気のない返事をするとか、真正面から議論にのる、という方法もあるでしょう。
大事なことは、これらの選択肢のどれを選ぶかという全権を、コミニケーション独裁者が保有しているという点です。
別のアプローチ。
年功序列のメリット、という話。日本企業の年功序列制度の下では「部下が自分より早く出世する」ということが制度的に起こりません。
若い人の出世を早める場合でも、直接的な逆転をさけ、部署を変えて早期昇進をさせるなど、気を遣う会社が多いですよね。
「きわめて例外的な場合を除き、そーゆーことしません」という年功序列維持組織も、まだたくさんある。
これは、組織の秩序維持に役立ちます。
なぜなら、「部下が自分の立場を脅かすことはない」からこそ、部下を「育てよう」「かわいがろう」という気になるわけです。
いつ、この部下が自分の上司になるかわかんね〜と思ったら、人はそんなに優しくなれません。
ブログオーナーも同じ。コメントをくれる人が自分より影響力を持つことがあり得ない仕組みが保たれているから、どんなコメントにも余裕をもって回答できる。非常に巧くできた仕組みだと思います。
ただしコミュニケーション能力を高めるにはブログはイマイチかも。
自分の主張を通したければ、どういうものの言い方、論理での話し方をしなければならないのか?ということは、リアルなコミニケーション、すなわち、コミニケーションの民主制が保たれている厳しい現場でないと鍛えられない、と思うのです。
自分の言いたいことだけを言い放ち、気に入ったコメントだけとコミニケーションできるブログは、「気持ちいいけど」発信者を「甘やかす」ツールだよね、と思います。
ばい