そんなに違うものなのね・・

数日前の記事なんですけどね(一部抜粋です)。これ、どーですかね?

キヤノンは2007、08年度の2年間に、国内のグループ19社の製造部門で働く計3500人の派遣社員や請負労働者を、正社員などの直接雇用に切り替える計画を明らかにした。


 2年間にグループの製造部門で新卒採用を含め計5000人を正社員などの直接雇用で採用。このうち、現在、派遣社員や請負労働者として間接雇用している従業員から1000人を中途採用の正社員として、2500人を契約期間3年未満の期間社員として採用する計画だ。


 同グループの製造部門では、従業員の75%にあたる約2万1400人が間接雇用(派遣社員約1万3000人、請負労働者約8400人)。


<感想その1>
正社員と非正社員のコスト、もしくは、能力差ってのは、すごい“でかい”んだな、ってこと。これはちょっと驚きました。

キヤノン、この件では袋だたきにあっている状態です。トップが経団連の会長なのに国会で“法律違反ではないか?”と問題を取り上げられて議論されてる。

普通、そんな恥ずかしい状態になったら、「ある程度のコストをかけてでも問題を一掃したい」と強く思うのが普通の企業です。

ところが、右往左往したあげくにキヤノンが提示した解決策は全くどうしようもないものです。記事によれば、「グループ19社の中で、2万人以上の非正規雇用労働者がいて、うち1000人をこれからの2年間かけて正社員にします。」ってことです。

これじゃあ、ほとんど解決策になってない。


なんで2万人のうち1000人だけなの?
なんで既にキヤノンで働いている1000人を正社員にするのに2年もかかるの?


ってのに驚きました。


会社のトップがあんなに責められて汗かいて恥かいてても、できるのはこれが限界なんですとキヤノンは言ってるってことです。そう、正社員にかかる費用(人件費)がいかに高いか、反対に言うと、非正規雇用の人がいかに安いコストで調達できるのか、わかろうと言うモノです。

★★★

実は今年あたり、新卒大学生の採用は「超売り手市場」で。キヤノンだって「相当の採用コスト」をかけて人材確保に血眼になっているはず。

それなのに、です。

既に自社工場で働いている人は20人にひとりも正社員にしない。(できない。)


これは、コストだけでは説明できない話のような気がしません?新卒は何百人も雇う予定なのだ。「正社員」がひとりも必要ない!という会社ではありません。

じゃあさ、そんなすごいコストをかけて新卒採用に血眼にならなくても、自分の工場に「正社員になりたい!」と叫んでいる人が沢山いるんだから、そっちから採用すれば?と、思うよね。


ところが、そうはしない。

なぜか。



工場で働いてもらうために雇っている人と、正社員として採用したい人のスペック差が、ものすごく大きいということでしょ。正社員として採用したい人と、工場で働いてもらいたい人は「全然違う人」なのだ。

だから、必死で、すごいコストをかけて新卒採用戦線にのぞみ、一方で、いくら国会で問題視されても、「あの人達を正社員にするのは無理です」という。


これ何が違うか。次の感想につながるのだけど、つまりは「工場で働く人を正社員にするのは無理です」ってことなんだと思う。正社員ってのは日本では40年雇う必要があるわけで。キヤノンはおそらく「今後40年間、日本に工場を持ち続ける可能性はない」と思ってるんだと思う。

だから「工場で働く人」は正社員にしない。本社で働く人でないと正社員にはできないんです。(正社員に訓練期間だけ工場で働かせる、というのはあるとしてもね)

そうなると正社員と非正社員の“質”は全然違うってのもわかる。なので、おいそれと非正社員を正社員にはできないってことなんだろうと思います。

★★★

<感想その2>
で、やっぱ国内に工場持つのは無理なのね、ってこと。

だって、製造“部門”の75%が正社員でないって書いてあるんだけど、これ、ラインで働いている人に限ればおそらく90%が正社員ではない、っていう感じの比率ですよね。

ってことは、もしこの人件費がアップするなら国内に工場は置いとけません、ということになるだろう。

つまり民主党やら社民党は、鬼の首をとったかのようにキヤノンを弾劾してますが、会社側は大半が非正規雇用者である工場の「全員を正社員に」という方向に努力するより前に、「海外に工場を移す」ことを検討するでしょう。

つまり・・・不安定な雇用状態と安い給与を改善しようとした人たちは・・・職を失うことになる。



本当にそれが目的なのかな、今キヤノンを責めている人たちは。
この結論が見えているのかな? 今キヤノンを責めている人たちは。


もうこの国で“物作り”などをするのは、夢なんですよ。



というわけで。結構驚いた。あれだけ責められてこんな解決方法しか出せないってことは、本当「すんごい違い」があるってことだ。

格差はなくならないよ。


んじゃね。