「人生3×3」説

今日は、ちきりんが学生などから就職相談を受けた時に説明に使っている「人生3×3分割表」をご紹介します。

最近よく聞かれる質問は、「仕事と家庭は両立できますか?」とか「ワークライフバランスは?」というものなのですが、この表を使うと説明が簡単になります。


まずは人生の時間を、自分で人生を決め始める20歳から、平均寿命の80歳くらいまでの「20年ごとの3つ」に分けます。また、それらの時間をどう使うかを「仕事」「趣味」「家庭」の3つにわけます。趣味とは個人の時間です。

そして、この3つの20年という時間を、仕事、趣味、家庭の3つにどう配分するか、と考えるのです。(時間軸は10年区切りで使ってもよいと思います。)


たとえば下記は、「猛烈サラリーマン」の人生です。ごく若い頃は少しは趣味もあったけど、その後は仕事だけの人生。家庭があってもこういう人はいて、自営業ならいいのですが、会社員の場合は定年で「仕事」が消えると「残りの20年、何をやっていいかわからなくなる」というパターンです。


次は“家事に協力的な共働き夫”です。若い頃は仕事も趣味もと充実した日々を送り、家庭や子供ができたら個人の趣味を諦め、仕事もセーブしながら育児や家事を分担。定年後は家族の時間と趣味を楽む、というパターンです。

子供が小さい間は自分の趣味に使える時間はごく限定的で、一人で好きに旅行するとか、日曜日に部屋にこもって趣味に没頭するのは難しくなるでしょう。


一方、世の中には家庭を持たず、下記のように仕事は最低限で、人生のほぼすべてを個人の趣味嗜好のために使う人もいます。趣味嗜好は人により、だらだらのんびり過ごす人もいれば、ボランティア活動や登山などの趣味にアクティブに活動する人もいます。


そして最後が働くお母さん。これを上記の「家事に協力的な夫」と比べてみてください。上記には子育て時期にも「趣味」という個人の時間が少しは確保されていますが、お母さんの方にはこの時期、ピンクの部分はありません。

相当程度夫が協力してくれても、やっぱり女性の負担は膨大です。ワーキングマザーでは、「仕事と家庭の両立」はできるけれど、“自分の時間”は土日も含めて皆無に近いという人も多いのです。


ちきりんがこの表で伝えたいことは、人生の時間の使い方には“仕事、趣味、家庭”の3つがあり、個々人には「人生のその時期(特定の時期には)、この3つのうちどれを選ぶかという選択権」が与えられている、ということです。

3つの中からひとつだけを選ぶと
・仕事のみを選ぶ→猛烈サラリーマン
・家庭のみを選ぶ→大家族同居の専業主婦(主夫)
・個人の趣味のみを選ぶ→ニート、大金持ちの息子など
となり、


ふたつを選べば
・仕事+家庭→キャリアウーマン、共働きで家事をきちんと分担する夫
・家庭+趣味→優雅なセレブ主婦
・仕事+個人→ディンクス夫婦、独身貴族
となります。


しかし同時期に「3つとも選ぶ」のは、誰にとってもおそらく非常に大変で、本人が才能に恵まれることはもちろん、その他の様々な条件や幸運に恵まれていないと不可能でしょう。

つまり、人生設計とは「その時、その時で、仕事、家庭、趣味の中から、最大ふたつを選ぶ」という選択であり、反対からみれば「どれかひとつを諦める」という選択なのです。

なので、学生から「仕事と家庭を両立できますか?」と問われた時、ちきりんは「できますよ。その代わり個人の時間は(その期間中は)もてないことも覚悟する必要があるかもね」と答えています。

説明的に答えれば、「あなたは今、“両立できるか、できないか”と尋ねたけれど、実はその質問は、できるできないの質問ではなく、“あなたはそのふたつを選びますか?”という質問なんですよ」ということです。


時々自分の人生の残り期間を横軸にとりながら、この3つのバランスを調整していくのも悪くないかもしれません。

同時に3つ選ぶのは難しくても、時期をずらせば全部を楽しむことも可能なので、「次の 10年はどのふたつにするか」って考えればいいんです。



ではでは


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