目の見える人生

ちきりんのお気に入り番組「ニュースの真相」で、旧ユーゴの映画監督のインタビューをやっていました。監督の名前は、エミール・クストリッツァ監督、「アンダーグラウンド」という映画が今、話題のようです。


彼曰く、「アメリカがやっていることは、戦争も侵略もすべて、自分たちの生活を豊かにすることが目的だ。非抑圧民族の解放でも、民主主義の普及でもない。それらは、利用された建前の理由にすぎない。」

「しかし、ローマ帝国時代にはローマも同じことをやっていた」


なんか、“神の視点”みたいなとこから語っていて、すごいなと思いました。

ローマ帝国も、オスマントルコも、清も、当時の世界の他の地域の人からは、今のアメリカと同じように見られていたってことね。今と違ってテレビとかないから、情報は入りにくいけど。

だとすると、何千年か何百年かたつとアメリカは、ローマ帝国のように認識されるのかしら。現代におけるローマ帝国のイメージって、別に悪くないでしょ。すばらしい遺跡やそこから生まれた文化や芸術に、世界中の人々が押し寄せてシャッターを押しまくるってる。そこに集まる人々には、ローマ帝国が行ったであろう、強大な力に任せての横暴や、自己中心的な行動の数々への嫌悪感とかは、ほとんどないんじゃないかな。

アメリカに対する感情も、そうなるのだろうか?

コロッセオのかわりに、アメリカ帝国の遺跡として残るものは、なんだろう?高性能の大陸縦断ミサイルとか、ウォールストリートとか?


おもしろいな、と思える視点でありました。

★★★

この「ニュースの真相」という番組、地上波でもやるべきだと思うけどずうっとCS放送のみです。視聴率は問題ないと思うけど、ヤバくて放映できない回もあるのかもしれません。(スポンサーに気を遣わなくていいので、とりあげることができるトピックもあるので。)

もうひとつ、同じニュースで別の日のゲスト。村岡元官房長官(歯科医師会から橋本派への献金問題で一人だけ逮捕され、この前無罪になった人)もでてました。この番組はひとりがたっぷり40分くらいしゃべるのでね、真実がかなり詳しくわかります。

この村岡元官房長官の話を聞いた時は、政治と国家権力の裏パワーの恐ろしさにさすがのちきりんも震え上がりました。

この事件は、小泉政権誕生の裏にある「もうひとつの演目」って感じなんだけどね、華々しくスポットライトを受けるイベントの裏には、かならずこういうことがある、ということか。やっぱり、ちきりんは「三権分立」は信じない。

★★★

あと、この番組はひとりに40分も一人に話させるから、「アホ発見機」の役割も果たします。話を聞いていると、「アホやな、こいつ・・・」と思われる人も多数。おもしろいです。アホっていうのは頭の善し悪しではなくて、見えている範囲が狭い、ってことなんですけどね。

やっぱり見ていると「すくすく育った人」には見えてないものが、ぐちゃぐちゃの中でやってきた人には見えている、ということが多いのかも、と思う。

冒頭でとりあげた映画監督もおなじ。あの地域で大国と歴史に翻弄されているから、見えるものがある。


ちきりんは昔「直球投げたことないでしょ。変化球しか投げないでしょ」って言われたことがあって、なかなかよく(ちきりんという人を)表現したもんだ、と思いました。

ちきりんは純粋培養的に育った人の単純さに対して時に抑えがたい軽蔑を感じます。これはひがみなんですかね?いや、ちきりんだって客観的にはとても「整った土壌」で育ったわけですが。

苦労したことのない、心に葛藤を持ったことのない人の、単純な明るさは、アメリカという国の住人たちとシンクロするんです。


「前向きな人は下品だ。過去を振り返らないから、前向きでいられる。」


前にも書きましたが、バイクでサハラを横断した日本人冒険家の言葉です。(名前忘れちゃったよ)

これ、ちきりんは今まで聞いた中でもっとも洞察に富んだ言葉だと思ってる。


きれいに生きて、何も見えない人生ではなく、ぐちゃぐちゃに苦労しても「見えている」人生を歩みたい。

ちきりんが「きれいな世界」に欺瞞を感じ、アンダーグラウンドな世界に関心を持つのは、そちらこそが人間の本質を表していると思うから。人間のおもしろさも、すばらしさも、愛すべき点も、表ではなく裏にある、と思うから。それが見えなかったら、何も見えていないと同じじゃないかと、思うから。


ということで。

また明日