アジアの結束、そろそろ。

“光化学スモッグ”という言葉、一定以上の年齢の人には懐かしいのではないでしょうか。昔はよく注意報がでていました。なんと年に300日、注意報が出た年もあるらしいです。

長らく全然聞かなくなっていた光化学スモッグ注意報ですが、最近また増えています。なんと中国から汚染された空気が流れてきて、日本で光化学スモッグが起こるのです。黄砂も同じですが、日本まで来ているくらいだから一番大変な目にあっているのは韓国でしょう。かなわんでしょうねー。


そういえば日本も、60年代からの高度成長時代は環境に関しては無茶苦茶でした。空には光化学スモッグ、工場がある地域にはぜんそく、化学工業がある地域の川下ではイタイイタイ病、それに水銀を原因とした水俣病。たしか「4大公害病」の場所と名前を学校で習った記憶があります。

公害とまでいかなくても、神田川など都会の川や、近場の海も汚水やヘドロでドロドロに汚れ、異常な臭いで近寄れないほどと、今からは想像もつかない状況でした。

当時の技術と日本の経済状況でいえば、工場の排水や廃棄のクリーンさなど、優先順が非常に低い(放置すべき)案件だったのでしょう。


もちろんそれらは当時でも、欧米先進国では既に許されていないレベルの汚染でした。でも“まずしい日本”にとっては、人の命や健康より“外貨が稼げて生活を豊かにする化学製品の方が優先順位が高い”状態だったわけです。

同じように今の中国だって、いくら日本や韓国が「工場をエコにしろ!」と怒っても「そんなこと言われてもどーしよーもない」のかもしれません。まずは全ての家に洗濯機やクーラーや携帯電話を行き渡らせることが重要なのであって、二酸化炭素だの農薬だの汚染だの、言ってらんないと。

★★★

10年前のアジアの通貨危機もそうだし、地域的なFTA問題もそう、また犯罪輸出や環境汚染、海洋資源開発の問題など、「アジア全体で取り組まないとだめだよね」みたいな問題が最近すごく増えてきています。

これまで「アジアの結束」というのは、すごく難しい側面がありました。ひとつの理由は、昔とある国が大東亜共栄圏などというスローガンの下に、武力で一方的なヘゲモニーを握ろうとした過去があるからです。また経済的に突出した日本と、それ以外の国、という経済格差も結束を妨げていた要因です。

さらにアメリカは、世界でもっとも成長可能性のあるこの地域のヘゲモニーを、日本や中国が握ることを絶対に認めたくないと思っており、アジアの国だけで結束することを決してよくは思っていません。

さらに、アジアは冷戦時代の遺産をふたつも抱えている唯一の地域です。台湾と中国、朝鮮半島の北と南。欧州では90年代初頭に東側は崩壊しこの対立は消滅しました。緊張があれば軍事力が必要であり、「結束」にも複雑な要因が絡みます。

というように「アジアの結束」を妨げる大きな要因であったわけですが、これらも最近大きく変わり始めたと思います。


まず第一に、日本と他国の経済力は均衡してきています。どの国もどんどん豊かになりつつあります。これにより各国ともビザ要件が緩和されるので、人の行き来がどんどん密になっています。さらに、地域の結束と日本の軍事的野望などを結びつける考えも急速に衰えつつあります。

またアメリカは中東でのあれこれに忙しく、アジアに細かく口出しする余裕を失いつつあります。イラクやアフガニスタンを見る限り、向こう10年くらいはアメリカはアジアで積極的なリーダーシップはとれないんじゃないでしょうか。

さらに東西対立も一気にテンションが落ちてきました。最大の要因は「香港の成功」でしょう。10年前に香港が中国に返還された時、香港人の中にはカナダ等に脱出しようとする人が続出しました。企業も警戒していた。でも、いまや香港は超好景気だし、中国との政治的トラブルも予想より圧倒的に少なく済んでいます。

当然、台湾も「1国2制度って成り立ってるじゃん」と理解するわけで、緊張をゆるめる方向に物事が動き始めるでしょう。


というように、アジアの結束を妨たげていた障害は減りつつあり、一方で、共同で問題解決しなくちゃいけないことはどんどん増えています。

おお〜、これはチャンスじゃね?

って感じです。


ちきりんの希望的、他力本願的な「今後のあるべき論」でいうと、やっぱ「アジア行政大学院」みたいな学校が必要なんじゃないの?と思います。

早稲田や立命館が持っている大学院みたいなのから発展させてもいいし別の大学でもいいけど、できれば各国が共同で設立できればいいですよね。で、「アジアのリーダーを育てる。アジアの問題を解決するために!」ってのを超明確に打ち出したらいいんじゃないかと。

解決すべき課題もカテゴリーごとにわけていくつかぶちあげ、それぞれの大学のグループごとに、「うちはこの問題に取り組みます」っていう分担をする。そしたら競いそうだし。


それと、それぞれ各国政府機関にもリンクして活動すべきかな。解決策に必要なのは、情報共有運動の他、企業の技術であり、国家の規制政策だから、そういう人を皆巻き込んで動けるようなものにする必要があると思います。

大学ではなく、大学院が必要と思うのは、実務経験のない学生では正直、力不足で無理だからです。一度社会に出た人が戻って、即戦力リーダーとなる必要があります。つまり「アジアン・パブリック・イニシャティブ」みたいなのを始めるってどう?という案です。

★★★

今はアジアのリーダー達は、みんなして欧米に留学する。アジアの各国からそれぞれが米国に留学して、そっちで「アジア人で話し合い」してたりしてます。ハンバーガー喰いながらね。

でもそんなめんどーなことせずに、そろそろ、それぞれの国に留学した方がいいと思う。そして、ネットワークを作るのよ。言葉を覚えるのよ。理解を深めるのよ。人生は短いぜ!共同で解決しようよ!


そう思える問題はたくさんあるし、おもしろくなってきたよね、っておもってる。


きたれ、意思ある若者!


じゃね。