人脈とか笑える

バブルの昔は、デートや恋愛のマニュアル本がたくさん発売されていました。

雑誌も頻繁に、湾岸デート、横浜デートを特集し、ドライブのコースから車内で聞く音楽の準備、どこで高速を降りてなんとかという店で名物のこのケーキを食べろ、と事細かに指示があり、クリスマス前ともなると本当に大変な騒ぎだった。

大半は男性向けのマニュアル本で、ノウハウ本です。悪ふざけがすぎるのに至っては、右側で背中のファスナーを下げてる間、左手はどこにおくか、みたいなのも。

最近はあんまし見なくなったので、アホらしさに気がついたのかなーと思っていたらそうでもなく、分野が変わっただけのよう。


バブル時の恋愛指南本に代わって最近目につくアホラシ本は、「ネットワーク」とか「人脈」がどーのこーのという本。

当時は男性用マニュアル本といえば恋愛、遊び系だったのが、今は、男性マニュアル本=ビジネス本、「自己啓発系」にシフトしてきているのでしょう。


遊び系から「いかに自分を磨き、成長させるか」に変わってきた背景には、

(1)不況 → 今や遊んでる場合ではない。働かねば。

(2)成果主義の徹底 → 今までは仕事で同期に差を付けられることはなかったから、差をつけるなら私生活だった。

(3)男女平等 → 恋愛のリーダーシップにおいて男性の負担が軽減された。

などの理由があるのかも。


まあとにかく過去 20年くらいの間に、大きなトレンドチェンジがあったと思います。「モテる男」より「デキる男」を目指せ!という方向転換。

「デキない男はもてない」時代になったというか。


★★★


こうした、巷に溢れる「自己啓発してキャリアアップ!」本のなかで、ちきりんが一番わけわかんないと思う特集が「人脈&ネットワーク」についての本。

「異業種交流会に積極的に参加」みたいな周回遅れノウハウがあったり←「漫然と参加しているだけではだめ」とか書いてあって吹き出します・・・、名刺に一言添えて覚えてもらえとか、「SNSをネットワーク形成に活かす法」とか。

内容は超くだらないのだけど、昔と同じように「雑誌に書いてある通りにドライブすればいいんですよね?」的な人は今も多く、ほんとに超うっとうしい。


例えば、講演会などで、質疑応答の時間はだまってるくせに、講師が壇上から降りて退場しようとするとすかさず名刺持って追いかけてきて名刺交換を迫る人とか。


なんやねん??


「異業種の人と話せば自分の世界も拡がると思うんです。だから異業種交流会を呼びかけていて・・」とかいいながら、「何か質問=聞きたいことありますか?」って聞くと、「いえ、今は別に何も」って。


なんやねん???
好奇心ないの??


ホント訳がわかんない。


ああいう雑誌・本はいつの時代も罪作り。

いたいけなサラリーマンをいたぶってる。「僕には人脈もなくて・・」とか「ネットワーク作りが苦手だから・・」とか悲しげに言う人がいて、マジかわいそう。

「んなもん、無くても困りませんよ」と教えてあげたい。


なんでこんなに人脈とかネットワークが重視されるんだろ? みんなそんなに仕事に人脈使ってるんですか?

ちきりんが思いつく中で、最も人脈に頼った仕事は“ソニー生命の営業”です。

他の外資系保険会社もそう。基本は客の人脈をたどって保険を売る仕事だから。でもそれ以外の仕事で、“人脈がすんごい大事”ってホントにあるんですかね。

あと、「自己成長」って言葉もわけがわからない。そもそも成長してどーすんの????

誰も彼もが起業したいわけでも社長になりたいわけでもなかろーに、「短い人生、そんなに成長して何をする?」って感じです。


まあ、他人様のことなんで、どーでもいいんですけど。


★★★


ホントのコトを教えてあげましょう。

私の知る限りでいえば、「人脈が多い」ことより、本人が魅力的な方がよほど役に立ちます。

だって魅力的な人には周りから他の人が集まってくるでしょ。そしたら人脈なんて簡単に作れる。


「自分“が”知ってる人が多い」より、「自分“を”知ってる人が多い」という状況の方が圧倒的に有利なんです。


最近の「人脈やネットワークをフル活用してできる男になる」系の(最近は「できる女」もよく出てるけど)雑誌を見ると、バブル期の“横浜ドライブデートのすべて”みたいな雑誌とかぶり、すんごいデジャブ感があります。

やっぱ時代は繰り返すんだな。

となれば、20年後のマニュアルはなんだろう? 

“介護されたい男ランキング”が発表されてるとか? 「フィリピン人介護員に好かれる感謝の言葉はこれだ!」とかか。


いつの時代も大変だ。



じゃね。


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