資本主義が勝てない“そこ”

糖を食べるようになって虫歯になり、
塩を使って調理するようになって高血圧になり、

栄養状態がよくなって動脈硬化になり、
世の中が便利になって(化学物質に囲まれて生活するようになって)ガンになり、

数多くの魅惑的な嗜好品によって、様々な病気が生まれ、
世界がつながって、テロが出てきた。


もうこれは、避けられないことなんだと思う。

私たちはそれと、つきあっていかなければいけないんでしょう。


最近の欧米の空港の警戒は、異様で異常で滑稽といえるレベルです。

ペットボトルから歯磨き粉まで、液体の機内への持ち込みが厳しく制限されている一方で、免税品店で買ったものなら化粧水も香水もブランデーも、機内に持ち込むことができます。

理由は、「免税品店の品物はきちんとチェックされているから」


ほんまかいな。


ロンドンやNYやパリの国際空港で売られる、それら免税品の量を想像してみてください。

毎日毎日、何千、何万、何百万の商品の入った段ボール箱が、トラックから免税品店に運び込まれてます。

すごい量だよね。

しかもそれらはすべてセキュリティチェックの後のゾーンで売られてる。

だから売店で買って、なんのチェックも受けずに機内に持ち込める。


それをすべて「きちんとチェックしている」なんで笑止千万。

私がテロなら、免税品店の仕入れ商品に必要な溶剤を混ぜ込んで運ぶでしょう。


でも彼らは(私たちは)「免税品はきちんとチェックされている」と、言わざるを得ません。

化粧品もお酒も、免税商品のメインカテゴリーだから、これらの販売機会を失うことに、アメリカも、イギリスも含め、資本主義という仕組み自体が、“耐えられない”から。

テロが狙うのは、私たちのそういう仕組みなんだよね。


マンハッタンの島の上を飛行機が飛ぶことは禁止されました。

飛行機がビルに激突するテロを防止するために、です。

けれど、マンハッタンを挟んで流れるふたつの川の上は、すでに飛行禁止が解除されてます。

理由?

大金持ちの自家用ジェットが飛行するためにかかせないルートだから、です。

川の上のルートから、マンハッタンのビルのひとつに飛び込むことは、ハンドル操作ひとつで一瞬だということは皆わかってる。

空軍のスクランブル発進なんて、全く間に合わないことを、彼らも私たちも、皆知っている。

んだけど、“全面飛行禁止”にはできない。


私たちには、そんなことはできないんです。

私たちがやってるのは、一種の、“安全ごっこ”だから。


あんまり大変ではないレベルで、ちょっとだけ安心な感じを醸し出す、そういうゲームなんです。

だって、テロを防ぐために資本主義をやめることはできないのだから。


テロが突いてきているのは、まさにそういう、資本主義のアキレス腱なんです。

私たちは、安全のためだろうと、健康のためだろうと、お金と快楽を諦めることはできない。

そういう世界を、そういう体制を選択した。


空港の馬鹿げたほどに厳しいセキュリティを終えてから、きらびやかな免税品店ゾーンに入ると、「ああ、ここが私たちの勝てないところなんだよな」と。いつも思います。



んじゃね。(3日前に帰国しました)