問題は能力だけ、のはず。

安倍晋三総理大臣が辞任したことに関して、マスコミが無責任だ、おぼっちゃんだからだと嬉しそうに叩いています。この件についての、ちきりんの雑感は以下。


(1)安倍は無責任だと言っている人はすごい

キヤノンの御手洗さんが言うのは、まだわかります。けど、30代そこそこの若いキャスターや、なんとか旋風で当選した議員が「無責任だ!」と糾弾してるのを見ると、「すごいなあ」と思います。

ちきりんは、あんな重責の仕事をしたこともなければ、あれほどのいじめに近いような非難やプレッシャーを受けたこともありません。だから自分がああいう状態におかれると、どれくらい大変なものなのか、ほんとうのところ理解できません。

世の中の人は皆、すんごい大変な状況を「責任をもって」乗り切ってきた経験とか自負があるんだね。

ちきりんは恵まれて育ったから、あんまり苦労らしい苦労もしてない。自分の仕事はそれなりに責任感もってやってはきたが、それだって、そんなに大変なことじゃなかったのかもししれない。

正直言って、自分がああいう状況におかれて(例え自分が望んでついたポジションであったとしても)、本当に“死んでも”責任が果たせるかどうか自信ありません。

だから、安倍さんのことを「無責任だ」と言う気にはなれない。



(2)安倍は「甘い」「おぼっちゃんだ」と言っている人はすごい

元国会議員(京都)の野中さんが言うのは、まだわかります。だけど、若いキャスターだの社民党の福島党首なんかが、「アイツはおぼっちゃんだから甘いのだ!」と糾弾しているのを見ると、「すごいなあ」と思います。

世の中の人は、親が金持ちだと「子供は全く苦労せずに育っているに違いない」と思っているらしい。

世の中の人は、代々政治家の家に生まれたら、政治家のトップである総理大臣になることは「全く苦労も努力もいらないこと」であり、「アマちゃんでもできること」だと思っているらしい。

たぶん、代々サラリーマンの家に生まれたら、父と同じ会社にはいり、サラリーマンのトップである社長になることくらい、誰でもできること、と考えているんだろうな。

ちきりんは、父親が成しえなかった出世を義務付けられるようなプレッシャーも感じたことがないし、偉大なる祖父や父親の残像に苦しめられた経験もありません。

だから生まれた時からそういう期待値の下で育つことが、本当に「甘えた」「お坊ちゃん的な」人生であったのかどうか、実際のところ理解も想像もできません。

世の中の人は皆、すんごい苦労して甘えずに人生を乗り切ってきた経験とか自負があるんだね。

ちきりんも、自分が甘えているとは思わないけど、かといって他人様に「甘い!」などと言えるほどの苦労をしてきたわけでもありません。

安倍さんが子供の頃から感じていたであろうプレッシャーも、決意も、断固たる意思も、ちきりんには無縁でした。ちきりんの人生なんて、ほーんと甘えたものなんです。

だから、彼のことを「甘えてる」「お坊ちゃんだ」とは言えない。

★★★


彼が責められるべき点は一点に尽きます。それは・・

「総理大臣としての能力がなかった」という点だけ


それ以外の点、生まれの良さや、意思の弱さや、のほほんとした性格や、がんばり度合いや責任感やらについて、彼が責められるべきだとは全く思えません。


仕事があまりに大変ならば、体に、そして、精神に異常を来す前に、ちゃんと逃げるべきです。

世の中の苦労人や、とても責任感のある生き方をしてきた人があなたのことを「アマちゃんだ」「無責任だ」というかもしれません。でも、そんなの気にする必要は全くないんです。勝手に言わせておけばいい。


問うべきは能力や成果であり、努力やがんばりではありません。

後者をやたらと大事にする偽善的な思想(頑張れば必ず報われる。努力すれば必ずなんとかなる。頑張らないからダメなのだ、等々)は、それ自体が虚偽であるだけでなく、時にほんとに人を蝕むんだから。


まとめ:ちきりんは、安倍さんが無責任だとも甘いとも思いません。彼は能力がなかっただけです

なんで自分が能力もない職業を選んだのかって? 確かにちきりんだって“女優になる!”とか決めていたら、ものすごい苦労したでしょう。そんな選択をするなんて自分が悪いと言われるでしょう。でもね、彼に選択肢があっただろうか? あの家に生まれて?



自分には能力のない仕事にチャレンジせざるを得ない。そういう家に生まれたのだから。という状況を、ちきりんは経験していないので、それがどれくらい「甘えた」決断なのか、「厳しい」決断なのか、全然わかりませんが。


歌舞伎役者の家に生まれて、自分になんの才能もなくても、歌舞伎役者を目指して頑張ったことを、責めるわけにはいかないと思う。

長島一茂氏や野村克典氏もおなじだよね。鬱病になりかけながら野球を続けたり、偉大な父親が監督をつとめるチームを渡り歩き、二軍だのコーチだのとして給金をもらいながら生きていく人生は、本当にそんなに「甘くて」「楽チン」だと思う? 一茂氏や野村克則氏は、甘々とお坊ちゃんな人生を気楽に楽しんでいると思える?

★★★

本当の責任は、
能力がないことが明らかな人を、選挙前ということだけでトップに祭り上げ、いざ成果があがらないと血祭りにあげた、“仲間の顔をした”政治家達であり、
公けの電波を使って“いじめ”の快感を追い求めたマスコミ
の方にあるんじゃないの??


んじゃね。