雪です、NY。
今日は現代美術館、MoMAに行ってきました。
出張中で移動も仕事もない唯一の休日だったのですが、なんせ朝から雪。遠くに行く気にならず、2ブロック先の美術館で一日過ごすことに決めたわけです。
すごい混んでましたね。
寒くてしかも雪だからタクシーもつかまえられないし、皆遠くに行かないんだよね。
5番街をウンインドショッピングするのも寒いでしょ。メトロポリタン美術館は遠いけど、モマはホテルの集中してるエリアにある。
というわけで、すごい混雑でした。皆考えることが同じだね。
MoMAに来るのは数年ぶりです。
現代美術専門なので、日本人は余り多くないですね。
&都会っぽい人が多いです。世界中からアーティストやアーティストをめざす人が来ている感じ。
博物館・美術館が無料!の国から移動してきたので、20ドルは高っ!って思ったけど、内容を見て納得。ほんと充実しています。
日本も近頃は現代美術が流行始めているらしいけど、こういうところで見始めると“はまる”と思います。一定のレベル以上のものは現代だろうと古典だろうとすばらしいです。
私が美術系で好きなモノとは、二種類あって、ひとつが「心を打つパワーのあるもの」もうひとつが「構造美のあるもの」です。
ゴッホの絵などが典型的ですが、怨念というか執念というか、作家の尋常でないレベルのパワーが作品に宿っており、何十年、いや何百年前のものであっても観る人の心を打つ、そういう作品がありますよね。これが前者のカテゴリー。
もうひとつが、“構造美”です。もしくは「ラインの美しさ」と言ってもいい。
とにかく長い時を経て万やら百万やらのなかから一つ選ばれて後世に残ってきたモノというのはとにかく「ライン」がきれいです。「構造」がきれいです。
色とかアイデアとかいろいろあるんだけど、全体としてパッと観たときのバランス、その美しさがすばらしい。
これも古典でも現代美術でも同じ。いや実は、洋服とかも同じなのよね。イタリアのすばらしいドレスとかって、ラインがすばらしい。
やっぱり「完成」されたものは、無駄なモノがなく、必要最小限で、しかも、形で表現してる。とても美しいモノが多かったです。
★★★
覚え書きをかねて訪問記録を。
(1) 最もすばらしいと思った作品は、1962年にスイスに生まれたPipilotti Rist氏の映像作品です。
口では説明できません。ふたつの異なる映像をかぶせたものです。
女性が道を歩きながら、手に持った花の茎で、時々、路上に駐車された車の窓を叩き割ります。音楽がずっとかかっている。女性は水色のテロテロのワンピースに赤いパンプス。
以上です。芸術家ってこういうことかと思います。ほんと、すばらしい作品で、ちょっと感動です。
(2) 1961年にブラジルに生まれたWik Muniz氏の写真もすばらしいです。
これも説明できません。
現代アートって説明できないよ。ビジュアルに観てくださいな。がらくたで女性ふたりが手を合わせているところを再現しています。それだけ。
天才です、この人。
他によかったのは、(3) Jeff Wallという人のバックライト・カラー・トランスペアレンシーの作品。
ええっと、「写真をOHPの透明シートにコピーして裏から光をあてたもの」ってことね。
これは方法論の勝利だと思う。なかなかユニークだった。
彼は1946年生まれ、作品は1970年代のものです。
それ以外で感動したこと。
(4) MoMAのほぼすべての部屋は「寄付した人」の名前がついてます。
この美術館の建物自体がすばらしい「構造美」なんですが、こういうものが寄付によって成り立っているってのがアメリカです。
大半の名前は「英文字の名前」ですが、一つだけ日本人が寄付した部屋がありました。The Yoshiko & Akio Morita Galleryです。誰だかわかりますよね。
こういうところに日本人の名前を発見すると誇りに思えるよね。
これから増えると思います。セブイレの母体の創業者の伊藤さんも、その名を冠したビジネススクールがアメリカにあります。
後は寄付する先がアメリカに片寄らないことを祈るばかりか。
あと・・・絶好調のトヨタの創業者、松下の創業者の方ももっと文化的なプレゼンスを意識的に作ったらよかったのに、と思います。
そういう時代じゃなかったんだろうね。それとこれからの起業家達も是非!
ちなみにそのギャラリーはでかいテレビを利用した映像作品のギャラリーでした。なるほどね。もちろん、内容もなかなかでしたよ。
(5) auの携帯がMoMAに所蔵されたという話を聞いていたので探していたら、工業デザインのところにありました。
が、そこにはもっとすばらしい日本の作品もありました。
iMacって覚えてますよね。二代目の白い、半球からディスプレイが突き出た感じの、2001年に発売。
それが展示してあって、その隣にそのiMacと極めて酷似したものが展示されてるんです。
それは1974年製と書いてありiMacより30年近く古い。
したがって、ここだけ見れば「なあんだ、iMacのデザインって斬新だと思ったけど、30年前の商品の真似じゃん」と思えます。
その商品はもちろんコンピューターではありません。当時そんな小さなコンピューターは無かった。それは「テレビ」です。
ラジオもついてるけど基本はテレビです。小型テレビ。
メーカーは、JVC。ビクターです。
今、経営が破綻し、日本から外資系ファンド、そしてその先に虎視眈々と狙うサムソン、その好餌となろうとしているビクターの1974年製のテレビです。
「デザイナー不詳」と書いてあります。そりゃそーです。当時の家電メーカーにデザインという概念はなかったでしょう。
それは開発部門のエンジニアの合議でなーんとなく作られた形なのかもしれません。
そしてその形の、美しいこと。
感嘆ものです。
その近くに auの携帯もあったけど・・・このテレビに比べたら“どーでも”って感じでした。
他にもイギリスのダイソンの掃除機の一号機もあった。その隣にもっと古い掃除機が。んで、そっちの方が断然素敵だったりする。
そういうことなわけ。
デザインも必ずしも進歩していないと思います。