おもしろすぎる雑誌

ちきりんの無駄遣い対象の一つが「雑誌」です。やたらと雑誌買います。しかも、ちょっと普通の人の買い方と違う気がする。普通はまあ、自分が関心のあることが書いてある雑誌を買うんだと思います。ちきりんもそういう買い方ももちろんします。が、もうひとつ別の関心をもって買う雑誌が多いです。


雑誌ってね、すごく「セグメント」を意識して作られたメディアなんです。ここまではっきりした商品って他にないと思う。例えばテレビも早朝は「シニアな方向け」、朝は「出勤前ビジネスマン向け」、10時からは「奥様向け」の番組と、時間帯によってターゲットの層を変えるんだけど、それはシームレスに連続的に変化するから、気をつけてないとわかりにくいの。新聞も、・日経新聞・一般紙・スポーツ新聞以外は大きな区別がないと思う。あんまし細かくわかれてないのです。

本だと、全くわかれてないですよね。結果論として「セカチューは若者に売れた」とか言う話があるだけ。

ところが雑誌は、すごい細かくターゲットの層をわけて、それにむけてファインチューニングして作られているのです。だから、「Aという層に向けて作られた雑誌」を読むと、Aという層のグループの人たちがどんな人たちで、今何に関心があって、どんな生活しているの?というのが超よくわかる。しかも、めちゃめちゃ細かい区分ごとに雑誌が存在しています。だから、そういうことを知りたいという目的で接するには、最適のメディアが、テレビでも映画でも本でもネットでもなく、雑誌なのです。

★★★

自分と全然関係ないのによく読む雑誌が、まずはシニア向けの雑誌。これは、かなり前からでています。


よくある特集は
・健康系
・終の棲家系
・夫婦関係系
・お金系
・生き甲斐系
でしょうか。


健康系は、このターゲット独特。年をとってから成りやすくなる病気とか、老眼その他の加齢による体の変化に対する特集とかね。終の棲家系も多いです。一戸建てを売って都心のマンションを買うべきか、息子夫婦に声をかけて二世帯住宅にすべきか、とか、「成功事例集」とか「先輩の失敗例」とかね。

夫婦関係編では、圧倒的に熟年離婚特集が多い。妻に捨てられないために、という特集。そうそう、この手の雑誌はほぼすべて「男性向け」です。女性シニアのは、別のくくり方での雑誌が発行されてるので。

お金系は退職金の運用方法とかね。「○才まで生きたら、いくらいる!」みたいな特集。若い人のマネー相談と違って、かなりシリアスです。

生き甲斐系も多いね。若い頃のスキルを活かして中国に技術指導に行っている人とか、シニア国際ボランティアはどーだとか。

★★★

何がおもしろいって、ですね。人間、結局そんなに幅広い友達はいないのだよね。自分の周りには自分に近い境遇や年齢や価値観の人ばっかりしかいない。だから、違う人たちの世界をのぞける雑誌がおもしろいってことです。このメディア以外だとここまで「自分と違う人」のことをビビッドに理解できない。

★★★

主婦系の雑誌もおもしろい。特集としては
・弁当、献立系
・節約、貯蓄系(節約系には「お金を掛けないプチリフォーム」とか「千円で作る夏の親子ウエア」とかを含みます。)

もうこれだけ、です。主婦って子育てってホント大変なのね、と思います。だって、弁当の作り方と今日のおかずのヒントと、節約方法と住宅購入の頭金の貯め方以外の「関心事」ってないってことなの?って感じです。

そして広告には「ダイエット」「消費者ローン」が圧倒的に多い。



う〜む、です。

★★★

ところが、「セレブ系の主婦の雑誌」だと全然ちゃいます。世界が違う。

「御義母様とお出かけする時の一押しスタイル」←服と靴や鞄を合わせてウン十万みたいなコーディネートです。
「たまには女性同士で。ドバイのリゾートホテルライフ」←近所に遊びに行くのとは違うと思うが・・・
「彼のステータスにあわせたアクセ選び」←開業医の集まりの場合は、とか、外資系セレブ系パーティにはこれ、みたいな・・・


う〜ん。

広告もさすがに消費者ローンは出してないし、ダイエットは「エステティックサロン」と言葉を換えます。

★★★

ここ数年多いのが、「中年男性のための雑誌」ね。「ちょい悪おやじ」等の言葉を生んだトレンドです。よく出てくる言葉が「隠れなんとか」です。「隠れ家レストラン」「隠れ家温泉旅館」「都会の隠れ家 一流ホテルの休日」とか。


「何をそんなに隠れたいのだ?」と思います。
「隠れてする何か」に対する憧れというか妄想、があると思う。



★★★

背景として、昔は、中年男性(30代後半〜50代までの男性)ってのは、消費者として全く力がなかった。子育てに住宅購入にと、すごいお金がかかるから自分のお小遣いは限られているし、仕事も最も大変な時期で、個人的な趣味に使う時間的余裕もない。だから雑誌もなかったんです。ビジネス誌とか、スポーツ新聞とか、一般週刊誌だけの十把一絡げの扱いを受けていた。


今は、
・晩婚化で、「給与=小遣い」の中年男性が増えてる。
・格差社会で、奥様に好きに使わせても、自分の小遣いもたっぷり、という層も増えている。
ということでしょう。


★★★


そして最近でてきた超笑える雑誌が「子育てパパ向け」の雑誌。


これね〜、ほんと笑えますよ。

特集として
「子供の職業適性を見分ける10の注目ポイント」
「起業家になれる子供の育て方」
「世界に通用する子育て ソニー流」
「嫁にいける娘、いけない娘」



も〜、ほんと笑かせてくれる。中吊り見てるだけで吹き出しそうです。最後のなんて、作ってる編集者の価値観丸出しで、ホント笑えるでしょう。「嫁にいく」っていう言葉もすごいし、「いける」「いけない」って・・・あんた・・・って感じです。「いく」「いかない」の選択肢の時代なんですけど、もう十年くらい前から・・・

★★★

これはね〜、子育てが「趣味」のひとつになってきた、ってことかなと思います。「車や釣りより子育てがおもしろい」とか。あとは、やたらとニートとか自宅に放火するような子供の事件が騒がれるので、売らんかなで不安を煽ってる気もする。自分の子をそうしないためには、自分は何をすればいいのか、と。まじめなセグメントなのかもしれない。



というわけで、最近は「教育パパ雑誌」ばっかり読んでいるちきりんです。ホントに笑えます。冗談みたいな記事満載です。400円でたっぷり2時間くらい笑えます。



んではまた