靖国神社・・・、8月15日に軽い気持ちで行ってみたら衝撃でした。
結構な人が来ていました。団体バスも何台も来ていたし、着物や浴衣姿の人もいました。
手と口を清めて、拝殿で「二拝二拍手一拝」
個人参拝も申し込めるんだけど、そこまでするのもなんだかな、と思ってぶらぶら歩いていると「遊就館」という資料館があったので入ってみました。
そして・・打ちのめされました。
★★★
遊就館、立派な建物です。入館料大人 800円ですが、かなり混んでます。
これだけの立派な施設を維持できるのは「さすが靖国」
ちきりんは 20年くらい前に中国の「盧溝橋博物館」と「南京虐殺博物館」を訪れた時、ふたつの博物館のあまりの「豪華さの違い」に驚愕しました。
前者は日本も認めてる事件だから、日本の支援ですごく立派な博物館が出来てるのに、後者に関しては、その当時、まだ貧しかった中国だけの資金で造られていたので、超みすぼらしい博物館だったんです。
で、その時、私は学びました。
「歴史系博物館」というのは、その「豪華さ度合い」が「支持者の立場」を如実に現すということを。
「権力者が認めた歴史」でないと、豪華な博物館は作れないのだよね。
というわけで靖国の場合、やはり「かなりエライ方々の支持を受けているんだな」という感じでした。
その後、館内へ。
広いです。
ゼロ戦とか実物展示があって映像資料室も複数あり、そこで 50分もの長い映画を見ました。
ドキュメント映画「私たちは忘れない」
内容は靖国神社が最初にできた時の由来から始まり、戊辰戦争で死んだ人を祀ったとか。そこから「大東亜戦争」の終わりまでの描き方が・・・そうか−、これが「かの有名な靖国史観」ってやつね、って感じです。
・アジア、アフリカ、南米は植民地候補地であり、つまりは「被支配エリア」なのに、そこから「支配者」になろうとする国がでるなんて、ありえね〜、という欧米の身勝手さが総ての元凶という論調。この考えがまずは貫かれます。
・次に「大東亜戦争」は、アジアが欧米列強に屈せず自主独立するための戦争であったと。日本がロシアに勝った時、アジアの国は皆歓喜したのだと。例の漫画家さんの主張ですね。
ちきりん的には最初の方は「まあそうね」でしたが、二番目は「まじ?」でした。こんなん中国や韓国の人が見たら怒るだよ、きっと。
そーいえば中国語と韓国語のパンフも売ってるんだけど(中国語と韓国語のパンフレットは)「日本人には売らない」って書いてあるんだよね。
なんじゃそれ。
もしかして違うことが書いてあるのかな??
いまどき韓国語や中国語ができる日本人だって少なくないのに。ちょっと謎なパンフでした。
あと、お土産屋さんも超充実。「突撃」とか「必勝」のはちまきやTシャツ。私は右翼じゃないんで、要らんけど、なるほどそういう人が来るのか、と思いました。
そして・・展示の最後のあたりは、「涙、涙、また涙」
も〜、涙なしには見られないです、あの展示。
最後の御前会議で、無条件降伏に唯一強硬に反対したのが阿南惟幾陸軍大将なんです。
彼は、「沖縄は失ったが、本土決戦に持ち込み少しでも有利な状況で終戦にもちこむべき」って主張したらしい。
おいおい。そんなことくらいで「少しでも有利な状況」なんかになるの??
いや、なるにしても、いったいそのために何人一般人が死なないといけないの?
やめてくれよ!!
です。
でも天皇は「今すぐ降伏する」と決めた。これが 8月 14日。
とはいえ阿南大将も別に自分のために本土決戦を主張したわけではないです。
何よりも「国体の護持」つまり「天皇制維持」が大事。最低でもそれだけは条件をつけて降伏したい。
だけど、今だと「無条件降伏」しかない。せめてほんのちょっとだけでも「頑張ってから」終戦にできないか。そして「なんとか天皇制を残したい!」ということですよね。
ちなみに阿南大将はこの日の夜に自決します。その際に書いた遺書。紙に墨で書いてあって、すごい血が染みている。
一死以テ大罪ヲ謝シ奉ル
昭和二十年八月十四日夜
陸軍大臣 阿南惟幾
神州不滅ヲ確信シツツ
これ読んで、涙が出て止まらなかった。
私はそもそも涙腺が弱いんです。映画でもすぐ泣くし、どこかにぶつかって怪我した、とかでもすぐ涙がでるんですけど。
「我が死を以て罪を償いたい」と。「奉る」ってんだから、お詫びの相手は天皇陛下ですね。
すると「謝っている内容」は、「戦争に負けたこと」だよね。「戦争をしたこと」ではない。私がふがいないから負けてしまって申し訳ない、ってことでしょうか。
直前の御前会議では「本土決戦を!」と言っていた人が、「我が身を以て償いたい」と。
つまり彼も、敗戦以外の道はないと理解していた。それでも「自分のせいで(負けたせいで)天皇制が消滅する」なんて耐えられなかった。
実際には天皇制は今でも残っているわけですが、当時はそんなことは想像できなかったのでしょう。
無条件降伏 = 国体変更、下手すると天皇も処刑される、と思ってたんだろうね。だから無条件降伏に反対した。
たとえ日本人が全員死んでも天皇制(神国ニッポン)を残すべきだと主張したのに、その「守るべき天皇自ら」が「もうやめましょう」と決断した。だって客観的にみてそれしかないでしょう?と。
そういう判断を天皇にさせてしまったことに、彼は自分の命を差し出すくらいではとても済まないという気持ちになったんでしょう。だから自決するしかない。
ところが最後にまた「神国が滅びないことを信じている」とか言う。
わかっているけど、国体が維持できないことはわかっているけど、「信じています」と言う。
だって「天皇制が守れないことをわかっていながら敗戦を受け入れた」などということは「あってはならないこと」だから。
彼の辞世の句は、
大君の深き恵に浴みし身は
言ひ遺こすへき片言もなし
東条英機氏も「天皇には罪はない」と言い、天皇は「すべては私に責任がある」と。
なんか、やっぱ「違う宗教」だと思います。
んで、この辺りで泣いているのは私くらいでしたが、次の部屋だと泣いている人が結構いました。
特攻隊に散った若い人たちの写真とか「母上様」へのお手紙の展示が始まるので。ホント切ないです。
悲しいです。
みんなすごい立派な顔しているのに、こんな若い時に、「無駄に」死にに行くなんて・・・(この「無駄に」ってのが「靖国史観」と違うとこです。)
「神風特攻隊」って昭和 19年の 10月から始まってるらしい。終戦の 1年くらい前、日本には何もなくなったタイミングだったんでしょうね。
展示の大半は日本語のみの表示ですが、一部英語もあり。また、来ている人に一部「欧米系の顔と言葉の人」あり。
でも靖国側には「世界に発信」という気持ちはないみたいです。英語の表示も極めて限定的だし、例の映画も日本語のみです。
資料館にたっぷり 2時間いて出てきたら・・・夕日の靖国拝殿が、なんか神々しく見えました。ひとつ間違うと右翼になってしまいそうな、そんな体験でありました。
また行こうと思います。一回だときちんと見られないくらい展示が充実してるんで。結構勉強になった。
- 作者:半藤 一利
- 発売日: 2009/06/10
- メディア: 文庫
- 作者:半藤 一利
- 発売日: 2009/06/10
- メディア: 文庫
おまけ。お土産屋に売っていた「ポスト小泉まんじゅう」・・・例の4人の顔が描いてあるまんじゅうです。どうなのかしらね・・。