居住用不動産について「購入か、賃貸か」という比較や論争をよく見ますが、その大半が「お金の比較」であることにいつも違和感を覚えます。
「自分の住む家って、大事じゃないの?」と思うからです。
基本、人間は大事なものを経済的比較で選んだりしないんですよね。「経済的な比較で決めるものは、大事じゃないモノ」だけなんです。
例えば、結婚相手を選ぶ時に「こいつと結婚したら、一生で費用がいくらかかるか」とか「この人なら 5億は稼いでくれるわ」とか考えないですよね。
誰かと友達になる時も同じです。
職業を選ぶ時だって「医者になれば一生で○○億円かせげるから僕は医学部に行く」とマジで言う高校生はいないでしょう。
つきあう相手とか友達、職業など、人生において一定以上重要なことについて、人は「経済的理由についても考慮はするけれど、そんなことを決め手にすることはない」んです。
だから、自分が住む家についても、それが自分にとって大事なことであるなら、経済的な要因以外に重要な基準があってしかるべきなんです。
ところが不動産の購入か賃貸かの議論に関しては、その大半が「買った方が得かどうか」であって、「非経済面の比較」を見かけるのはとても稀です。
なので今日はそれについてまとめておきましょう。
<不動産保有のメリット>
(1) 内部使用方法の自由さ
賃貸にはリフォームの自由度がありません。中古マンションを買えば丸ごとリフォームできるし、新築一戸建てならゼロから設計できます。
(2) ローン終了後はキャッシュフローに縛られない
ローンが終われば、「いつ失業してもホームレスにはならない」という安心感が得られるし、「嫌な仕事に我慢せず、給与は安くても好きな仕事を選択する」ことも容易になります。
過大なローンを抱えては意味がないですが、10年以内に返済が終わる程度の中古でごく小さな部屋を手に入れてしまえば夢の早期引退も可能、とまでは言わないけど、自由な生活へのワンステップとなるでしょう。
(3) 高くてもお気に入りの家具を使おうと思える
今のマンションを買った時、アメリカから取り寄せたソファが玄関から入らないのでベランダの下からつり上げてもらいました。
賃貸だったら玄関から入る大きさのソファしか買わなかったと思います。賃貸だとどうしても「仮住まい」的な発想になるから、家具などに思い切った投資ができません。
(4) コミュニティに投資しようと思える。
ずっと住む場所と思えば、コミュニティへの参画とか、近所づきあいもする気になれると思います。
<不動産保有のデメリット>
(1) 移動の困難さ
ストーカーにつきまとわれたり、迷惑な隣人がでてきたり。また近隣地が荒廃してきたとか、そういう時に引っ越すのが大変です。
もし、隣家にがらくたを大量に集めるゴミ屋敷系おじさんが出現したら、引っ越そうにも買い手も借り手も見つけられません。
ローンが残っている不動産で、売れない、貸せない、だから住み続けるしかない、という状況はかなり厳しいですよね。大きなリスクです。
(2) 形有るものを保有することによる一般的なリスク
形あるものは必ず壊れます。大地震は、買った翌日に起るかもしれません。地震保険でもすべてが補償されることはごく稀です。
(3) 買い間違うリスク
「人生で初めてコレをかった」という場合、その購入の選択はたいていほろ苦いものです。人生で初めて自分で選んだ服、靴、車、パートナー、仕事・・。だいたい間違っていませんか?
最初の購入では、自分がホントは何が欲しいのか、何に気を付けて選べばよいのか、なかなかわからないものなんです。不動産だって本当は「3軒買って初めてわかる」のかもしれません。
(4) コミットリスク
メリットの反対です。
一度なにかあれば、近隣の人はいつまでも「あの家は昔・・」と言い続けます。また、気の合わないご近所の人がいても、将来を考えればあからさまな喧嘩はできません。
いやいやながら付き合っていくしかないのです。その点、賃貸なら引っ越して逃げ出すのも簡単です。
さてこう考えると、自分がなぜ「マンションを購入しよう」と思ったのかもわかります。
私は「自由度」が欲しかったのです。
好きに改装して住める自由、
(ローンさえ終われば= 10年以内のローンしか組んでない)いつでも仕事が辞められる自由、
そして、好きな家具などを心おきなく揃えられる自由。
これらの自由度への希求度合いと、不動産を保有することのリスクを比較して買うことにしましたた。
つまり私がマンションを買う時に比較検討したのは、「得られる自由度」と「保有することのリスク」であって、
「一生の間にかかる費用」を賃貸と購買で比較して、購買のほうが得だと思ったからなんかではありません。
多くの人は、大事なことについてコストで決めたりしていません。
「家賃を払い続けるのがバカらしいから家を買う」という考えは、「光熱費が節約できるから結婚する」というのと同じです。
そんな大事なことを「費用の比較」なんかで決めてはいけないのです。