素人コメントの大きな価値

最近、団塊世代を特集したテレビ番組がやたらと多い。そんな番組のうちの一つ、NHKの番組でとてもおもしろいやりとりがあった。

視聴者参加型の番組で、視聴者の団塊世代がアンケートに回答を寄せていて、それに基づいて番組が議論、進行する。

ある人が「自分の人生を採点すると?」というアンケート問題に「ゼロ点に近い。結婚、離婚、子供なし、転勤8回、今は緑内障の内縁の妻と同居。こんな人生に誰がした?」と回答。

これに対して、NHKが会場に揃えていたパネラーの一人が「そりゃあ自分の責任でしょ?」と言ったんです。

で、このあと回答者本人と電話がつながったんだけど、そのパネラーのコメントに、本人がこう反論した。

「それはサラリーマンをしたことのない人の言葉ですよね」と。


なるほど!

この一言で、一気にNHKの番組の欠陥が明確になりました。

そもそも団塊問題とはサラリーマン問題なんです。

だって世の中は団塊の世代が60歳になるから騒いでいるわけではなく、団塊の世代が“定年”になるから騒いでいるわけで。

もし、現在の定年年齢が55歳なら、大騒ぎは5年前に起きていたし、定年が65歳なら大騒ぎは5年後に起きてたはず。

今年、この話がピークを迎えて騒がれているのは、今の定年が60歳だからで、今年から彼らがその年齢になるからです。

つまり、「なんで今年、やたらと団塊の世代が注目されるか?」というと「今年から大量定年だから」だってこと。

問題が「定年」なのであれば、自営業の人には関係ありません。

実際、今年60歳でも=団塊世代であっても、自営業の人は別に騒いでないでしょ。彼らはいきなり「さて、今年60だから隠居しよう!」とも思わない。

自営業の人が引退しようと思うのは、病気をして体力的に限界とか、一定量の資産がたまったとか、息子が継いでくれるから、別にやりたい趣味があるから・・・などであり、

引退時期が決まるのは「年齢以外」の要素が大きい。

★★★

で、話を戻すと、このNHKの番組にパネラーとして出演していたのは・・・
・30代の漫画家
・団塊世代の漫才師
・団塊世代の映画監督
・団塊世代の経済評論家

・・・全員自営業!

という状態だったのでありました。

「あ〜、こりゃあかん」と私はじめ、多くの視聴者が思ったことでしょう。

あのアンケートの回答をした人は、全国テレビの生中継で、極めて鋭いコメントをしたわけです。

「なんでサラリーマンの定年問題を、自営業の人だけで話し合ってんのん?」と。

★★★

NHKも次回からは「今年NHKを退職する団塊世代のスタッフ」を出演させて番組を作った方がいい。そしたらまさにリアルな番組になるはず。

「定年問題」ってのは、サラリーマンと自営業で全く“受け止め方”が違う。

自営業なら各自が自分の健康や経済状態、家庭環境に合わせて判断するけど、サラリーマンは画一的に「○歳になったから」で決まるんだもん。

しかも、サラリーマンだとお金についても定年時に「異常なこと」が起こる。

定年前は「給与=定期的な収入フロー」だったのに、定年後は「一時金ドカン!」の退職金と「年金」に変わる。

この「一時金ドカン」というのもすごい特殊。

世の中が「団塊団塊」と騒ぐのは、この「一時金ドカン」があるらでもある。

給与が年金に変わるだけなら、「時間をもてあます高齢者が大量発生!」という問題にすぎないけど、

退職金のおかげで「今まで見たことない額のお金を手に入れる人が大量発生!」する。

当然、金融業界をはじめ退職金狙いビジネスは目の色が変わる。

「暇な高齢者がたくさん現れます」だけではここまで騒がないでしょ。「ヒマ、かつ、多額のお金を受け取る高齢者が大量に出現する」からみんな騒いでる。

この点でも、自営業と会社員はまったく違う。

★★★

というわけで、世の中ひょんなことから本質的な課題が浮かび上がることがあるよねと思いました。

あのコメントをした団塊世代のおじさんは、大きな価値ある発言をしたと、思います。

今後もNHKは、自営業の人ばっか集めて定年退職問題の番組を作っていくのでしょうか。

んじゃね。