つっこんでいい場所とアカン場所

1999年に起こった山口県光市の母子殺害事件の被告が、裁判の途中から殺人や強姦致死などの事実を否認しはじめ、傷害致死罪と主張しはじめた件について、橋下弁護士がテレビで「この番組を見ている人が一斉に弁護士会に行って懲戒請求をかけたら,弁護士会も処分しないわけにはいかない」と呼びかけました。

その結果,4千件近い請求が実際に寄せられ、対象とされた弁護士4人が「反論書面を作ることなどを余儀なくされ、業務を妨害された」として,橋下弁護士を1人300万円の損害賠償を求めて提訴したという事件が起こりました。

今日はこの件の“周辺の話”を書きたいと思います。

★★★

橋下弁護士がこの発言をしたテレビ番組は、「たかじんのそこまで言って委員会」という関西限定の社会派トーク番組です。

これが放送された日、ちきりんは関西にいてこの発言を生で聞いてました。で、「いいのかなー、こんなこと言って・・」と思いました。危ない感じでした。弁護士なのにちょっと調子のりすぎ、でした。

なので騒ぎになった時も「ほら、調子にのってるから」と思いました。が、ポイントは寧ろこの「番組」の方です。

この番組は「これを見られるという理由だけで関西に住む意味がある」というくらい価値のある番組です。ケーブルテレビでさえ東京では見られません。なぜかって?

たかじんさんが「東京で流すんやったらオレは降りる」って言ってるからです。


ちなみに「関西のおばちゃんが社会問題について、東京の主婦より深く理解してる」のもこの番組のおかげ、と言われてます。社会派ちきりんとしては、ほんと残念です。

★★★

さて、この番組はいわゆる“冠番組”ですから“彼の番組”であることは確かなのですが、表面的には彼が回しているわけでは全然ないです。彼は「司会」で、コンテンツ自体は他の出演者=「部下」に任せてる感じです。

自分の気に入った政治家とか評論家とか業界人とかが集められて、たかじんさんの司会で時事問題を議論します。たかじんさんは、まあ、適当にチャチャを入れたりはしてるけど、議論をリードしたりまとめたりはしません。島田紳助氏なんかに較べたらすごく“ひいた”感じの司会スタイルです。

ゲスト達はレギュラー5〜6人とゲスト2人くらいがいて、レギュラーの方は、“事実上のコンビ”というか、人数多いんでコンビとは言えないけど、事実上“お笑いグループ化”してます。

つまり、誰が誰をつっこんで、誰がはたいて、みたいな役割分担が完全に決まっていて、かなり安泰な、キャラベースの、ゴールデンペンタゴンちっくな、そんな感じ。(わけわからん)

★★★

で、この人達が皆ヤバイことを言いまくる。こんなことテレビで言える?みたいなことを言います。

“全国ネットなら許されないが、関西なら許される”レベルのトークってのは、非常にギリギリ感があっておもしろく、それがこの番組が人気の理由だと思われます。

ちなみにこれ、日曜日の真っ昼間にやってます。深夜番組じゃないってのが、またすごいところです。


今回の橋下氏の事件が教えるところは、この「場所によって、どこまで許されるかが異なる」ってことなんです。

例えば同番組にレギュラーとしてでている田嶋陽子先生、この人、テレビでコメンテーターをやってるのを見る限り、キャラとしてそれなりの方です。

でも、つまらんおだてにのって国会議員に立候補し、すぐに辞任したりと、現実社会ではわけのわからんこともやってます。

で、彼女も学んだわけです。「お笑いの世界だけの話」と「現実社会」は全然違うルールで動いていると。そこに同じノリでつっこんでいったりしたらアカンのです。ホンマにぶつかったら痛いやん、ということです。

みんなそういうのを学んで大人になるわけですね。

たかじんさんでさえ一時は東京進出もしたりして、「あかん」と気がついて引き返してます。みな、そういう経験が必要です。


橋下弁護士にとっての「その経験」がこれだと思うんです。テレビでつっこんでいるうちに、「現実」との境界を越えてしまった。そしたら、「そっちがわ」では許されていることでも、「こっちがわ」では大騒ぎになっちゃう。


だって、こっちがわにはアホが多いんだもの


ってことです。

★★★

あのレベルのつっこみや放言は、「関西だから」とか「たかじんさんがリスク負ってるから」といういくつかの条件の下でのみなりたってるんです。たかじんさんがもらってるギャラの一部は「リスク引受代」だとさえ言えます。

参加者はそこを出たらあかんのよ、ってことです。また、視聴者もそれを真に受けてはアカンのです。


橋下弁護士は戦う姿勢を見せていますが、まあ、これを機に、よりこなれて、いい感じになっていってほしいと思います。頑張ってね。


ということでした。


じゃね。