Never too late to escape

安倍首相が辞任!

10日に所信表明して 2日後の 12日の昼に辞職!!

このタイミングでの辞任については、あきれかえっている国民の皆様の表情がありありと浮かびます。

マスコミも野党も、いや与党自民党尾の皆さんも唖然呆然でしょう。

テレビでは「なぜこのタイミングなのか?」「(今辞めるくらいなら)参院選直後に辞めるべきだったのでは?」と問うている人が多いのだけど、彼らは本当にそれが知りたくて聞いているのかね?

簡単でしょ、そんなの。

「なぜこのタイミングなのか?」→答え「数日前までは、まだやれると思っていたからです」

「なぜ参院選直後に辞めなかったのか?」→答え「あの頃は(衆院は圧倒的多数だし)まだまだやれると思っていたのです」ってことでしょ。

そういう人なんですよ、この人は。

イコール「あまりにも政治判断が稚拙な人である」というずうっと前からわかっていたことに起因しているだけです。それが選挙で負けた理由でもあるし。


★★★


以下、思うこと幾つか。


(1)“初めての戦後生まれ総理”の時代錯誤

この人は、成分表示と中身がすんごく違う。成分表示は「戦後生まれ初めての総理」です。

でも中身は全く逆だよね。

教育基本法改正等を含む「戦後レジームからの脱却」政策は、コマを前に進めるというより「戦前に戻る気??」と思わせるほど時代遅れ、時代錯誤であり、「戦後生まれ初」どころか、「一人だけ戦前生まれなの?」とさえ思わせる。


「政治サラブレッド一家のお坊ちゃん」は、有望視されながら総理になれずに逝った父の無念を晴らすため、早すぎじゃないか? という批判を跳ね返して総理を目指した。

父親も義理の祖父も大叔父も大政治家、という中で育ちながらひどい政治センス。

年金問題のハンドリングを間違い、大臣を自殺に追い込むまで放置し、辞任会見で「辞任の理由は小沢さんに党首会談を断られたから」と言ってみるこのセンス。

あの世のおじいさま(岸さん)もびっくりでしょう。

これほど、期待させるものと中身の違う人は珍しい。


(2)小泉さんはなぜこの人を選んだか?

これは最大の疑問。

小泉さんは(多分山ほどオファーがあるのに)回顧録を書いていないけど、是非、寿命の前には書いて欲しい。

その本がでたら最も知りたいことの一つが「なんで安倍を選んだのよ??」です。

みんな既に忘れているかもしれませんが、昨年の総裁選挙の際、小泉さんは明らかに安倍さんを擁護、支持してました。

安倍さんが総裁になったのは、選挙で人気がありそうに見えた点と、小泉さんの非公式の支持があったからだ。

「小泉さんの意中の人なら安倍が必ず勝つな」と皆が思い、ポスト欲しさにほぼ全ての派閥議員が安倍さんを支持した。

なんで小泉氏は彼を選んだか。そして、その選択は正しかったのか、間違いだった(と彼も今は思っている)のか?


小泉氏と安倍さんの基本思想は全く違います。

安倍さんは「改革」という言葉を使うけど、それは小泉改革とは全然違うことを指している。そのことに小泉さんが気がついてないわけがない。

ちきりん的には、小泉さんが彼を選んだ最大かつ唯一の理由は「彼が若い」ということだったのではないか?と思ってる。

もしくは「しがらみがない」ことかも。

小泉さんは「一世代とばしたかった」のと「農林族、道路族、郵政族等々でない」人を選びたかったんじゃないかな。

だから「それ以外の点」、たとえば「頭わりぃ」とか「センスわりぃ」とか「自分と政治信条も違う」という点については、目をつぶったのかな、と。


ちきりんも「リーダーの年齢」はとても大事だと思っており、たとえ能力が上のシニアな人が存在したとしても、敢えて未熟な若い人にリーダーを任せる、というのは悪いと思わない。

人はリーダーポジションについて初めて育つ。

だから、「十分になってからそのポジションに就ける」のではなく、「未熟な間にそのポジションにつけて、皆で育てていこう」という方法も悪くはない。

だけど、投資すべき人は、それに足る成長潜在力のある人でなくちゃね。

安倍さんがそういう人だと小泉さんが踏んだとはホント思えない・・ここは是非知りたい感じです。


(3)彼はこれからどーなるの??

加藤の乱の後、加藤氏が単なる「髪の毛の乱れた、くたびれたおじさん」になってしまったように、安倍さんは今後、政治家としてどーなるのか?

今回の辞任の理由として「政治家としてのエネルギーも尽きた」みたいな表現も聞こえてくるけど、実際、政治家としてどーなるのか? 

羽田さんのような「あれ?この人まだいたの?」みたいな人になるのか。

森さんみたいに「首相としてはボロボロであったが、元首相としては結構いい仕事してる」みたいになるのか。

これは野次馬的に興味あります。


(4)今、このタイミングで辞めることについて

このタイミングで辞めることについて、大方の反応は次のふたつのようです。
「理解できない」+「無責任だ」

理解できない、の方は上に書いたとおりです。ここ一週間で初めて「ヤバイ状況なのだ」とわかった、ということです。鈍感な人っているでしょ、そういう人なんです、この人は。


あと、「無責任だ」という意見については、「無責任かもしれないけど、これでいい」と思います。

これは一貫した私の意見なのだけど、「本当にヤバイ」と思ったら躊躇せず逃げるべきである、と思ってます。

これは母の教えです。

母は「大事な仕事に寝過ごして失敗した時は、神様に御礼を言いなさい」と教えてくれました。「そんな大事な仕事なのに起きられないくらい体が疲れていたということなのよ。そんな時に起きなくて本当によかった。体のメカニズムがあなたを助けてくれているのよ」と。

これは本当にありがたいアドバイスでした。こういう考え方で育てられてなければ、私は鬱病になってかも。

「こうあらねばならない」「こうせねばならない」という覚悟をもって生きること、仕事をすることは大事なことではあるが、最後の一線の所では、「頑張らずに逃げた方が良い」と思う。

そうしないと自分を追いつめすぎることになり、それは誰にとっても、自分を壊してしまうきっかけや理由になりうる。

★★★

2日前に所信表明したばっかり、とか、アメリカの大統領に 1週間前に会ったばっかり、とか、もうすぐ国連総会だし、とか。

もしくは、「今辞めたらもう一生チャンスはない」とか「オヤジや祖父にどう顔向けすればいいのか」とか。

そういうことを気にして「今辞めるわけにはいかない」と無理に頑張り続けると、ポキッと折れてしまう。

世の中で働く多くの人に言いたいよ。「こーやって、逃げればいいのよ!」と。

精神を病んでしまうほど、自殺しか方法がないのではと思い始めるほど、自分を追い込んではいけない。


「オレがいなければこの仕事は動かない」とか「すごい迷惑を周りの人にかけることになる」とか、考えなくていいです。最後は「逃げた方がいい」と思う。


安倍さんはここ数日よく眠れなかったらしい。昨日は風邪気味だといって5時に家に帰ってしまったそう。ちゃんと逃げたという意味で、ちきりんは「安倍さん、エライジャン」と今日初めて思った。

これくらいのところで「逃げればよい」のです。

人生にはいろんな面があり、いろんな道がある。

「これしかない」と思うのは錯覚か幻想だ



よくやった!
と最初で最後に言わせてもらいましょう。



そんじゃね!


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